コラム 2025年12月26日

自分に合う働き方を見つける全手順とは?|精神・発達障害のある方のための就労移行支援

その「働きたいけど、不安」を「働ける自信」に変えるために

「精神障害や発達障害の特性で、仕事が長続きしない」

「働きたい気持ちはあるけれど、何から始めればいいかわからない」

「コミュニケーションが苦手で、職場の人間関係に不安がある」

「自分に合う仕事や働き方がわからず、一歩を踏み出せない」

このような悩みを抱え、一人で立ち止まっていませんか?近年、障害者雇用促進法の改正に伴い法定雇用率が段階的に引き上げられ、企業側の障害者雇用への意識は高まっています。特に、精神障害者や発達障害者の雇用数は年々増加しており、活躍の場は確実に広がっています。厚生労働省の調査によると、ハローワークを通じた精神障害者の就職件数は2024年度には65,418件に達し、前年度比で8.1%増加するなど、市場は活況を呈しています。

しかしその一方で、自身の特性と職場の環境が合わずに無理をしてしまい、心身のバランスを崩して早期離職に至るケースも少なくありません。障害を開示せずに一般枠で就職した場合、1年後の職場定着率は30.8%という厳しいデータもあります。この「働きたい」という想いと、「働き続ける」ことの難しさとの間にあるギャップを埋めることが、現代の障害者雇用における最大の課題と言えるでしょう。

そのような「働きたい」という想いと現実のギャップを埋めるための強力なサポーターが「就労移行支援」です。

就労移行支援は、単に仕事を見つけるための場所ではありません。障害のある方が、自分自身の特性を深く理解し、必要なスキルを身につけ、自信を持って社会へ踏み出すための準備を整える、いわば「社会に出るためのリハビリテーション」の役割を担う公的な福祉サービスです。この記事では、特に精神障害や発達障害のある方が、この就労移行支援という制度を最大限に活用し、**「自分を理解し、自分に合った職場で、長く安定して働く」**という目標を達成するための具体的な方法を、制度の基本から事業所の選び方、利用者の成功事例まで、網羅的に、そして深く掘り下げて解説します。この記事を最後まで読めば、漠然とした不安が晴れ、あなたに合った「次の一歩」が明確になるはずです。

就労移行支援とは?まず知っておきたい3つの基本

就労移行支援は、障害者総合支援法に基づき、障害のある方が一般企業へ就職し、安定して働き続けることを目的とした福祉サービスです。全国に約3,400箇所の事業所があり、多くの人が利用しています。ここでは、利用を検討する上で最低限知っておきたい「対象者」「利用期間」「料金」という3つの基本を簡潔に解説します。

1. 利用できる人(対象者)

就労移行支援は、特定の条件を満たす方が利用できます。自分が対象になるか、まずは確認しましょう。

  • 障害種別: 精神障害(うつ病、統合失調症、双極性障害、不安障害など)、発達障害(ASD、ADHD、学習障害など)、身体障害、知的障害、そして国が定める指定難病(376疾病 2025年4月時点)のある方が対象です。
  • 重要なポイント: 障害者手帳がなくても、医師の診断書や意見書があれば利用できる場合があります。実際に、発達障害のグレーゾーンの方や、手帳の取得には至っていない精神疾患の方など、多くの方が手帳なしでサービスを利用しています。利用を希望する場合、まずは主治医に相談し、就労移行支援の利用に関する意見書や診断書を作成してもらうことが第一歩となります。
  • 年齢・就労状況: 原則として18歳以上65歳未満で、一般企業への就職を希望している方が対象です。また、利用開始時点で企業に雇用されていないこと(離職中または休職中)が条件となります。

2. 利用できる期間

就労移行支援を利用できる期間には上限が定められています。

  • 原則2年間(24ヶ月)です。この期間は、利用者が自分のペースで訓練を進め、就職活動を行い、就職後の定着支援を受けるために設定されています。
  • 個々の状況に応じて、半年や1年程度で就職し、利用を「卒業」する方も多くいます。必ずしも2年間を使い切る必要はありません。
  • 一方で、自治体が必要と判断した場合には、最大1年間(12ヶ月)の延長が認められることもあります。これは、就職活動が難航した場合や、より丁寧な準備が必要な場合などに適用される可能性があります。

3. 気になる利用料金

福祉サービスと聞くと、料金が気になる方も多いでしょう。しかし、就労移行支援は多くの方が経済的負担なく利用できる制度設計になっています。

  • 利用料金は、前年度の世帯収入に応じて自己負担の上限額が定められています。ここでいう「世帯」とは、本人と配偶者のみを指し、親や兄弟と同居していても、彼らの収入は計算に含まれません。
  • 厚生労働省のデータによると、障害福祉サービス利用者全体のうち、約9割の方が自己負担0円(無料)で利用しています。これは、前年度に本人(と配偶者)の収入が住民税非課税の範囲内であった場合、利用料が無料になるためです。
  • 具体的な料金体系は以下の通りです。
区分 世帯の収入状況 自己負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市区町村民税が非課税の世帯(※1) 0円
一般1 市区町村民税課税世帯(所得割16万円未満)(※2) 9,300円
一般2 上記以外 37,200円

※1 収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。
※2 収入が概ね670万円以下の世帯が対象となります。

例えば、前年度に収入がなかった方や、収入が少なく住民税が非課税だった方は、無料で利用できます。前年度に一定の収入があった方でも、月の利用回数に関わらず、上限額以上の負担は発生しません。この経済的負担の軽さが、安心して訓練に集中できる大きな理由の一つです。

【本記事の核心①】精神・発達障害のある方が”職”ではなく”適職”を見つけるための5大支援

就労移行支援の真価は、単に求人を紹介することではありません。精神障害や発達障害の特性を持つ一人ひとりが、社会で持続的に活躍するための「土台」を築くことにあります。それは、心身の安定から自己理解、スキル習得、そして就職後の定着まで、一貫したパーソナルな支援を通じて実現されます。ここでは、その核心となる5つの支援内容を深く掘り下げていきます。

支援1:心身の安定と生活リズムの確立

安定して働くための最も重要な基盤は「健康管理能力」と「規則正しい生活リズム」です。特に、環境の変化に敏感であったり、体調に波があったりする精神・発達障害のある方にとって、この土台作りは不可欠です。

  • 目的: 毎日決まった時間に起床し、準備をして、職場に向かうという、就労の基本となる行動様式を確立すること。そして、自身の心身の状態を客観的に把握し、不調のサインに早期に気づき対処する「セルフケア能力」を養うことです。
  • 具体例:
    • 通所習慣の形成: まずは週3日から、慣れてきたら週5日へと、個々の体調に合わせて通所日数を調整します。決まった日時に事業所に「通う」こと自体が、通勤を想定した優れたシミュレーションとなり、生活リズムを自然に整えていきます。
    • 体調管理プログラム: 多くの事業所では、日々の気分や体調、睡眠時間などを記録するシートを用います。これを支援員と共有し振り返ることで、自分の体調の波やストレスのサインを客観的に把握できるようになります。「疲れやすい」「気圧の変化に弱い」といった特性に合わせ、効果的な休憩の取り方やストレス対処法(コーピング)を一緒に見つけていきます。
    • 運動プログラム: ウォーキング、ヨガ、ストレッチなど、軽度の運動プログラムを取り入れている事業所もあります。これは、通勤に必要な体力をつけるだけでなく、気分のリフレッシュやストレス軽減にも繋がります。

この段階は、いわば「働くための助走期間」です。焦らず、自分のペースで心身のコンディションを整えることが、その後の訓練や就職活動を成功させるための鍵となります。

支援2:自分の「トリセツ」を作成し、自己理解を深める

精神・発達障害のある方が「適職」に就き、長く働き続けるためには、「自分自身を深く理解し、他者に適切に説明できること」が極めて重要です。就労移行支援では、この「自己理解」を深めるための多様なプログラムが用意されています。

  • 目的: 自分の障害特性、思考の癖、強み・弱み、得意・苦手な作業環境、そしてパフォーマンスを発揮するために「必要な配慮」を客観的に把握し、それを具体的な言葉で表現する能力を養うことです。これは、自分に合った企業選びの軸となり、面接での自己PRや、就職後の合理的配慮の依頼に不可欠な「自分の取扱説明書(トリセツ)」となります。
  • 具体例:
    • 個別カウンセリング: 経験豊富な支援員との1対1の面談を通じて、過去の就労経験における成功体験や失敗体験を振り返ります。「なぜあの仕事は続かなかったのか」「どんな時にやりがいを感じたか」を深掘りすることで、自分でも気づかなかった特性や価値観を整理します。
    • 各種アセスメントの活用: 職業適性検査(GATBなど)や心理検査、事業所独自の特性理解ツールなどを活用し、主観だけでなく客観的な視点から自分の能力や興味を分析します。
    • グループワークを通じた他者からのフィードバック: グループディスカッションや共同作業の中で、他の利用者から「〇〇さんは、説明が丁寧で分かりやすい」「こういう指示の出し方だと、より伝わるかも」といったフィードバックをもらうことで、他者から見た自分の姿を知る貴重な機会となります。
    • 「障害特性説明書」の作成: これまでの分析の集大成として、企業に提出するための「自分の特性と必要な配慮」をまとめた資料を作成します。例えば、「口頭での指示は記憶しきれないことがあるため、メモやチャットでいただけると助かります」「感覚過敏があるため、窓際の強い光が当たらない席を希望します」など、具体的かつポジティブな表現で伝える練習を行います。

このプロセスを通じて、「自分は〇〇ができない」というネガティブな自己認識から、「自分は〇〇という特性がある。だから△△という工夫や配慮があれば、□□という強みを発揮できる」という建設的な自己認識へと転換していくことが、この支援の最大の目標です。

支援3:実践的な職業スキルと対人スキルの習得

自己理解が深まったら、次は社会で働くための具体的な「武器」を身につける段階です。就労移行支援事業所は、個々の目標や特性に合わせて、多種多様なスキルアッププログラムを提供しています。

  • 目的: 実際の職場で求められる実践的なビジネススキルと、円滑な人間関係を築くためのコミュニケーションスキルを、失敗を恐れずに試せる安全な環境で習得することです。
  • 具体例:
    • 基礎ビジネススキル: 多くの事務職で必須となるPCスキル(Wordでの文書作成、Excelでのデータ入力・集計、PowerPointでの資料作成)から、正しい敬語の使い方、電話応対、来客対応、ビジネスメールの書き方まで、社会人としての基本を体系的に学びます。
    • 専門スキル: 事業所の特色が最も現れる部分です。ITスキルに特化した事業所ではプログラミング(HTML/CSS, JavaScript, Pythonなど)やWebデザイン(Photoshop, Illustrator)を、事務系に強い事業所では簿記やMOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)資格の取得支援を、また軽作業や清掃、調理など、より実践的な作業訓練を行う事業所もあります。自分の目指す職種に合った専門性を持つ事業所を選ぶことが重要です。
    • ソーシャルスキルトレーニング(SST): 精神・発達障害のある方が特に困難を感じやすい対人関係のスキルを、ロールプレイング形式で実践的に学びます。「上司への適切な報告・連絡・相談(報連相)の仕方」「同僚への仕事の頼み方・断り方」「意見が対立した時の対応」「適度な距離感を保った雑談の始め方」など、具体的な場面を想定したトレーニングを繰り返し行います。

これらのプログラムは、多くの場合eラーニングや集合研修、個別指導などを組み合わせて提供され、自分のペースで無理なくスキルアップを図ることができます。

支援4:不安を解消する、二人三脚の就職活動サポート

一人での就職活動は、精神的にも体力的にも大きな負担となります。特に、応募書類の作成や面接には、多くの人が不安を感じるでしょう。就労移行支援では、専門の支援員がマンツーマンで伴走し、内定獲得までを全面的にバックアップします。

  • 目的: 利用者の特性や希望と、企業の求める人材像とのミスマッチを最小限に抑え、納得のいく就職を実現すること。そして、就職活動のプロセスを通じて成功体験を積み、自信を深めることです。
  • 具体例:
    • 企業研究・求人探し: 支援員があなたの特性や希望、体力などを考慮し、ハローワークの求人や事業所が独自に開拓した非公開求人の中から、マッチしそうな企業を一緒に探します。企業の社風や障害への理解度といった、求人票だけでは分からない情報を提供してくれることもあります。
    • 応募書類の添削: 自己理解のプロセスで作成した「トリセツ」を基に、採用担当者に自分の強みや貢献できることが効果的に伝わる履歴書・職務経歴書の作成をサポートします。志望動機や自己PRを一緒に考え、何度も推敲を重ねます。
    • 模擬面接: 入退室のマナーから、よく聞かれる質問(「あなたの障害特性と、それに対する自己対策を教えてください」など)への回答まで、本番さながらの模擬面接を繰り返し行います。面接官役の支援員から客観的なフィードバックをもらうことで、自信を持って本番に臨めるようになります。
    • 企業実習(インターンシップ): 多くの事業所が提携企業での職場実習の機会を提供しています。応募前に数日間~数週間、実際の職場で働くことで、仕事内容や職場の雰囲気、通勤の負担などを体験できます。これは、自分と企業との相性を確認する絶好の機会であり、「ここでなら働けそう」という確信を得ることにも繋がります。
    • 面接同行: 希望すれば、支援員が面接に同行してくれる場合もあります。本人の緊張を和らげたり、本人に代わって必要な配慮事項を補足説明したりと、心強いサポートとなります。

支援5:就職後も続く「職場定着支援」

「内定はゴールではなく、スタートである」――この言葉の通り、就労移行支援の真価は、就職後のサポートにこそあると言っても過言ではありません。新しい環境での不安や困難に直面したとき、一人で抱え込まずに相談できる「第三の味方」がいることが、長期就労の鍵となります。

  • 目的: 就職後に生じる新たな悩みや課題(人間関係、業務内容、体調管理など)を早期に発見し、本人と企業の間に立って解決をサポートすることで、利用者が安心して働き続けられる環境を維持することです。
  • 具体例:
    • 定期的な面談: 就職後も、支援員が電話やメール、対面での面談を定期的に行います。仕事の進捗や職場の人間関係、生活リズムの変化などについてヒアリングし、問題が大きくなる前に一緒に解決策を考えます。
    • 三者面談による環境調整: 本人だけでは伝えにくい困りごと(「業務量が多すぎて、疲れが溜まっている」「指示の出し方をもう少し具体的にしてほしい」など)がある場合、支援員が仲介役となって、本人・企業の上司・支援員の三者で面談を実施します。専門的かつ中立的な立場から、双方が納得できる解決策や、より働きやすくなるための環境調整を提案します。
    • 相談窓口としての役割: 仕事の悩みだけでなく、「給料の管理がうまくいかない」「休日の過ごし方がわからない」といった生活面での不安も気軽に相談できます。支援員は、利用者が安定した職業生活を送るための総合的なサポーターです。

この職場定着支援は、就職後6ヶ月間は就労移行支援事業所が提供することが義務付けられています。その後もサポートが必要な場合は、最長3年間の「**就労定着支援**」という別の福祉サービスに移行して、継続的な支援を受けることが可能です。この手厚い定着支援こそが、就労移行支援経由での就職が高い定着率を誇る最大の理由です。

【本記事の核心②】後悔しない!精神・発達障害に合った就労移行支援事業所の選び方 4つの鉄則

就労移行支援の成果は、どの事業所を選ぶかに大きく左右されます。全国に3,000箇所以上ある事業所は、一見すると同じように見えますが、その支援内容や専門性、実績は千差万別です。ここでは、自分にとって最適な「伴走者」を見つけるための、4つの重要なチェックポイントと具体的なアクションを解説します。

鉄則1:【実績】「就職率」と「定着率」を数字で確認する

事業所の支援の質を客観的に判断する最も重要な指標が「実績」です。特に、ただ就職させるだけでなく、「長く働き続けられているか」を示す**職場定着率**を重視することが、後悔しない事業所選びの鍵となります。

  • なぜ重要か: 2018年の報酬制度改定により、就職実績を出す事業所ほど国からの報酬が高くなる仕組みになりました。これにより、質の低い事業所は淘汰される傾向にありますが、依然として事業所間の質の差は大きいのが現状です。実績は、その事業所が提供する支援の成果を最も雄弁に物語るデータです。
  • チェックポイント:
    • 就職率(一般就労移行率): 利用者が一般企業へ就職した割合です。厚生労働省の2021年度のデータによると、全国平均は56.3%でした。これを大きく上回る事業所は、就職支援に強みがあると考えられます。
    • 職場定着率: 就職後、一定期間(多くは6ヶ月や1年)働き続けている人の割合です。これが最も重要な指標です。優良な事業所では、就職後6ヶ月の定着率が85%~95%と非常に高い水準を誇ります。高い定着率は、丁寧なマッチングと手厚い定着支援の証です。
    • 就職先企業・職種: どのような業界・職種への就職実績が多いかを確認しましょう。大手企業への実績が豊富か、事務職が多いか、専門職(IT・デザイン等)への道も開かれているかなど、自分の希望と照らし合わせます。
  • 確認方法: 多くの大手事業所は公式サイトで実績を公開しています。公開していない場合や、より詳細な情報(例:「精神障害」「発達障害」の方に限定した実績)を知りたい場合は、見学時に必ず質問しましょう。明確な数字を提示できない事業所は、慎重に判断する必要があります。

鉄則2:【プログラム】自分の特性や目標に合った内容か見極める

事業所によってプログラムの内容や専門性は大きく異なります。「自分の苦手」を克服し、「自分の得意」を伸ばせる場所を選ぶことが、スキルアップと自信の獲得に直結します。

  • なぜ重要か: 就労移行支援で何をすべきかという具体的なルールは国によって定められていないため、プログラムの質と内容は事業所に委ねられています。そのため、自分の課題や目標とプログラム内容が合致しているかどうかの見極めが不可欠です。
  • チェックポイント:
    • 障害特性への専門性: 自分の障害特性に合わせたプログラムが充実しているかを確認します。例えば、発達障害のある方向けには、コミュニケーション訓練や自己理解を深めるプログラムに特化した事業所(例:Kaien, ディーキャリア, エンカレッジ)があります。一方、精神障害のある方向けには、ストレスマネジメントや体調管理のプログラムに力を入れている事業所(例:ココルポート)もあります。
    • 学びたい専門スキル: 自分が目指す職種に必要な専門スキルが学べるかを確認します。ITエンジニアやWebデザイナーを目指すなら、プログラミングやデザインツールを学べるIT特化型の事業所(例:Neuro Dive, 就労移行ITスクール)が適しています。事務職を目指すなら、PCスキル(MOS資格対策など)や簿記の講座が充実している事業所が良いでしょう。
    • 個別対応の柔軟性: 全員が一律のプログラムを受けるだけでなく、個人の状況や目標に応じてカリキュラムを柔軟に調整してくれるかどうかも重要です。「このプログラムは苦手なので、別の課題に取り組みたい」といった要望に応えてくれるか、確認しましょう。

鉄則3:【支援体制と環境】安心して相談できるスタッフと過ごしやすい空間か

原則2年間という長い時間を過ごす可能性がある場所だからこそ、支援員との相性や事業所の雰囲気は、訓練を継続するモチベーションを大きく左右します。

  • なぜ重要か: 支援員は、あなたの悩みや目標を共有し、二人三脚で就職を目指す最も重要なパートナーです。また、事業所の物理的な環境や他の利用者との関係性も、日々の通所の快適さやストレス度に直結します。
  • チェックポイント:
    • スタッフの専門性と人柄: 精神保健福祉士や社会福祉士、キャリアコンサルタントなどの専門資格を持つスタッフが在籍しているかは、支援の質を担保する一つの目安です。見学時の対応で、親身に話を聞いてくれるか、質問しやすい雰囲気か、自分のことを一人の人間として尊重してくれるか、といった「人柄」を感じ取りましょう。
    • 事業所の物理的環境: 実際に足を運んで確認することが不可欠です。
      • 感覚過敏への配慮: 聴覚過敏があるなら、ざわついていないか。視覚過敏があるなら、照明が明るすぎないか、パーテーションで区切られた静かな自習スペースがあるかなどを確認します。
      • 設備: PCは一人一台使えるか。インストールされているソフトウェアは何か。清潔感はあるか。
    • 利用者の雰囲気: 利用者の年齢層や男女比、障害種別の割合、事業所全体の雰囲気(和気あいあいとしているか、静かに集中しているかなど)が自分に合いそうかを感じ取ります。他の利用者と話す機会があれば、実際の感想を聞いてみるのも良いでしょう。

鉄則4:【見学・体験】必ず複数(最低2~3ヶ所)を比較検討する

最後の、そして最も重要な鉄則がこれです。パンフレットやウェブサイトの情報だけで判断せず、必ず自分の足で複数の事業所を訪れ、自分の目で見て、肌で感じることが、最良の選択に繋がります。

  • なぜ重要か: 1ヶ所だけでは、その事業所の良し悪しを客観的に判断できません。複数の事業所を比較することで、それぞれの長所・短所が明確になり、「自分にとって何が重要か」という判断基準が定まります。
  • 具体的なアクション:
    1. 見学予約: 気になる事業所の公式サイトや電話で、見学・相談の予約をします。この時点では、まだ利用を決めていなくても全く問題ありません。「まずは話を聞いてみたい」というスタンスで気軽に申し込みましょう。
    2. 体験利用: ほとんどの事業所では、1日~数日間の無料体験利用が可能です。実際のプログラムに参加したり、昼食を他の利用者と一緒に食べたりすることで、その事業所の日常を肌で感じることができます。「本当に自分に合っているか」を最終確認する絶好の機会です。
    3. 質問リストの準備: 見学や体験に行く前に、聞きたいことをリストアップしておきましょう。緊張して忘れてしまうことを防ぎ、聞き漏らしなく情報を収集できます。下記のチェックリストをぜひ活用してください。

【そのまま使える】見学・体験で役立つ質問チェックリスト

カテゴリ チェック項目 / 質問例
実績について □ 就職率と、就職後6ヶ月・1年の定着率を具体的に教えてください。
□ 精神障害/発達障害の方の就職実績(人数・割合)はどのくらいですか?
□ どのような企業・職種への就職が多いですか?具体的な企業名をいくつか教えてもらうことは可能ですか?
プログラムについて □ 1週間の具体的なスケジュールを見せてください。
□ 自分の苦手なプログラムを外したり、得意なことを伸ばすための個別課題に取り組んだりすることは可能ですか?
□ PCスキルはどのレベルまで学べますか?(例:MOS資格対策、ExcelのVBAなど)
支援員について □ 利用者一人ひとりに対して、担当の支援員は決まっていますか?
□ スタッフの方は、どのような専門性(資格や経歴)を持っていますか?
□ 支援員の方と面談する頻度はどれくらいですか?
就職活動について □ 企業実習(インターン)の機会は豊富にありますか?過去の実績(実習先企業や人数)も教えてください。
□ 面接には同行してもらえますか?その場合、どこまでサポートしてくれますか?
定着支援について □ 就職後の面談は、どれくらいの頻度で、どのような形(対面、電話など)で行いますか?
□ 職場でのトラブル時、企業側とどのように連携して調整してくれますか?具体的な事例があれば教えてください。
環境・その他 □ 静かに一人で集中できる自習スペースや個別ブースはありますか?
□ 昼食はどうしている方が多いですか?(弁当持参、外食など)
□ 交通費や昼食代の補助制度はありますか?

就労移行支援 利用開始までの6ステップ完全ガイド

「利用してみたい」という気持ちが固まったら、次はいよいよ具体的な手続きに進みます。一見、複雑に感じるかもしれませんが、各ステップで事業所のスタッフや専門家がサポートしてくれるので、一つひとつ着実に進めていきましょう。ここでは、相談から利用開始までの全プロセスを6つのステップに分けて解説します。

ステップ1:相談・情報収集

すべてはここから始まります。まずは、自分が利用できるサービスについて知り、どのような選択肢があるのかを把握しましょう。

  • どこに相談する?:
    • 市区町村の障害福祉窓口: お住まいの役所にある障害福祉課などが最初の相談窓口です。制度の概要や、地域にある事業所の一覧などの情報を提供してくれます。
    • 相談支援事業所: 障害のある方の生活全般に関する相談に応じ、サービス利用計画の作成などを手伝ってくれる専門機関です。どこに相談すればよいか分からない場合、まずはこちらに連絡するのも良い方法です。
    • インターネットでの情報収集: 「〇〇市 就労移行支援」などのキーワードで検索し、地域の事業所のウェブサイトを見てみましょう。プログラム内容や実績、ブログなどから、事業所の雰囲気を知ることができます。

ステップ2:事業所の見学・体験

情報収集で気になった事業所が見つかったら、実際に足を運んでみましょう。前述の「選び方4つの鉄則」で解説した通り、このステップが最も重要です。

  • 何をする?:
    • 気になる事業所を2~3ヶ所ピックアップし、電話やウェブサイトから見学や体験利用を申し込みます。
    • 見学では、スタッフから説明を受け、施設内を見て回ります。体験利用では、実際のプログラムに参加し、事業所の1日の流れを肌で感じます。
    • この段階で、前述の「質問チェックリスト」を活用し、自分の疑問や不安を解消しておきましょう。

ステップ3:利用したい事業所を決定

複数の事業所を比較検討した結果、「ここなら安心して通えそう」「ここのプログラムなら自分の目標を達成できそう」と思える事業所を1つに絞ります。焦らず、自分の感覚を信じて決めることが大切です。

ステップ4:受給者証の申請

就労移行支援をはじめとする障害福祉サービスを利用するためには、「障害福祉サービス受給者証(以下、受給者証)」が必要です。この受給者証を市区町村に申請します。

  • どこで?: お住まいの市区町村の障害福祉窓口で行います。
  • 必要なものは?: 自治体によって多少異なりますが、一般的に以下のものが必要です。
    • 請書(窓口で入手)
    • 医師の診断書・意見書(障害者手帳がない場合)または、障害者手帳
    • マイナンバーが確認できる書類
    • 本人確認書類(運転免許証など)
    • 印鑑
  • ポイント: この申請手続きは、利用したい事業所が決まってから行います。申請方法が複雑で分からない場合は、決定した事業所のスタッフが申請に同行してくれるなど、手厚くサポートしてくれることがほとんどなので、遠慮なく相談しましょう。

ステップ5:サービス等利用計画案の作成

受給者証の申請と並行して、「サービス等利用計画案」を作成します。これは、あなたがどのような目標を持ち、そのためにどんなサービスをどのくらいの頻度で利用したいかを記した、支援の設計図です。

  • 誰が作成する?: 原則として、「指定特定相談支援事業所」に所属する「相談支援専門員」が、あなたへのヒアリングを通じて作成します。市区町村の窓口で相談支援事業所を紹介してもらえます。自分で計画を作成する「セルフプラン」も可能ですが、専門家と相談しながら作成する方がスムーズです。
  • 何をする?: 相談支援専門員との面談で、あなたの生活状況や希望、就労に関する目標などを具体的に話し合います。「週5日通えるようになりたい」「Excelのスキルを身につけて事務職に就きたい」といった想いを伝え、計画案に落とし込んでもらいます。

ステップ6:受給者証の交付と利用契約

すべての手続きが完了すると、いよいよ利用開始です。

  • 流れ: 申請書類とサービス等利用計画案を基に、自治体による利用意向のヒアリングや認定調査が行われます。その後、支給が決定されると、申請からおよそ1ヶ月ほどで受給者証が自宅に郵送されます。
  • 最終手続き: 交付された受給者証を持って、利用を決めた事業所に行き、正式な利用契約を結びます。契約後、事業所のサービス管理責任者が、あなたのためのより詳細な「個別支援計画」を作成し、いよいよ訓練のスタートです。

よくある質問 Q&A

ここでは、就労移行支援の利用を検討している方からよく寄せられる質問について、簡潔にお答えします。

Q1. 障害者手帳がなくても本当に利用できますか?

A1. はい、利用できます。 障害者手帳は必須ではありません。その場合、主治医に「就労移行支援を利用したい」と相談し、診断書や意見書を発行してもらう必要があります。この書類が、障害福祉サービスを利用するために必要な「受給者証」を市区町村に申請する際に、障害があることを証明する公的な書類として認められます。実際に、手帳をお持ちでない多くの方がこの方法で利用を開始しています。

Q2. 利用期間中はアルバイトできますか?収入はありませんか?

A2. 原則として、利用期間中のアルバイトは認められていません。 就労移行支援は「一般企業等での就労が困難な方」を対象とする福祉サービスであるため、アルバイトで就労が可能と判断されると、支援の対象外となる可能性があるためです。また、訓練は就職に向けた準備活動と位置づけられているため、給料や工賃も原則として支給されません。ただし、一部の事業所では訓練の一環として行う生産活動に対して、少額の工賃が支払われる場合があります。生活費に不安がある場合は、障害年金や生活福祉資金貸付制度などの公的支援の活用を検討し、事前に自治体の窓口や事業所の支援員に相談することが重要です。

Q3. 就労移行支援とハローワーク(障害者窓口)や転職エージェントとの違いは?

A3. サポートの「目的」と「範囲」が大きく異なります。

  • ハローワーク/転職エージェント: 主な目的は「求人紹介とマッチング」です。すでに働く準備が整っており、すぐにでも就職活動を始められる状態の方(就労準備性が高い方)に向いています。選考対策(書類添削や面接練習)はありますが、生活リズムの安定やスキルトレーニング、就職後の長期的な定着支援といった機能は限定的です。
  • 就労移行支援: 主な目的は「働くための準備と訓練、そして職場定着」です。働く自信がない、生活リズムが不安定、必要なスキルが不足している、といった状態から、就職して安定して働き続けるところまでをトータルでサポートします。求人紹介も行いますが、それは包括的な支援の一部に過ぎません。

どちらが良いというわけではなく、ご自身の現在の状況に合わせて使い分けることが大切です。「まだ働く自信がない」という方は就労移行支援から、「スキルも体力も十分で、すぐにでも働きたい」という方は転職エージェント、と考えるとよいでしょう。

まとめ:勇気を出して、まずは「相談」から始めよう

本記事では、精神障害や発達障害のある方が、就労移行支援という制度を活用して自分らしい働き方を見つけ、実現するための具体的なステップと重要な考え方を、多角的に解説してきました。

この記事の重要なポイント
  • 就労移行支援は、単に就職先を見つける場所ではなく、自分を深く理解し、働くためのスキルと自信を身につけ、長く安定して働き続けるための「伴走者」です。生活リズムの構築から自己分析、スキルアップ、就職活動、そして就職後の定着まで、一貫したサポートが受けられます。
  • 事業所選びで最も重要なのは、「実績(特に定着率)」「プログラムの専門性」「支援員や環境との相性」を自分の目で確かめ、必ず複数の選択肢を比較検討することです。ウェブサイトの情報だけでなく、見学や体験利用を通じて「自分に合うか」を肌で感じることが成功の鍵です。
  • 約9割の方が無料で利用しており、障害者手帳がなくても医師の診断書があれば利用できる、非常に開かれた制度です。経済的な心配や手続きの煩雑さを理由に、一人で諦める必要はありません。

「自分に合う仕事なんてないかもしれない」

「また失敗したらどうしよう」

――その不安な気持ちを、これ以上一人で抱え込む必要はありません。障害者雇用を取り巻く環境は、法整備と社会の理解の深まりによって、着実に前進しています。そして、あなたが一歩を踏み出すのを手助けしてくれる専門家たちが、すぐ近くにいます。

この記事を読んで、少しでも「話を聞いてみたい」と感じたなら、ぜひ行動に移してみてください。それは、お住まいの市区町村の障害福祉窓口に電話をしてみることかもしれません。あるいは、インターネットで検索して気になった就労移行支援事業所のウェブサイトから、見学の申し込みボタンをクリックすることかもしれません。

その小さな勇気が、あなたの「働きたいけど、不安」を「働ける自信」に変え、自分らしいキャリアを築くための、確かな第一歩となるはずです。

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