コラム 2026年1月5日

「自分には強みがない」と感じるあなたへ。就労移行支援で見つける、あなただけの輝き

はじめに:なぜ「自分の強み」が就職活動で重要なのか?

就職活動の面接で必ずと言っていいほど聞かれる質問、「あなたの強みは何ですか?」。この問いに、胸を張って答えることができますか? 就労移行支援事業所には、「自分にはアピールできるような強みなんて何もない」と、自信を失って相談に来られる方が少なくありません。これまでの経験から、ご自身の苦手なことや失敗体験にばかり目が向いてしまうのは、決して珍しいことではないのです。

しかし、「強み」は就職活動を成功させ、自分らしく働き続けるための羅針盤です。企業はあなたの「強み」を通して、入社後にどのように活躍し、貢献してくれるかをイメージします。そして何より、あなた自身が自分の強みを理解することで、自己肯定感が高まり、前向きな気持ちで就職活動に臨むことができるようになります。

この記事では、私たち就労移行支援事業所が日々実践している「強み」発見のノウハウを余すところなくお伝えします。「自分には強みがない」という思い込みから抜け出し、あなただけの輝きを見つけるための具体的な方法を、一緒に学んでいきましょう。

視点の転換:「できないこと」から「できること」へ

「強みが見つからない」と感じる方の多くは、無意識のうちに自分の「できないこと」や「短所」に焦点を当ててしまっています。しかし、視点を少し変えるだけで、その「短所」が輝く「長所」に変わることがあります。ここでは、そのための重要な2つの考え方をご紹介します。

「ストレングスモデル」という考え方

従来の支援では、本人の抱える課題や障害(=できないこと)を分析し、それをどう克服するかに重きが置かれがちでした。これを「問題解決モデル」と呼びます。しかし、このアプローチは時に本人の自信や意欲を削いでしまうことがあります。

それに対し、私たち福祉の現場で近年重視されているのが「ストレングスモデル」です。これは、課題や病理ではなく、その人が本来持っている力、得意なこと、乗り越えてきた経験、活用できる資源(=強み)に焦点を当てる支援アプローチです。どんな人にも必ず強みがあるという前提に立ち、それを見つけ出し、伸ばすことで、本人の自己肯定感や主体性を引き出し、結果的に課題解決や生活の質の向上につなげます。

ストレングスモデルの原則は、「焦点は病理でなく個人の強みである」ことです。問題よりも人の持つ力に注目し、そこを起点に支援を考えていくことで、利用者本人の自信や意欲を高め、エンパワメント(力を引き出すこと)につながります。

「できないこと」を補うのではなく、「できること」を伸ばす。この視点の転換が、強みを見つけるための第一歩です。

魔法の言葉「リフレーミング」

ストレングスモデルを実践する上で非常に強力なツールとなるのが「リフレーミング」です。リフレーミングとは、物事や状況を異なる枠組み(フレーム)から捉え直すことで、新しい意味や価値を見出す心理的技法です。就労支援の現場では、ご自身が「短所」だと思っている特性を、ポジティブな「長所」として捉え直すために活用します。

例えば、以下のように言い換えることができます。

  • 「作業が遅い」 → 「丁寧で正確な仕事ができる」「粘り強い」
  • 「人との雑談が苦手」 → 「一人の作業に集中できる」「聞き役に徹することができる」
  • 「急な予定変更にパニックになる」 → 「計画性がある」「準備をしっかり行える」

このように、見方を変えるだけで、ネガティブな自己評価がポジティブな自己認識へと変わります。この「意味づけの変化」が、自信を回復し、自分らしい働き方を見つけるための大きな力となるのです。

【実践編】自分の強みを見つける4つのステップ

「視点を変える重要性はわかったけれど、具体的にどうすればいいの?」と感じる方も多いでしょう。ここからは、私たち就労移行支援事業所でも実践している、具体的な自己分析の4ステップをご紹介します。焦らず、一つひとつじっくり取り組んでみましょう。

ステップ1:苦手なこと・短所を正直に書き出す

意外に思うかもしれませんが、強みを見つける最初のステップは、自分の「苦手なこと」「短所」「弱み」だと感じていることを正直に書き出すことです。ここでは自分を評価したり責めたりする必要は一切ありません。「こんなことを書いてはダメだ」と判断せず、頭の中にあるネガティブな要素をすべて紙に吐き出すことに集中してください。

(例)

  • 人との雑談が苦手
  • 作業に時間がかかってしまう
  • 細かいミスが多い
  • つい考えすぎて行動できない
  • こだわりが強い

具体的であればあるほど、次のステップで扱いやすくなります。まずは思いつくままにリストアップしてみましょう。

ステップ2:リフレーミングで長所に言い換える

ステップ1で書き出したリストを見ながら、一つひとつの項目をリフレーミングし、長所に言い換えていきます。もし可能なら、複数の言い換えを考えてみると、より多角的に自分を捉えることができます。

苦手なこと・短所(自己評価) リフレーミングによる長所への言い換え
飽きっぽい、集中力がない 好奇心旺盛、切り替えが早い、色々なことに興味が持てる
頑固、融通が利かない 意志が強い、信念がある、ルールをきっちり守れる
マイペース、行動が遅い 丁寧で慎重、落ち着いている、周りに流されない
不安が強い、心配性 危機管理能力が高い、慎重さがある、準備を怠らない
人に流されやすい 協調性がある、素直、人の意見を受け入れられる

最初は難しく感じるかもしれませんが、「もし、この特性を持つ親しい友人にポジティブな言葉をかけるとしたら?」と考えてみると、言い換えのヒントが見つかりやすいかもしれません。

ステップ3:過去の成功体験と結びつける

リフレーミングした長所が、単なる言葉遊びで終わらないように、具体的な「過去の成功体験」や「人から褒められた経験」と結びつけましょう。これにより、あなたの強みに説得力と自信が生まれます。

例えば、「作業に時間がかかってしまう」を「丁寧で正確な仕事ができる」とリフレーミングしたとします。そこで、過去に「時間がかかったけれど、丁寧に仕上げたことで結果的に大きなミスを防げた経験」や「正確さを評価されて、重要なデータのチェック作業を任された経験」などがなかったか思い出してみるのです。ささいな出来事で構いません。「この強みは、確かに自分の一部だ」と実感できるエピソードを探すことが、このステップの目的です。

ステップ4:第三者からの客観的な意見をもらう

自分一人で自己分析を進めていると、どうしても思い込みや主観に偏ってしまうことがあります。そこで、信頼できる家族や友人、あるいは私たちのような就労移行支援事業所の支援員など、第三者から客観的な意見をもらうことが非常に有効です。

「私の良いところって、どんなところだと思う?」と率直に聞いてみましょう。自分では短所だと思っていたことを、他者は「あなたの素敵な個性だよ」と捉えているかもしれません。自分では当たり前すぎて気づかなかったような意外な強みを教えてもらえることもよくあります。客観的な視点を取り入れることで、自己分析の精度は格段に上がります。

就労移行支援の専門的アプローチ:「強み」を科学的に発見する

自己分析は強みを見つけるための重要な一歩ですが、時には専門家の視点や客観的なツールを活用することで、より深く、多角的に自分を理解することができます。就労移行支援事業所では、単なる精神論ではなく、専門的なアプローチを用いてあなたの「強み」の発見をサポートします。

多角的なアセスメント:あなたを深く知るプロセス

就労支援におけるアセスメントとは、単に「できる・できない」を判定するためのテストではありません。面談や作業観察、関係者からの聞き取りなどを通じて、あなたの就労に関する情報を多角的に把握し、支援計画を立てるためのプロセスです。厚生労働省のマニュアルでも、就労アセスメントは課題のみに着目するのではなく、利用者の将来的な成長力(伸びしろ)を評価することが重要だとされています。

私たちは、日々のコミュニケーションや訓練の様子から、あなたの興味・関心、得意な作業、人との関わり方、ストレスへの対処法などを丁寧に観察します。そして、それらの情報をもとに、「あなたの強みを活かせる仕事は何か」「能力を発揮しやすい環境はどんなところか」を一緒に考えていきます。

ディスカバリー:日常に隠された才能を発見する

近年、個別化された雇用を創出するアプローチとして「ディスカバリー(Discovery)」という手法が注目されています。これは、標準化されたテストではなく、本人の自宅や地域活動といった自然な環境での関わりや対話を通じて、その人の興味、スキル、貢献できることなどを発見していくプロセスです。評価されるという緊張感から解放され、リラックスした状態で自分について語ったり、活動したりする中で、本人も気づいていなかったような才能や職業的なテーマが見つかることがあります。

このアプローチは、「すべての人は働ける能力がある」という信念に基づいています。テストの点数ではなく、あなたの人生経験そのものから仕事の可能性を探る、非常にポジティブで個別性を尊重した手法です。

客観的ツールの活用:適性をデータで可視化する

主観的な自己分析や支援員の観察に加え、客観的なツールを用いることも有効です。例えば、GATB(厚生労働省編 一般職業適性検査)は、9つの能力(適性能)を測定し、どのような職業分野に関心や適性があるかを把握するためのツールです。これにより、自分では思いもよらなかった職業への適性が見つかることもあります。

就労移行支援事業所では、こうしたツールを活用し、得られた結果をあなたと一緒に読み解きながら、「なぜこの分野に適性があるのか」「この能力をどのように仕事に活かせるか」を具体的に検討していきます。データという客観的な根拠が、自分の強みに対する自信を後押ししてくれます。

見つけた強みを武器にする:就職活動での活かし方

自分の強みが見つかったら、次はその強みを就職活動の場で効果的にアピールする段階です。伝え方一つで、採用担当者に与える印象は大きく変わります。

エピソードで語る:STARメソッドの活用

単に「私の強みは継続力です」と伝えるだけでは、説得力に欠けます。その強みがどのように発揮されたのか、具体的なエピソードを交えて語ることが重要です。その際に役立つのが「STARメソッド」というフレームワークです。

  1. Situation(状況):どのような状況でしたか?
  2. Task(課題):どのような課題や目標がありましたか?
  3. Action(行動):あなたは自分の強みを活かして、具体的にどう行動しましたか?
  4. Result(結果):その行動によって、どのような良い結果が生まれましたか?

例えば、「丁寧で慎重」という強みを伝える場合、「前職でデータ入力の業務を担当していました(S)。入力ミスを減らすという課題がありました(T)。私は持ち前の慎重さを活かし、ダブルチェックの仕組みを自主的に導入し、入力後には必ず見直しを行いました(A)。その結果、チーム全体の入力ミスを前月比で30%削減することに貢献できました(R)」のように、具体的な数字や事実を交えて話すと、より説得力が増します。

「必要な配慮」とセットで前向きに伝える

障害特性を強みとして伝える際には、その強みを最大限に活かすために「必要な配慮」をセットで伝えることも非常に重要です。これは、できないことへの言い訳ではなく、自分の能力を安定して発揮し、企業に貢献するための「前向きな提案」です。

例えば、「高い集中力で一つのことに没頭できる」という強みを伝える際に、「ただし、その集中力を安定して発揮するため、マルチタスクを避け、一つの作業に集中できる静かな環境をご配慮いただけると、より貢献できると考えております」といった形で伝えます。

このように伝えることで、企業側はあなたが働く姿を具体的にイメージでき、合理的配慮の提供もしやすくなります。自分の特性を深く理解し、それをマネジメントする力があるというアピールにも繋がります。厚生労働省が推進するなどを活用し、事前に自分の特性や希望する配慮を整理しておくことも有効です。

成功事例:強みを見つけ、新しい一歩を踏み出した人々

就労移行支援を通じて自分の強みを再発見し、新しいキャリアを歩み始めた方はたくさんいます。ここでは、いくつかの事例をご紹介します。

Aさん(40代男性)のケース:
長年のブランクがあり、「人の役に立ちたい」という思いはあっても、自分に何ができるかわからず自信を失っていました。就労移行支援で自己分析を重ねる中で、「人の話を丁寧に聞ける」という強みを発見し、社会福祉士という目標を設定。キャリアプランに基づき学習を続け、見事資格を取得し、社会福祉士として就職。「自分が誰かの力になれる」という目標を実現しました。

Sさん(発達障害)のケース:
料理人として働いていましたが、マルチタスクが苦手で退職。就労移行支援に通いながら自分の強みを見つけることにしました。スタッフの指導のもとPCスキルを学ぶうちに、「一つのことに集中して取り組める」「手順通りに正確に作業できる」という強みを発見。自信を取り戻し、事務職として就職を果たしました。

これらの事例のように、就労移行支援は単に仕事を見つける場所ではなく、自分自身の可能性を再発見し、人生の目標に向かって歩み出すための「伴走者」となるのです。

まとめ:あなただけの「強み」を見つけ、未来へ踏み出そう

「自分には強みがない」という思いは、多くの場合、自分の短所や苦手なことに目が向きすぎていることから生じます。しかし、視点を変える「リフレーミング」や、自分の持つ力に着目する「ストレングスモデル」という考え方を取り入れることで、誰もが自分だけの強みを見つけることができます。

この記事で紹介した4つのステップを実践し、過去の経験を振り返り、周りの人の声に耳を傾けてみてください。きっと、あなたの中に眠っている「輝き」の種が見つかるはずです。

もし一人で見つけるのが難しいと感じたら、ぜひ私たち就労移行支援事業所を頼ってください。専門的なアセスメントや客観的なツール、そして何より、あなたの可能性を信じる支援員が、強みの発見から就職、そして職場定着まで、あなたと伴走します。自分を信じて、新しい一歩を踏み出してみませんか。

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