「就職はゴールだと思いますか?」
「働きながら、もっと成長したい、活躍したいと思いませんか?」
私たち就労移行支援事業所は、日々、障害のある多くの方々と向き合う中で、このような内なる声に数多く触れてきました。一般企業への就職という大きな目標を達成した先には、仕事を通じて自己を表現し、社会に貢献し、そして経済的に自立していくという、より豊かで長い人生が待っています。その道のりを、私たちは「キャリアアップ」という視点から力強く支援したいと考えています。
しかし、現実には厳しい側面も存在します。障害者雇用で働く方の多くが非正規雇用であり、賃金水準も一般労働者と比較して低い傾向にあります。例えば、ある調査では、一般労働者の平均月収が約33.7万円であるのに対し、精神障害のある方で約14.9万円、発達障害のある方で約13.0万円というデータも示されています。また、任される業務が補助的な作業に偏りがちで、専門性を高めたり、責任ある役割を担ったりする機会が限られるという声も少なくありません。
このような状況は、働く意欲や能力を持つ方々の可能性を十分に活かしきれていないことを意味します。しかし、今、大きな変化の波が訪れています。2024年4月から障害者雇用の法定雇用率が2.5%に引き上げられ、2026年7月にはさらに2.7%へと段階的に上昇することが決定しました。これにより、企業の採用意欲はかつてないほど高まっています。この変化は、単に「就職の機会」が増えるだけでなく、企業が多様な人材をいかに組織内で活かし、成長させていくかという「雇用の質」を重視せざるを得ない状況を生み出しています。これは、障害のある方々にとって、自身のキャリアを主体的に築き上げる絶好の機会と言えるでしょう。
本記事では、私たち就労移行支援事業所の視点から、障害のある方一人ひとりが自分らしく成長し、仕事を通じて自己実現を果たすための「新しいキャリアアップ」の考え方と、それを実現するための具体的な方法を、網羅的に解説します。この記事が、あなたのキャリアの次の一歩を踏み出すための羅針盤となることを願っています。
近年、障害者雇用を取り巻く環境は劇的に変化しています。かつては法令遵守や社会貢献活動の一環と見なされがちだったこの取り組みは、今や企業の持続的成長を支える重要な「経営戦略」として位置づけられるようになりました。この潮流の変化を理解することは、キャリアアップを考える上で不可欠な前提となります。
最大の推進力は、障害者雇用促進法の段階的な改正です。2024年4月に民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%へ、さらに2026年7月には2.7%へと引き上げられる予定です。これに伴い、雇用義務の対象となる事業主の範囲も、常用労働者43.5人以上から40.0人以上(2024年)、そして37.5人以上(2026年)へと拡大します。これにより、より多くの、特にこれまで対象外だった中小企業も、障害者雇用に本格的に向き合う必要に迫られています。
しかし、この動きは単なる数値目標の達成要求に留まりません。企業は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)経営といった世界的な潮流の中で、多様な人材を活かすことが企業価値そのものを高めるという認識を深めています。障害のある社員が持つ独自の視点や経験は、組織に新たなイノベーションをもたらし、固定観念を打破するきっかけとなり得ます。また、誰もが働きやすいインクルーシブな職場環境は、全従業員のエンゲージメントや生産性の向上にも繋がるのです。
このように、障害者雇用は「コスト」や「義務」ではなく、労働力人口が減少する日本において、企業の成長を支える「価値ある投資」へとその意味合いを大きく変えているのです。
採用の門戸が広がる一方で、企業は新たな課題に直面しています。それは「雇用の質」、すなわち採用した人材の「定着」と「活躍」です。せっかく採用しても、早期に離職してしまっては意味がありません。ある調査によれば、障害のある方の1年後の職場定着率は全体で58.4%に留まり、特に精神障害のある方に至っては49.3%と、半数以上が1年以内に離職しているという厳しい現実があります。
企業にとって、離職は単に採用コストが無駄になるだけでなく、法定雇用率の未達成に直結します。法定雇用率を下回った場合、従業員100人超の企業は不足1人あたり月額50,000円の納付金(罰金)を支払う義務が生じます。そのため、企業は「採用すること」と同じかそれ以上に、「定着してもらうこと」に強いインセンティブを持っています。この「定着」こそが、キャリアアップの議論が始まる出発点となるのです。
かつて、障害のある方の働き方に対するイメージは「安定・定着志向」が中心と見なされがちでした。しかし、近年の調査では、その認識が実態とは異なることが明らかになっています。ある調査では、働く障害のある方の志向性として「成長・活躍志向」が38.1%と最も高く、「安定・定着志向」の37.8%をわずかに上回る結果となりました。これは、障害の有無にかかわらず、多くの人が仕事を通じて成長したい、自分の能力を発揮して活躍したいという普遍的な願いを持っていることを示しています。
この「成長したい」というニーズに応えることが、結果的に従業員のモチベーションを高め、職場への定着を促し、企業の生産性向上にも貢献するという好循環を生み出します。企業側もこの事実に気づき始めており、定着支援で効果があった施策として「キャリア形成支援」を挙げる声が増えています。
キャリアアップは、単に役職が上がることだけを意味しません。それは、働く個人の人生に多岐にわたるポジティブな影響をもたらします。
このように、キャリアアップは「就職」という点を、「定着」と「活躍」という線、そして「自己実現」という豊かな面に広げていくための重要なプロセスなのです。そして、そのプロセスを体系的に支援することこそ、私たち就労移行支援事業所の大きな役割であると認識しています。
「キャリアアップ」と聞くと、多くの人は「昇進して役職がつく」「給料が上がる」といった、一つの階段をまっすぐに上っていくようなイメージを持つかもしれません。しかし、私たちは、障害のある方一人ひとりの特性や価値観、そしてライフステージに寄り添う中で、キャリアアップの形は一つではないと考えています。就労移行支援事業所の視点から、より多角的で、一人ひとりが自分らしく歩める「新しいキャリアアップ」の形を3つの柱で再定義します。
私たちが提唱する「新しいキャリアアップ」とは、直線的な「上昇」だけでなく、多方向への「成長」と「深化」を含む概念です。それは、個々の障害特性や「こうありたい」という価値観を尊重し、段階的に、そして持続可能な形で実現していくプロセスです。このプロセスを、私たちは以下の3つの柱で支えていきます。
これら3つの柱は、必ずしも順番通りに進むものではなく、相互に関連し合いながら、螺旋階段を上るようにキャリアを豊かにしていきます。それでは、各柱について詳しく見ていきましょう。
キャリアを考える上で、最も重要かつ最初のステップは雇用の安定です。障害者雇用では、契約社員やアルバイトといった非正規(有期)雇用からスタートするケースが少なくありません。非正規雇用は、契約更新の不安が常に伴い、昇給や賞与、福利厚生の面でも正規雇用との間に格差が生じがちです。長期的な視点でキャリアを築き、スキルを蓄積していくためには、まずこの不安定な状況から脱却し、安心して働ける土台を固めることが不可欠です。
正社員や無期雇用への転換は、単に給与が安定するだけでなく、「この会社の一員として、長期的に貢献していく」という当事者の意識と、企業側の「長期的な人材として育成していく」という期待の双方を育みます。この心理的な安定が、次のステップであるスキルアップや役割拡大への意欲を引き出すのです。
「企業が本当に正社員にしてくれるのだろうか?」という不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、企業側にも正社員転換を積極的に進めるための強力なインセンティブが存在します。それが「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」です。
この制度は、障害のある有期雇用労働者を正規雇用または無期雇用に転換した事業主に対して、助成金を支給するものです。例えば、中小企業が重度身体障害者や精神障害者などを有期雇用から正規雇用に転換した場合、1人あたり最大120万円が支給されます。この助成金は、正社員化に伴う企業のコスト負担を軽減し、制度導入を後押しする大きな力となります。実際に、非正規雇用を経て正社員に登用されるケースは一般的であり、この制度の存在は、キャリアの土台作りが現実的な目標であることを示しています。
安定した雇用の土台の上で次に目指すのは、自分自身の「市場価値」を高めることです。これは、特定の会社だけでなく、社会全体で通用する能力を身につけることを意味します。その核となるのが「ポータブルスキル」と「専門スキル」です。
ポータブルスキルとは、厚生労働省が定義するように、「業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」のことです。これは、特定の専門知識(アンポータブルスキル)とは異なり、どのような仕事においても基盤となる汎用的な能力を指します。ポータブルスキルは、大きく「仕事のし方」と「人との関わり方」の2つの領域、9つの要素に分類されます。
これらのスキルは、日々の業務の中で意識的に実践することで磨かれていきます。就労移行支援では、ビジネスマナー研修やコミュニケーション訓練を通じて、これらのスキルの基礎を固める支援を行っています。
ポータブルスキルという土台の上に、具体的な「専門スキル」を積み上げることで、キャリアの可能性は大きく広がります。これは、特定の職務において高いパフォーマンスを発揮するための知識や技術です。どのようなスキルを目指すかは、本人の興味・関心や適性、そして目指すキャリア像によって異なります。
【専門スキルの例】
- 事務職・経理職: マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)、日商簿記検定(3級・2級)など。
- IT・専門職: プログラミング言語、Webデザイン、データ分析スキルなど。近年では、ITスキルを習得できる就労移行支援事業所も増えています。
- その他: 語学力(TOEICなど)、特定の業界に関する専門知識、CAD操作など。
資格取得は、スキルを客観的に証明する有効な手段です。就労移行支援事業所の中には、資格取得に向けた学習支援や受験料の助成を行っている場所もあります。これらの支援を活用し、自身の「武器」を増やすことが、キャリアアップの大きな推進力となります。
雇用の安定とスキルの深化を経て、キャリアは次の段階へと進みます。それは、組織の中で自身の役割を広げ、より大きな貢献を実感することで、仕事の「やりがい」を高めていく段階です。
いきなり大きな責任を負うのではなく、小さな成功体験を積み重ねながら、徐々に業務の範囲を広げていく「スモールステップ方式」が非常に有効です。これは、本人の自信を育み、過度なプレッシャーを避けるための重要なアプローチです。企業側も、本人の習熟度に応じて段階的に責任ある業務を任せることで、リスクを管理しながら人材を育成できます。
例えば、以下のようなステップが考えられます。
このような段階的な成長は、モチベーションを維持し、「自分は成長している」という実感を得る上で極めて重要です。
業務範囲の拡大は、やがて新たな「役割」への挑戦に繋がります。これは、単に自分の仕事をするだけでなく、チームや組織全体に貢献する役割です。
ある女性は、嘱託職員から正社員へ転職後、貿易業務の専門性を高め、業務マニュアルの作成や若手社員の育成も担当するようになりました。このように、貢献の範囲が広がることは、大きなやりがいと自己実現に繋がります。
これら3つの柱—「雇用の安定化」「スキルの深化」「役割の拡大」—は、障害のある方一人ひとりが、自分らしいキャリアを築くための道しるべです。就労移行支援事業所は、この道のりを共に歩むパートナーとして、各段階で必要なサポートを提供します。
キャリアアップは、一人で成し遂げるものではありません。特に、障害特性への理解や職場環境との調整が必要な場合、専門的なサポートが不可欠です。私たち就労移行支援事業所は、キャリアのスタートラインである「自己理解」から、就職後の「定着」、そしてその先の「発展」まで、一貫して伴走するパートナーです。ここでは、就労移行支援を最大限に活用し、キャリアアップを実現するための具体的な5つのステップを解説します。
すべてのキャリアプランは、「自分を知る」ことから始まります。これは、キャリアという長い旅の地図を手に入れるための最も重要なプロセスです。
就労移行支援では、「就労アセスメント」という手法を用いて、客観的かつ多角的に自己を分析します。これは、支援員との面談、各種プログラムへの参加、作業訓練などを通じて、以下のような点を明らかにしていくプロセスです。
この「自己理解」が深まることで、自分に合った仕事や職場環境が明確になり、就職活動におけるミスマッチを防ぐことができます。
自己理解を基に、支援員と二人三脚で「個別支援計画」を作成します。これは、あなたのキャリア目標を達成するための具体的なロードマップです。「まずは週5日通所して生活リズムを整える」「3ヶ月後までにMOSの資格を取得する」「半年後には事務職での就職を目指す」といった、短期・中期の目標を設定します。
特に、働くための大前提となるのが生活リズムの安定です。毎日決まった時間に事業所に通所する習慣は、規則正しい生活を取り戻し、「働ける準備が整っている」ことの客観的な証明となります。この準備期にしっかりと土台を固めることが、その後のステップをスムーズに進める鍵となります。
目標が定まったら、次はその達成に必要なスキルを身につける訓練期に入ります。就労移行支援事業所では、個別支援計画に基づいた多様なプログラムが提供されます。
事業所によって特色はありますが、一般的に以下のようなトレーニングが行われます。
これらの訓練は、単にスキルを学ぶだけでなく、集団の中で他者と関わる経験を通じて、対人関係のスキルを向上させる効果もあります。
訓練の集大成として、多くの事業所が企業でのインターンシップや職場実習の機会を提供しています。これは、キャリアアップを目指す上で非常に価値のある経験です。
実習を通じて、利用者は「実際の職場の雰囲気や業務内容が自分に合っているか」を体感的に確認できます。同時に、企業側も「この人はどのような配慮があれば、どのような能力を発揮できるのか」を具体的に理解することができます。この相互理解が、採用後のミスマッチを劇的に減らし、スムーズな職場定着に繋がります。ある調査では、実践的な訓練を受けた方の就職率は54.7%に達し、年々上昇傾向にあると報告されています。
スキルと自信を身につけ、いよいよ就職活動の段階です。キャリアアップを目指す上では、目先の条件だけでなく、長期的な視点で企業を選ぶことが重要です。
給与や業務内容、勤務地といった条件はもちろん重要ですが、それに加えて以下のような「キャリア形成」の視点を持つことが、将来の成長に繋がります。
面接では、「できること」「できないこと」「体制を整えればできること」を正直に、かつ具体的に伝えることが、質の高いマッチングの鍵です。就労移行支援では、応募書類の添削や模擬面接を繰り返し行い、自信を持って面接に臨めるようサポートします。
自分一人で優良企業を見つけるのは簡単ではありません。ここで、私たち支援機関のネットワークが大きな力を発揮します。就労移行支援事業所は、ハローワーク、障害者雇用に特化した転職エージェント、地域の企業などと密接に連携しています。これらの機関が持つ非公開求人や、各企業の障害者雇用への取り組みに関する詳細な情報を活用することで、より自分に合った企業と出会う可能性が高まります。
就職はゴールではなく、新たなスタートです。就職後、安定して働き続け、信頼を築いていく「定着期」は、キャリアアップの土台となる非常に重要な期間です。
多くの人が不安を感じる就職後の期間を支えるのが「就労定着支援」サービスです。これは、障害者総合支援法に基づく公的な福祉サービスで、就労移行支援などを利用して就職した方を対象に、就職後原則6ヶ月間(最大3年間)、職場に定着できるようサポートするものです。
就労移行支援事業所の多くがこのサービスを提供しており、あなたのことをよく知る支援員が引き続きサポートします。具体的には、以下のような支援が行われます。
この定着支援の存在が、職場定着率を大きく向上させる要因となっています。あるデータでは、障害のある方全体の1年後定着率が58.4%であるのに対し、就労移行支援を利用した方の定着率は82.3%と、非常に高い水準を示しています。
働き続ける中で、「もう少しこうだったら、もっと能力を発揮できるのに」と感じる場面が出てくるかもしれません。その際に重要になるのが「合理的配慮」の対話による調整です。合理的配慮とは、障害のある方が働く上での障壁を取り除くための調整のことで、法律で企業の義務とされています。これは「特別扱い」ではなく、誰もが能力を発揮できる環境を作るための工夫です。定着支援の期間中、支援員は本人と企業の間でこの「合理的配慮」を共に作り上げていくプロセスをサポートします。
職場に定着し、安定して業務をこなせるようになったら、いよいよ本格的なキャリアアップを目指す「発展期」です。
ここからは、より主体的なアクションが求められます。上司との定期的な面談(1on1など)の機会を活用し、自身の成長意欲や将来のキャリアについての希望を伝えましょう。「〇〇の業務にも挑戦してみたい」「将来的にはチームのリーダーを目指したい」といった意思表示をすることが、新たな機会を得るきっかけになります。企業側も、意欲のある社員には成長の機会を提供したいと考えています。
企業内での成長だけでなく、外部の専門的な支援を引き続き活用することも有効です。
これらの5つのステップは、キャリアアップへの道のりを具体的に示すものです。就労移行支援事業所は、この長い道のりのあらゆる局面で、あなたに寄り添い、専門的な知識と経験でサポートする存在です。
障害のある方のキャリアアップは、個人の努力や企業の取り組みだけで完結するものではありません。社会全体でその歩みを支えるための、多様な公的支援制度が存在します。また、近年では「障害」そのものの捉え方を変え、個々の「違い」を「強み」として活かそうという新しい潮流も生まれています。これらの制度や考え方を知ることは、キャリアの可能性をさらに広げる上で大きな力となります。
企業が障害者雇用に前向きに取り組み、採用後のキャリア形成を支援しやすくするために、国は様々な助成金制度を用意しています。これらの制度の存在は、「企業は障害のある社員の成長を支援することにメリットがある」ということを意味しており、働く側にとっても心強い追い風となります。
まず、企業が採用のハードルを下げ、多様な人材に門戸を開くことを後押しする助成金があります。
採用後の「定着」と「成長」を直接的に支援する助成金も充実しています。
助成金の活用や雇用管理に関するノウハウがない企業のために、無料で専門的なアドバイスを受けられる相談窓口も整備されています。
キャリアアップを目指す個人を直接支援する制度も整っています。これらを活用することで、主体的にスキルアップに取り組むことができます。
近年、障害者雇用、特に発達障害のある方の雇用において「ニューロダイバーシティ(Neurodiversity)」という新しい考え方が世界的に注目されています。これは、キャリアアップの可能性を大きく広げるパラダイムシフトです。
ニューロダイバーシティとは、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)といった脳や神経の発達における違いを、治療や矯正の対象となる「障害」ではなく、「人間の自然な多様性の一つ」として捉える考え方です。この視点に立つと、一見「弱み」や「困難さ」と見なされがちな特性が、特定の業務においては非常に高いパフォーマンスを発揮する「強み」となり得ます。
【特性が「強み」に変わる例】
- 高い集中力、細部への注意力、パターン認識能力: ソフトウェアのテスト、品質保証、データ分析、サイバーセキュリティなどの分野で卓越した能力を発揮する。
- 過集中、独自の視点: 芸術、研究開発、企画など、創造性が求められる分野で革新的なアイデアを生み出す。
- 論理的思考、誠実さ: 経理、法務、コンプライアンスなど、正確性とルール遵守が求められる業務に適性がある。
海外の先進企業では、このニューロダイバーシティを経営戦略として取り入れ、大きな成果を上げています。
日本でも、経済産業省が情報発信を始めるなど、この考え方は徐々に広がりつつあります。ニューロダイバーシティの視点は、「配慮されるべき存在」から「特定の分野で高い価値を発揮する専門人材」へと、障害のある方のキャリアイメージを大きく転換させる可能性を秘めています。自分の特性を「強み」として認識し、それを活かせる職務を探すという、新しいキャリア戦略の道を開くものなのです。
本記事では、就労移行支援事業所の視点から、障害のある方のための「新しいキャリアアップ」について、その重要性、具体的な考え方、実現に向けたステップ、そして社会的な支援体制に至るまで、多角的に解説してきました。
改めて要点を振り返ると、障害者雇用を取り巻く環境は今、大きな転換期にあります。法定雇用率の引き上げという法的な後押しを受け、企業は単に採用数を満たす「量」の確保から、採用した人材がいかに定着し、組織に貢献してくれるかという「質の向上」へと経営の舵を切り始めています。これは、これまでキャリアアップの機会が限られがちだった障害のある方々にとって、まさに追い風です。「安定」だけでなく「成長したい、活躍したい」という多くの当事者の願いと、企業のニーズが、今まさに合致しようとしているのです。
私たちが提唱した「新しいキャリアアップ」は、従来の画一的な出世競争ではありません。「雇用の安定化」という確固たる土台を築き、その上で「専門性・スキルの深化」によって自分自身の価値を高め、「役割・貢献範囲の拡大」を通じて仕事のやりがいと自己実現を果たしていく、一人ひとりの特性とペースに合わせた多角的で段階的な成長のプロセスです。
そして、その道のりは決して孤独なものではありません。私たち就労移行支援事業所は、キャリアの第一歩である「自己理解」から、就職活動、そして就職後の「定着支援」、さらにはその先のキャリア形成に至るまで、一貫してあなたに寄り添い、専門的な知識と経験で伴走する強力なパートナーです。あなたの強みと弱みを深く理解し、あなたと企業の間に立って円滑なコミュニケーションを促す「橋渡し役」として、あなたの挑戦を全力でサポートします。
「キャリアアップ」に、決まった形や唯一の正解はありません。大切なのは、あなた自身が「どう働きたいか」「どう成長したいか」という想いを持ち、それに向かって一歩を踏み出すことです。もし今、あなたが自分のキャリアについて少しでも考え始めているのなら、あるいは将来に漠然とした不安や希望を抱いているのなら、ぜひその想いを私たちに聞かせてください。
まずは、お近くの就労移行支援事業所を見学し、相談することから始めてみませんか。そこには、あなたの可能性を信じ、共に未来を描いてくれる支援員が待っています。あなたらしいキャリアアップの物語を、ここから一緒に始めましょう。