コラム 2025年12月2日

仕事が怖い、不安で動けない…そんなあなたへ。就労移行支援で「自分らしい働き方」を見つける方法

不安と向き合い、自分らしい働き方を見つけるために

「また面接で失敗したらどうしよう」「職場の人間関係に馴染めるだろうか」「そもそも、自分にできる仕事なんてあるのだろうか」——。

精神障害や発達障害の特性を抱えながら社会に出ようとするとき、このような強い不安や恐怖に苛まれ、一歩を踏み出せなくなってしまうことは決して珍しくありません。「自分だけが社会から取り残されている」「働くことが怖い」と感じ、一人で悩みを抱え込んでいませんか?

その不安は、あなたの弱さや甘えが原因ではありません。障害の特性によって生じる困難さや、過去の辛い経験が、未来への一歩を重くしているのです。しかし、その不安と一人で戦う必要はありません。日本には、そうした人々が安心して社会参加を目指せるよう、国が定めた公的な福祉サービスが存在します。

この記事では、その中核となる「就労移行支援」について、深く、そして分かりやすく解説します。就労移行支援は、単に仕事を紹介するだけの場所ではありません。それは、あなたの不安の根本原因と向き合い、自分自身の「取扱説明書」を作り上げ、専門家のサポートのもとで安心して働き続けるためのスキルと自信を育む「リハビリテーションの場」です。

この記事を読み終える頃には、漠然とした不安が具体的な希望に変わり、自分に合った働き方を見つけるための確かな道筋が見えているはずです。さあ、一緒にその第一歩を踏み出しましょう。

就労移行支援とは?社会参加への第一歩を支える制度の基本

就労移行支援という言葉を初めて聞く方も多いかもしれません。このセクションでは、制度の全体像を「誰が、何を、どれくらい、いくらで」利用できるのか、という基本的な疑問に答える形で、要点を絞って解説します。

制度の定義と根拠法

就労移行支援は、「障害者総合支援法」という法律に基づいて提供される福祉サービスの一つです。この法律の目的は、障害のある人が地域社会でその人らしい生活を送れるよう、総合的に支援することにあります。

その中で就労移行支援は、一般企業への就職(一般就労)を目指す障害のある方々に対し、就職に必要な知識やスキルの向上、職場探しのサポート、そして就職後の定着支援までを包括的に行うサービスとして位置づけられています。全国には、厚生労働省が定める基準を満たした指定事業所が約2,800カ所(2025年1月時点)存在し、質の高い支援を提供しています。

対象者:誰が利用できるのか?

就労移行支援は、幅広い方々を対象としています。主な条件は以下の通りです。

  • 障害種別: 身体障害、知的障害、精神障害(うつ病、統合失調症、不安障害など)、発達障害(ASD、ADHDなど)、そして国が定める指定難病(376疾病)のある方が対象です。
  • 年齢: 原則として18歳以上65歳未満の方が対象です。ただし、条件によっては65歳以上でも利用できる場合があります。
  • 就労意欲: 一般企業への就職を希望しており、訓練やサポートを通じて就労が可能と見込まれることが前提となります。現在、失業中の方が主な対象ですが、休職中の方も一定の条件を満たせば利用可能です。
  • 手帳の有無: 障害者手帳を持っていなくても利用できる場合があります。医師の診断書や意見書、あるいは定期的な通院の事実があれば、自治体の判断によって利用が認められるケースが多くあります。実際に、LITALICOワークスのような大手事業所では、手帳を持っていない方の利用実績も豊富です。

「自分は対象になるのだろうか?」と迷ったら、まずは市区町村の障害福祉窓口や、気になる就労移行支援事業所に直接問い合わせてみることが最も確実です。

利用期間と料金:経済的な不安なく利用できる仕組み

支援を受けるにあたり、期間と費用は最も気になる点の一つでしょう。就労移行支援は、経済的な負担を最小限に抑えながら、じっくりと準備に取り組める制度設計になっています。

利用期間

利用できる期間は、原則として最長2年間(24ヶ月)です。この期間内に、職業訓練、自己理解、就職活動、そして就職後の定着支援までを行います。もし特別な事情があり、支援の継続が必要だと市町村が判断した場合には、最大1年間(12ヶ月)の延長が認められることもあります。

利用料金

利用料金は、前年の世帯収入によって月ごとの自己負担上限額が定められています。ここで言う「世帯」とは、本人と配偶者の収入のみを指し、親や同居家族の収入は含まれません。そして、最も重要な点は、利用者の約9割が自己負担0円でサービスを利用しているという事実です。

以下のグラフは、世帯収入に応じた自己負担上限月額の目安です。生活保護受給世帯や住民税非課税世帯(前年の年収がおおよそ300万円以下)の場合、自己負担は発生しません。

この仕組みにより、経済的な心配をすることなく、自分のペースで就職に向けた準備に専念することが可能です。

就労継続支援との違い

障害のある方の「働く」を支えるサービスには、「就労移行支援」の他に「就労継続支援」というものがあります。この二つは目的が異なるため、違いを理解しておくことが重要です。

サービス種別 目的 対象者 利用期間 雇用契約
就労移行支援 一般企業への就職と、その後の職場定着 一般企業で働くことを希望し、それが可能と見込まれる方 原則2年 なし(訓練として活動)
就労継続支援A型 支援を受けながら、雇用契約を結んで働く場の提供 一般企業での就労が困難だが、雇用契約に基づき継続して就労が可能な方 定めなし あり(雇用型)
就労継続支援B型 雇用契約を結ばずに、比較的自由なペースで働く場の提供 一般企業での就労やA型での就労が困難な方 定めなし なし(非雇用型)

簡単に言えば、「就職するための訓練学校」が就労移行支援であり、「支援付きの職場」が就労継続支援です。この記事で焦点を当てるのは、一般企業への就職を目指す「就労移行支援」です。

【第2章のキーポイント】
  • 就労移行支援は「障害者総合支援法」に基づく国の福祉サービス。
  • 精神・発達障害など幅広い方が対象で、手帳がなくても利用できる可能性がある
  • 利用期間は原則2年。利用者の約9割は自己負担0円で利用している。
  • 一般企業への就職を目指す「訓練の場」であり、働く場を提供する「就労継続支援」とは目的が異なる。

【本編】なぜ不安になりやすい?精神・発達障害と就労への壁、そして就労移行支援の役割

この章では、本記事の核心に迫ります。なぜ精神障害や発達障害のある人々は、就労に対して強い不安を感じやすいのでしょうか。その心理的・神経学的な背景を深く掘り下げ、それに対して就労移行支援がどのようにアプローチし、不安を具体的な自信へと変えていくのかを解き明かします。

不安の背景にある特性と心理的メカニズム

「不安」と一言で言っても、その源泉は一人ひとり異なります。ここでは、精神障害と発達障害、それぞれの特性がどのように就労への不安に結びつくのかを分析します。

精神障害(うつ病、不安障害など)と不安の関係

精神疾患、特にうつ病や不安障害を抱える方にとって、不安は病気の中核的な症状そのものであることが多いです。

  • 症状としての不安と身体的苦痛: 全般性不安障害(GAD)などでは、特定の対象がないにもかかわらず、仕事、健康、家族など、日常生活の様々なことに対して過剰な心配が慢性的に続く「浮動性不安」が特徴です。この絶え間ない不安は、頭痛、めまい、動悸、胃痛、下痢、不眠といった多様な身体症状を引き起こします。「働く」という行為が、これらの心身の不調を悪化させるのではないかという恐怖は、就労への大きな障壁となります。
  • 認知の特性と否定的思考: 抑うつ状態では、物事を悲観的に捉え、自分を過小評価する「認知の歪み」が生じやすくなります。「どうせ自分は何をやってもダメだ」「自分には何の価値もない」といった自己否定的な考えが頭を支配し、新しいことに挑戦する意欲を根こそぎ奪ってしまいます。これは、就職活動における「応募する勇気が出ない」「面接が怖い」といった行動の停滞に直結します。
  • 不適応的な思考パターン(認知的感情制御): 近年の心理学研究では、ネガティブな出来事に遭遇した際に、感情をどのようにコントロールするかが精神的健康に大きく影響することがわかっています。あるメタ分析研究では、特定の思考パターンが不安や抑うつを増幅させることが示されました。
    • 不適応的方略(不安を増やす思考):「自責(自分のせいだと責める)」「反芻(嫌なことを繰り返し考える)」「破局的思考(最悪の事態を想像する)」といった思考パターンは、不安や抑うつと強い正の相関があります。
    • 適応的方略(不安を減らす思考):一方で、「肯定的再評価(出来事から成長の糧を見出す)」「計画への再焦点化(どう対処するかを考える)」といった思考は、不安や抑うつと負の相関があります。

    精神障害を抱える方は、無意識のうちに不適応的な思考パターンに陥りやすく、それが不安を雪だるま式に大きくしてしまうのです。

発達障害(ASD、ADHDなど)と不安の関係

発達障害のある方の場合、脳機能の特性に起因する困難さが、職場環境とのミスマッチを生み、それが不安の大きな原因となります。

  • 感覚・知覚の問題:オフィスの蛍光灯が眩しすぎる、キーボードの打鍵音が気になって集中できない、隣の人の香水の匂いで気分が悪くなる、といった「感覚過敏」は、多くの人が気にしない環境刺激を耐え難い苦痛に変えます。逆に、疲労や体調の変化に気づきにくい「感覚鈍麻」も存在します。これらの感覚特性は、出勤するだけでエネルギーを消耗し、職場を「危険な場所」として認識させてしまうことがあります。
  • コミュニケーションの壁: 「空気を読む」「相手の意図を察する」といった暗黙のコミュニケーションや、比喩・冗談の理解が難しい場合があります。また、思ったことをストレートに伝えてしまい、相手を傷つける意図がないのに誤解を招くこともあります。こうしたコミュニケーションのすれ違いが重なると、職場での孤立感や「自分は周りと違う」という疎外感につながり、対人関係への強い不安を生み出します。
  • 実行機能の課題: ADHDの特性として知られる実行機能の課題は、仕事の遂行に直接影響します。例えば、「複数のタスクを同時に管理する(マルチタスク)」「仕事の段取りを立て、時間内に終える」「ケアレスミスを防ぐ」「集中力を持続させる」といったことが苦手な場合があります。これらの困難は、「仕事ができない」という評価に繋がりやすく、自己効力感の低下や、ミスをすることへの強い恐怖心(失敗恐怖)を植え付けます。
  • 二次障害としての不安: 上記の困難さが原因で、幼少期から失敗体験や周囲からの叱責を繰り返し経験することが少なくありません。その結果、自己肯定感が著しく低下し、二次的な問題として不安障害、うつ病、社会恐怖などを発症するリスクが高まります。この場合、不安は発達障害の特性そのものというより、後天的に学習された「条件反射」のようなものと言えます。

不安を乗り越えるための就労移行支援の具体的アプローチ

では、これらの根深い不安に対し、就労移行支援はどのように働きかけるのでしょうか。それは、単なる精神論や根性論ではなく、科学的根拠に基づいた多角的なアプローチです。

① 安全な環境で「できる」を積み重ねる:自己肯定感の回復

長年の失敗体験や自己否定によって傷ついた自己肯定感を回復させることが、すべての土台となります。就労移行支援事業所は、失敗が許される「心理的安全性」が確保された環境です。ここでは、いきなり難しい課題に挑戦するのではなく、簡単なデータ入力や軽作業など、確実に「できた!」と感じられる小さな成功体験からスタートします。

この「スモールステップ」の積み重ねが、「自分にもできることがある」という感覚(自己効力感)を少しずつ育んでいきます。支援員は結果だけでなくプロセスを評価し、利用者の努力を承認することで、失われた自信を取り戻す手助けをします。この環境こそが、不安に凍り付いた心と体を再び動かすための「安全基地」となるのです。

② 「自己理解」を深める:不安の源泉と対処法を知る

就労移行支援における最も重要なプロセスの一つが、「障害特性の自己理解」です。これは、いわば自分自身の「取扱説明書」を作成する作業です。

  • 客観的な自己分析:専門の支援員との定期的な面談や、各種プログラム、職業適性検査などを通じて、自分が「何が得意で、何が苦手か」「どのような環境なら能力を発揮できるか」「どんな時にストレスを感じ、不安になるのか」を客観的に分析・整理していきます。
  • セルフケアの習得:不安やストレスを感じた時に、どうすれば自分の状態を安定させられるか(セルフケア)を学びます。例えば、「感覚過敏があるから、疲れたら静かな休憩室で5分間アイマスクをする」「パニックになりそうな時は、この呼吸法を試す」といった具体的な対処法を、支援員と一緒に見つけていきます。
  • ナビゲーションブックの作成:これらの自己分析の結果を「ナビゲーションブック」や「配慮事項シート」といった形にまとめる事業所もあります。これは、就職活動の際に、企業側へ自分の特性や必要な配慮を的確に、かつ前向きに伝えるための強力なツールとなります。

不安の多くは「未知」であることから生まれます。自分自身を深く知ることで、漠然とした不安は「対処可能な課題」へと姿を変えるのです。

③ スキル習得と成功体験:自信をつけるための職業訓練

「自分には何のスキルもない」という思い込みは、就労への不安を増大させます。就労移行支援では、実践的な職業訓練を通じて、この不安を「自分にはこれができる」という具体的な自信に変えていきます。

  • 基礎スキルの習得:ビジネスマナー、電話応対、報告・連絡・相談(報連相)といった社会人としての基礎から、WordやExcelなどのPCスキルまで、幅広いプログラムが用意されています。
  • 専門スキルの習得:近年では、プログラミング、Webデザイン、データ分析といったIT関連の専門スキルを学べる事業所も増えています。自分の興味や適性に合ったスキルを身につけることは、キャリアの選択肢を広げ、大きな自信に繋がります。
  • 職場実習(インターンシップ):支援事業所と提携している企業で、実際の業務を体験する「職場実習」は非常に重要です。実際の職場の雰囲気や業務内容を体験することで、「自分はこの環境で働けそうか」「この仕事は自分に向いているか」を事前に確認できます。これにより、就職後のミスマッチを防ぎ、不安を大幅に軽減することができます。

④ 心理的サポートと認知行動療法的アプローチ

不安になりやすい思考の癖そのものに働きかけるアプローチも、多くの事業所で取り入れられています。

  • 認知行動療法(CBT)的アプローチ:先に述べた「認知の歪み」に本人が気づき、より現実的で柔軟な考え方ができるようにサポートします。例えば、メタ認知トレーニング(MCT)のようなプログラムを通じて、「最悪の事態ばかり考えてしまう」という思考の癖を客観視し、「他の可能性もあるかもしれない」と多角的に物事を捉える練習をします。
  • レジリエンス(逆境回復力)の向上:ストレスや困難な状況に直面した際に、しなやかに立ち直る力、すなわち「レジリエンス」を高めるためのプログラムも実施されます。ある研究では、就労移行支援の心理プログラムが、利用者のレジリエンスを有意に向上させることが示されています。これにより、就職後に避けられないストレス場面に遭遇しても、心の健康を保ちやすくなります。
  • 感情コントロール訓練:自分の感情の波をモニタリングし、怒りや不安が高まった時のクールダウンの方法を学ぶなど、感情と上手に付き合うためのスキルを習得します。

⑤ 専門スタッフとの連携:一人で抱え込まない体制づくり

就労移行支援の最大の強みは、一人で抱え込まずに済むサポート体制があることです。事業所には、就労支援員、生活支援員、職業指導員といった様々な専門家がチームを組んで利用者を支えます。

  • 定期的な面談と相談:定期的な面談を通じて、訓練の進捗だけでなく、体調の変化や生活上の悩み、人間関係のストレスなどを気軽に相談できます。「いつでも相談できる相手がいる」という安心感は、精神的な安定に大きく寄与します。
  • 企業との「仲介役」:就職活動の場面では、支援員が企業との「橋渡し」役を担います。面接に同行したり、本人に代わって必要な配慮(合理的配慮)を企業側に説明したりすることで、本人が安心して選考に臨めるようサポートします。これは、コミュニケーションに不安がある方にとって特に心強い支援です。
  • 多機関連携:ハローワーク、障害者職業センター、医療機関など、他の専門機関とも密に連携し、利用者にとって最適な支援ネットワークを構築します。
【第3章のキーポイント】
  • 精神・発達障害による不安は、症状、認知の歪み、感覚特性、コミュニケーションの壁など、複合的な要因から生じる。
  • 就労移行支援は、心理的安全性の高い環境で「小さな成功体験」を積み重ね、自己肯定感を回復させる。
  • 「自己理解」を深め、自分の「取扱説明書」を作ることで、漠然とした不安を「対処可能な課題」に変える。
  • 職業訓練や職場実習を通じて具体的なスキルと自信を育む。
  • 認知行動療法的なアプローチで不安になりやすい思考パターンを修正し、レジリエンスを高める。
  • 専門スタッフがチームでサポートし、企業との仲介役も担うことで、一人で抱え込まない体制を築く。

就労移行支援を利用する具体的なステップと事業所の選び方

就労移行支援の価値を理解したところで、次はいよいよ実際に行動に移すための具体的な方法です。ここでは、利用開始までの手順と、数ある事業所の中から自分に合った「最高のパートナー」を見つけるための視点を解説します。

利用までの流れ(ステップ・バイ・ステップ)

利用開始までのプロセスは、概ね以下の4つのステップで進みます。複雑に感じるかもしれませんが、一つひとつは決して難しいものではありません。

  1. 【ステップ1】相談するまずは専門機関に相談することから始めましょう。「どこに相談すればいいかわからない」という方は、以下のいずれかにアクセスしてみてください。
    • 市区町村の障害福祉窓口:お住まいの役所にある窓口です。地域にある事業所の情報提供や、制度全般に関する説明をしてくれます。
    • 障害者就業・生活支援センター:仕事(就業)と暮らし(生活)の両面から一体的なサポートを行う専門機関です。より実践的なアドバイスが期待できます。
    • 相談支援事業所:福祉サービスの利用計画(後述)の作成などを手伝ってくれる専門家です。
    • かかりつけの医師やカウンセラー:通院している場合は、主治医やカウンセラーに相談するのも良い方法です。医療的な視点からアドバイスをもらえたり、地域の支援機関を紹介してくれたりします。
  2. 【ステップ2】事業所を探し、見学・体験する相談先で情報を得たり、インターネットで「就労移行支援 〇〇市(お住まいの地域名)」などと検索したりして、通えそうな事業所をいくつかリストアップします。そして、必ず複数の事業所の見学や体験利用をしましょう。ウェブサイトの情報だけではわからない、事業所の雰囲気やスタッフとの相性を肌で感じることが非常に重要です。
  3. 【ステップ3】利用を申請する利用したい事業所が決まったら、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で「障害福祉サービス受給者証」の交付を申請します。この際、「サービス等利用計画案」という、今後どのような支援を受けたいかを記した計画書を提出する必要がありますが、これは相談支援事業所の専門家が作成を手伝ってくれるので心配いりません。
  4. 【ステップ4】契約し、利用を開始する自治体による審査を経て、自宅に「受給者証」が届いたら、いよいよ利用したい事業所と正式に契約を結び、支援がスタートします。

不安になりやすい人が重視すべき「事業所の選び方」5つのポイント

全国に3,000近くある事業所の中から、自分に最適な場所を選ぶのは簡単なことではありません。特に不安を感じやすい方は、以下の5つのポイントを重視して選ぶことをお勧めします。

1. プログラム内容:自分の興味や目標に合っているか

事業所によってプログラムには特色があります。基本的なPCスキルやビジネスマナーは多くの事業所で学べますが、それ以上に「自分が何を学びたいか」を明確にすることが大切です。例えば、IT業界を目指すならプログラミングやWebデザインに特化した事業所(例:atGPジョブトレIT・Web、Neuro Dive)、事務職を目指すならMOS資格対策に力を入れている事業所など、自分の目標とプログラム内容が合致しているかを確認しましょう。

2. 事業所の雰囲気と環境:自分が「安心できる場所」か

見学時には、プログラム内容だけでなく、事業所全体の「空気感」を五感で感じ取ってください。

  • 他の利用者はどのような表情で過ごしていますか?
  • スタッフは利用者に対してどのように接していますか?
  • 騒がしすぎず、静かすぎず、自分にとって心地よい環境ですか?
  • 感覚過敏に配慮した、パーテーションで区切られた個別スペースや、静かに休める休憩室はありますか?

これから約2年間通うかもしれない場所です。「ここなら安心して通えそう」と直感的に思えるかどうかは、非常に重要な判断基準です。

3. スタッフの専門性と相性:信頼して相談できるか

支援の質は、スタッフの専門性と人間性に大きく左右されます。特に、精神・発達障害の特性について深い知識と理解を持っているスタッフがいるかどうかは必ず確認しましょう。見学時の面談で、自分の悩みや不安を率直に話してみて、その反応を確かめてください。「この人になら何でも話せそうだ」と思えるスタッフとの出会いが、あなたの就労への道のりを大きく左右します。

4. 就職実績と「定着率」:出口の質はどうか

就職者の数(就職率)も大切ですが、それ以上に重視すべきは、就職後にどれくらいの人が働き続けているかを示す「職場定着率」です。高い定着率は、その事業所が利用者の特性と企業のマッチングを丁寧に行い、就職後も手厚いサポートを提供している証拠です。各事業所はウェブサイトなどで実績を公開していることが多いので、必ずチェックしましょう。

5. 就職後の定着支援:卒業後も頼れるか

就職はゴールではなく、新たなスタートです。新しい環境での悩みや困難はつきものです。就職後も、定期的な面談(対面またはオンライン)、職場訪問、企業担当者との連携など、継続的なサポート(就労定着支援)を受けられるかどうかは極めて重要です。多くの事業所では就職後6ヶ月間の定着支援が義務付けられていますが、中にはそれ以上の長期間、手厚くサポートしてくれる事業所もあります。就職後の不安に寄り添ってくれる体制があるかどうかを、契約前にしっかりと確認しましょう。

まとめ:不安は「乗り越える」から「付き合う」へ。あなたらしい一歩を応援します

この記事では、精神・発達障害を抱える方が就労に際してなぜ強い不安を感じやすいのか、その背景にあるメカニズムを解き明かし、その不安と向き合うための強力なパートナーとなりうる「就労移行支援」の具体的な内容と活用法を解説してきました。

重要なメッセージを、もう一度確認しましょう。

精神・発達障害の特性から仕事に不安を感じるのは、決して特別なことでも、あなたの弱さのせいでもありません。それは、脳の特性や過去の経験からくる、ごく自然な反応です。

そして、その不安と向き合うために「就労移行支援」という公的な制度があります。ここは、単に就職先を探す場所ではなく、心理的に安全な環境で自己理解を深め、スキルと自信を育み、自分に合った働き方を見つけるための「社会参加へのリハビリテーションの場」なのです。

この記事を通じて、もしかしたらあなたの心に一つの変化が生まれているかもしれません。それは、不安を無理に「なくそう」「乗り越えよう」とするのではなく、自分の大切な個性・特性として理解し、うまく「付き合っていく」方法を学ぶ、という視点への転換です。

就労移行支援は、その「付き合い方」を学ぶための最高の教室です。そこには、あなたの特性を理解し、可能性を信じてくれる専門家がいます。同じ悩みを分かち合い、共に成長できる仲間がいます。あなたは、決して一人ではありません。

未来への扉は、重く閉ざされているように見えるかもしれません。しかし、その扉には鍵がかかっているわけではないのです。必要なのは、ほんの少しの勇気を出して、ドアノブに手を伸ばしてみること。

まずは、お住まいの市区町村の窓口に電話を一本かけてみる。あるいは、少しでも気になった事業所のウェブサイトを覗いて、見学の申し込みボタンをクリックしてみる。その小さな、しかし確かな一歩が、あなたらしい働き方、そしてあなたらしい人生へと繋がる道のりの始まりです。

私たちは、あなたのその一歩を心から応援しています。

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