障害や病気を抱えながら、自身のキャリアを築いていこうと考えるとき、多くの方が「障害について、職場に伝えるべきか、伝えないべきか」という大きな問いに直面します。この選択は、それぞれ「オープン就労」と「クローズ就労」と呼ばれ、働き方そのものを大きく左右する重要な決断です。
特に、専門的なスキルが求められるIT業界を目指す場合、この選択は単なる情報開示の有無に留まりません。日々の業務遂行、職場環境、人間関係、そして将来のキャリアパスに至るまで、あらゆる側面に深く影響を及ぼします。どちらが正解というわけではなく、ご自身の特性、価値観、そしてキャリアプランに合った「ベストな選択」を見つけることが何よりも大切です。
この記事では、オープン就労とクローズ就労の基本的な違いから、IT業界で働く上での具体的なメリット・デメリット、そしてご自身に合った働き方を見つけるための判断基準までを網羅的に、そして深く掘り下げて解説します。この記事が、あなたが自信を持って次の一歩を踏み出すための羅針盤となることを目指します。
まず、議論の前提となる二つの働き方の定義を明確にしておきましょう。これは、今後のキャリアを考える上での基礎知識となります。
オープン就労とは、企業に対して自身の障害や病気に関する情報を開示した上で、就職活動を行い、就労することを指します。多くの場合、障害のある方を対象とした「障害者雇用枠」での応募が主となりますが、一般の求人(一般雇用枠)に応募する際に、自ら障害を開示するケースも含まれます。
最大の特長は、企業から障害の特性に応じた「合理的配慮」を受けながら働ける点です。これにより、心身の負担を軽減し、安定して業務に取り組む環境を整えやすくなります。
一方、クローズ就労とは、障害や病気について企業に開示せず、就職活動を行い、就労することです。応募は、障害の有無を問わない「一般雇用枠」のみとなります。
法律上、自身の障害を開示する義務はないため、クローズ就労という働き方自体には何ら問題はありません。業務を遂行できるのであれば、これは個人の自由な選択です。ただし、障害に対する配慮は原則として期待できないため、高い自己管理能力が求められます。
ここからは、本記事の核心部分です。一般論に留まらず、「ITエンジニアとして働く」という具体的な文脈で、オープン就労とクローズ就労を多角的に比較・分析します。
オープン就労の最大のメリットは、障害特性に合わせた配慮を受けられることです。これにより、パフォーマンスを安定させ、長期的に働きやすい環境を構築できます。IT業界は柔軟な働き方が浸透しつつあり、オープン就労との親和性が高い側面もあります。
特に在宅勤務制度は、通勤による心身の負担を大幅に軽減できるため、多くの当事者にとって大きなメリットとなります。
クローズ就労では、原則として配慮は受けられません。体調が優れない日でも、周囲に理由を説明しにくく、無理をしてしまうリスクが伴います。IT業界では、突発的なシステム障害への緊急対応や、厳しい納期前の高負荷な業務が発生することも少なくありません。このような状況下で、一人でプレッシャーを抱え込み、心身のバランスを崩してしまう可能性は、オープン就労に比べて高いと言えるでしょう。
一般的に、障害者雇用枠の求人は一般枠に比べて数や職種が少ない傾向にあります。特に、管理職や高度な企画職などの求人は限られるのが実情です。
しかし、IT業界においては少し事情が異なります。業界全体が深刻な人材不足にあり、スキルを重視する文化が根付いているためです。プログラミング、ネットワーク、サーバー管理、データサイエンスといった明確な専門スキルがあれば、障害者雇用枠であっても専門職として活躍できる求人が見つかりやすいのが特徴です。また、未経験から挑戦できるIT事務やヘルプデスクといった職種の募集も比較的多く存在します。
クローズ就労の最大のメリットは、応募できる求人に制限がないことです。企業の規模(スタートアップから大手まで)、業種、職種、プロジェクト内容など、全ての求人が選択肢となります。最先端の技術に触れたい、多様なプロジェクトを経験したい、といったキャリア志向が強い方にとっては、この選択肢の広さは非常に魅力的です。
合理的配慮を受ける分、業務範囲が限定されることなどを理由に、オープン就労の給与水準はクローズ就労に比べて低めに設定される傾向があります。しかし、これもIT業界では一概には言えません。前述の通り、IT業界はスキルが重視されます。高い専門性や希少なスキルを持つエンジニアであれば、障害者雇用枠であっても一般枠と遜色ない、あるいはそれ以上の待遇を得ることは十分に可能です。
クローズ就労では、他の社員と全く同じ評価基準、給与テーブルが適用されます。そのため、成果を出せば、それに見合った昇給や昇進のチャンスが平等に与えられます。キャリアアップのスピードやポジションの上限に制約がなく、純粋に実力で勝負したい方には有利な環境です。
障害への理解がある環境で働くことは、精神的な安定に繋がります。困ったときに相談できる相手がいる、自分の特性を前提としてコミュニケーションが取れる、といった環境は、不要なストレスを減らし、仕事への集中力を高めます。この「安心感」は、数字にも明確に表れています。ある調査では、障害者雇用枠で就職した場合の1年後の職場定着率は約70%であるのに対し、一般枠で障害を非開示で就職した場合の定着率は約32%と、2倍以上の差があることが報告されています。
クローズ就労では、「いつ障害のことが周囲に知られてしまうか」という不安を常に抱える可能性があります。何気ない雑談や飲み会の席、あるいは年末調整の書類など、予期せぬ場面で自身の状況に言及せざるを得なくなるかもしれません。このような精神的なプレッシャーは、人間関係の構築を妨げ、孤立感を深める原因となり、結果として早期離職に繋がるリスクをはらんでいます。
ここまでの分析を踏まえ、ご自身がどちらの働き方に向いているかを判断するためのツールを用意しました。ぜひ、自己分析の参考にしてください。
| 比較項目 | オープン就労 | クローズ就労 |
|---|---|---|
| 障害の開示 | 開示する | 開示しない |
| 合理的配慮 | 受けやすい 安定した就労環境を築きやすい |
原則受けられない 高い自己管理能力が必須 |
| 求人の多さ | 少ない傾向 (IT専門職は比較的あり) |
多い 職種・業種の選択肢が圧倒的に広い |
| 給与水準 | 低い傾向 (ただしITスキルにより高待遇も可) |
高い傾向 成果に応じた報酬が期待できる |
| キャリアパス | 専門職中心、安定志向 着実にスキルを磨きたい人向け |
多様、挑戦志向 マネジメントや最先端技術に挑戦したい人向け |
| 職場定着率 | 高い 精神的な安心感が大きい |
低い 精神的負担や孤立のリスク |
| 主なメリット | 安定して長く働ける安心感 | キャリアの選択肢と可能性の広さ |
| 主なデメリット | 求人やキャリアパスが限定的になりがち | 精神的負担が大きく、離職リスクが高い |
働き方の方向性が見えてきた方も、まだ迷っている方も、次に行うべきは具体的なアクションです。以下の3ステップで、ご自身の選択をより確かなものにしていきましょう。
まずは自分自身を深く理解することがスタートです。頭の中だけで考えず、紙に書き出してみましょう。
自己分析で整理した希望をもとに、実際の求人情報を探してみましょう。
一人での就職・転職活動は、視野が狭まったり、客観的な判断が難しくなったりしがちです。不安が大きくなる前に、専門家の力を借りることを強くお勧めします。
なぜ相談が必要か?
専門家は、多くの事例を見てきたプロフェッショナルです。自分一人では気づかなかった強みや可能性、あるいはリスクについて客観的なアドバイスをくれます。また、求人探しのノウハウや面接対策など、実践的なサポートも受けられます。
この記事を読んで、「オープンかクローズか、まだ決めきれない」「自分のスキルでIT業界で通用するのか不安」「浜松でITエンジニアとして働きたいけど、何から始めればいいか分からない」…そんな風に感じていませんか?
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