コラム 2026年2月4日

「発達障害で発表が苦手」は克服できる!就労移行支援のプロが教える具体的な対策と成功事例

仕事や訓練で避けられない「発表」への不安に寄り添う

「人前で話すのが怖い」「頭が真っ白になって言葉が出てこない」「準備はしたはずなのに、うまく伝えられない」…。発達障害の特性を持つ方にとって、「発表」や「プレゼンテーション」は、就職活動や職場で直面する大きな壁の一つかもしれません。その不安や恐怖は、決してあなた一人のものではありません。

この記事では、私たち就労移行支援事業所の専門的な視点から、その「苦手」の背景にある理由を解き明かし、具体的な克服法と支援の活用法を、温かいトーンで具体的にお伝えします。大切なのは、苦手を根性で克服しようとするのではなく、特性を理解し、自分に合った方法を見つけることです。その一歩を、私たちと一緒に踏み出してみませんか。

なぜ発表が苦手なのか?:ASD・ADHDの特性から紐解く

発表への苦手意識は、発達障害の特性と深く関わっています。ご自身の「なぜ?」を知ることは、対策を立てるための第一歩です。

感覚過敏:情報の洪水で集中できない

発達障害のある方の中には、特定の感覚が非常に敏感な「感覚過敏」を持つ方がいます。発表の場は、この感覚を刺激する要素で溢れています。

  • 聴覚過敏:会場のざわめき、空調の音、自分の声の響きなどが気になり、話す内容に集中できなくなる。
  • 視覚過敏:スポットライトの眩しさ、聴衆の視線、壁の掲示物など、目に入る情報が多すぎて脳が疲弊してしまう。
  • 触覚過敏:スーツやネクタイの締め付け、タグのチクチク感が不快で、発表どころではなくなる。

これらの感覚的な苦痛は、脳が処理できる情報量を超えさせ、思考停止やパニックを引き起こす原因となります。

実行機能の課題:段取りや言語化の難しさ

ADHD(注意欠如・多動症)の特性がある方に見られるのが、「実行機能」の課題です。これは、物事を計画し、順序立てて実行する能力を指します。

  • 計画・段取りの苦手さ:発表内容を構成し、時間内に収まるように話の順序を組み立てることが難しい。
  • ワーキングメモリの課題:話す内容を一時的に記憶し、順序通りにアウトプットすることが苦手。途中で「何を話そうとしていたか」を忘れてしまい、頭が真っ白になる。
  • 言語化の難しさ:頭の中にはイメージや考えがあるのに、それを的確な言葉に変換して話すことに時間がかかる。

コミュニケーション特性:場の空気が読めない不安

ASD(自閉スペクトラム症)の特性がある方は、独自のコミュニケーションスタイルを持っています。言葉を文字通りに解釈する傾向があり、比喩や曖昧な表現、場の空気を読むことが苦手な場合があります。聴衆の反応(表情や態度)から「理解されているか」「退屈していないか」を推測することが難しく、一方的な話し方になっていないか不安になったり、どう振る舞えば良いか分からなくなったりします。

二次障害としての不安:過去の失敗体験が引き起こすパニック

これまでの経験の中で、発表での失敗を繰り返し、人前で恥をかいたり、叱責されたりした経験が積み重なると、それがトラウマとなることがあります。これは「二次障害」と呼ばれ、発表の場面そのものに対して強い不安や恐怖を感じる状態(社交不安障害など)を引き起こします。「また失敗するかもしれない」という予期不安が、心拍数の上昇や発汗、思考停止といったパニック症状を誘発し、悪循環に陥ってしまうのです。

就労移行支援事業所でのサポート

一人で悩む必要はありません。就労移行支援事業所では、専門スタッフがあなたの特性に合わせたサポートを体系的に提供します。

スモールステップでの練習(SST、模擬発表)

いきなり大勢の前で話すのではなく、安心できる環境で小さな成功体験を積み重ねることが重要です。SST(ソーシャルスキルトレーニング)では、まず支援員がお手本を見せ(モデリング)、次に他の利用者や支援員を聴衆に見立てて模擬発表(ロールプレイ)を行います。失敗しても大丈夫な環境で何度も練習し、具体的で肯定的なフィードバックを受けることで、自信を育みます。

伝わる構成の作り方(PREP法、視覚支援)

話の構成が苦手な方には、思考を整理するフレームワークが有効です。例えば、Point(結論)→ Reason(理由)→ Example(具体例)→ Point(結論)の順で話す「PREP法」を学ぶことで、誰でも分かりやすい構成を作れます。また、PowerPointなどのスライドを「1スライド=1メッセージ」の原則で作成し、話す内容を視覚化することで、ワーキングメモリの負担を減らし、聞き手にも伝わりやすくなります。

ITツールや代替手段の活用

テクノロジーの活用も有効な手段です。例えば、原稿を読み上げてくれる音声合成アプリを使えば、話すスピードや間の取り方を客観的に確認できます。また、どうしても声で話すのが難しい場合、発表の一部をビデオメッセージにしたり、詳細な資料を配布して質疑応答を中心にしたりするなど、発表の形式を工夫する「代替手段」を企業に提案することも、私たちがサポートします。

成功事例:Aさんのケース

ASDの特性を持つAさんは、面接での自己PRが苦手で、頭が真っ白になることに悩んでいました。私たちはまず、Aさんの強みや経験を一緒に整理し、PREP法を使って自己PRの構成を作成。次に、それを箇条書きにした「お守りカード」を作り、模擬面接を繰り返しました。最初は声が震えていましたが、「カードを見てもいい」という安心感と、支援員からの「今の具体例、とても分かりやすかったですよ」というフィードバックで、徐々に自信をつけました。結果、Aさんは志望する企業の面接で落ち着いて自己PRができ、見事内定を勝ち取りました。

今日からできる工夫

専門的な訓練と並行して、ご自身でできる工夫もたくさんあります。自分に合った方法を見つけて試してみましょう。

「お守り」としての台本の作り方

全文を書き出した台本は安心材料になりますが、棒読みになりがちです。そこで、スライドや話の要点だけを書き出したキーワード集やキューカード(小さなカード)を作成するのがおすすめです。本番で万が一頭が真っ白になった時に見る「カンペ」として持っておくだけで、心の負担が大きく減ります。

安心できる環境調整のコツ

感覚過敏がある場合、環境を調整することが非常に重要です。可能であれば、事前に主催者に配慮を依頼しましょう。

  • 「聴覚過敏があるため、発表中はマイクの音量を少し下げてほしい」
  • 「視覚過敏があるので、スポットライトを弱めてほしい、または席を端にしてほしい」
  • 「発表前に、会場の様子を少し確認させてほしい」

自分の特性を伝え、必要な配慮を求めることも大切なスキルです。

パニックを防ぐ「お守りの言葉」

頭が真っ白になった時や、難しい質問をされた時に使える「決まり文句」を用意しておきましょう。沈黙は不安を増幅させますが、一言発するだけで落ち着きを取り戻せます。

  • 「申し訳ありません、少し緊張しておりますので、10秒だけ考えさせてください。」
  • 「ご質問の意図を確認したいのですが、〇〇という理解でよろしいでしょうか?」
  • 「その点については、後ほど資料でご確認いただけますでしょうか。」

結びに:完璧を目指さず、自分らしい伝え方を見つけるために

発表の苦手さを克服することは、「流暢に話せるようになる」ことだけがゴールではありません。完璧を目指すあまり、自分を追い詰めてしまうのは本末転倒です。

大切なのは、自分の特性を理解し、受け入れた上で、「自分らしい伝え方」を見つけることです。それは、キーワードを書いたカードを使いながら話すスタイルかもしれませんし、図やイラストを多用した分かりやすい資料で補うスタイルかもしれません。

就労移行支援事業所は、その「自分らしい伝え方」を見つけるための練習と挑戦ができる場所です。専門家のサポートを受けながら、小さな成功体験を積み重ね、少しずつ自信をつけていきましょう。あなたの「伝えたい」という気持ちを、私たちは全力で応援します。まずはお気軽にご相談ください。

まずは無料相談から
始めませんか?

あなたの状況やご希望をお聞かせください。
最適なサポートプランをご提案いたします。
ご希望の方は施設見学や体験利用も可能です。

イラスト