コラム 2025年11月29日

「言葉に詰まる」悩みを自信に。精神・発達障害を持つあなたのための就労移行支援活用ガイド

あなただけの悩みではありません。「言葉に詰まる」不安を乗り越える第一歩

「面接で志望動機を話しているうちに、頭が真っ白になってしまった」
「上司への進捗報告で、言いたいことがまとまらず、しどろもどろになってしまう」
「同僚たちの雑談の輪に入りたいのに、気の利いた一言が思い浮かばず、いつも孤立感を感じる」

仕事の様々な場面で訪れる、「言葉に詰まる」という経験。それは、焦りや自己嫌悪、そして「次もまた失敗するのではないか」という強い不安を伴う、非常につらい体験です。多くの人はこれを、単なる「話し下手」や「極度の緊張しい」といった性格の問題だと考え、一人で抱え込み、自分を責めてしまいがちです。

しかし、もしあなたが精神障害や発達障害の診断を受けている、あるいはその傾向を自覚しているのなら、その「言葉の詰まり」は、あなたの性格だけの問題ではないかもしれません。それは、脳の機能的な特性や、障害に伴う心理的な要因が複雑に絡み合って生じている、根深い課題である可能性が高いのです。

大切なのは、「これは自分だけの問題ではない」と知ることです。あなたと同じように、コミュニケーションの壁に悩み、苦しんでいる人は数多く存在します。そして、その壁を乗り越えるための具体的な方法論と、専門的なサポート体制が社会には用意されています。

この記事は、まさにその「言葉に詰まる」という深刻な悩みを抱えるあなたのために書かれました。本稿では、まず精神・発達障害の特性がどのように「言葉の詰まり」に影響するのか、そのメカニズムを深掘りします。そして、その具体的な解決策として、障害者総合支援法に基づく福祉サービスである「就労移行支援」が、あなたの悩みにどのようにアプローチし、解決へと導いてくれるのかを、体系的かつ徹底的に解説します。

この記事を読み終える頃には、あなたは漠然とした不安から解放され、「言葉に詰まる」という課題に対して、具体的な対策を講じ、自信を持って就職活動や仕事に臨むための明確な道筋を手にしているはずです。これは、単なる精神論や気合の問題ではありません。専門的な知識とトレーニングに基づいた、再現性のある「働くためのリハビリテーション」への招待状です。さあ、その第一歩を、ここから踏み出しましょう。

なぜ「言葉に詰まる」のか?精神・発達障害の特性から原因を理解する

概要:特性と心理が絡み合う「言葉の詰まり」

職場で「言葉に詰まる」という現象は、決して単一の原因で起こるわけではありません。特に精神障害や発達障害の特性を持つ方の場合、それは脳の情報処理の仕方、思考のパターン、そして過去の経験からくる心理的なストレスが複雑に絡み合った結果として現れます。このメカニズムを理解することは、自分を責めるのではなく、客観的に課題を捉え、適切な対策を講じるための不可欠な第一歩となります。

例えば、頭の中には伝えたいことがあるのに、それを適切な単語や文章に変換する「言語化」のプロセスに時間がかかる場合があります。また、話す内容だけでなく、相手の表情、声のトーン、場の雰囲気といった非言語的な情報を同時に処理しようとして、脳がオーバーヒート(処理負荷過多)に陥ることもあります。さらに、「完璧に話さなければ」「失敗してはいけない」という強いプレッシャーが、かえって思考を停止させてしまう心理的な要因も大きく影響します。これらの要因が、障害特性によってどのように顕在化するのかを、次に詳しく見ていきましょう。

発達障害(ASD・ADHD)と「言葉の詰まり」

発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)の特性は、コミュニケーションにおける「言葉の詰まり」と深く関連しています。これらは対照的な特性に見えることもありますが、どちらも円滑な会話を妨げる要因となり得ます。

ASD(自閉スペクトラム症)の場合

ASDの特性を持つ方は、独自の認知スタイルや感覚の特性から、特有のコミュニケーションの壁に直面することがあります。

  • 思考の言語化の壁: 自分の内面で感じている複雑な感覚や、深く掘り下げた思考を、他者が理解できる一般的な言葉に変換するプロセスに困難を抱えることがあります。適切な言葉が見つからず、「ざわざわする」「もやもやする」といったオノマトペ(擬音語・擬態語)を多用して感覚を説明しようとする傾向が見られます。これは、具体的な言葉と内的な感覚を結びつけるのに時間がかかるためです。
  • 完璧主義と遂行機能の課題: 「間違ったことを言ってはいけない」「論理的で、完璧な説明をしなければならない」という強いプレッシャーを感じやすい傾向があります。この完璧主義が、話す前に頭の中で情報を過剰に整理・推敲させ、結果として言葉を発するタイミングを逃したり、思考がフリーズしてしまったりする原因となります。自分の視点から見た「事実」に固執し、柔軟な対応が難しくなることも関係しています。
  • 非言語情報の処理負荷: 会話中、相手の表情、声の抑揚、視線、身振り手振りといった非言語的な情報を読み取ろうと、脳のリソースを大量に消費します。場の空気を読むことや相手の気持ちを推測することが苦手なため、この処理に多大な努力を要し、本来話すべき内容を組み立てるための認知的な余力がなくなってしまい、言葉に詰まることがあります。
  • シングルフォーカス(過集中): 一つの物事に深く集中する特性(過集中)が、会話の場面では逆に作用することがあります。話す内容を考えることに集中すると、相手の反応を見たり、会話の流れを追ったりすることが疎かになります。逆に、相手の話を聞くことに集中すると、次に自分が何を話すかを考えることができなくなります。このように、複数のタスクを同時にこなすのが苦手なため、会話のキャッチボールが途切れがちになります。

ADHD(注意欠如・多動症)の場合

ADHDの特性を持つ方は、思考や注意のコントロールに関わる困難から、「言葉に詰まる」というよりも「話がまとまらない」形でコミュニケーションの課題が現れることが多くあります。

  • 思考の多動性: 頭の中で次から次へと考えやアイデアが連想ゲームのように浮かび上がります。この「思考の洪水」を整理し、一つの筋道だった話にまとめることが難しく、話している途中で話題が飛んだり、結論にたどり着く前に別の話に移ってしまったりします。結果として、自分でも「何を言いたかったんだっけ?」と混乱し、言葉に詰まることがあります。
  • 衝動性: 考えが完全に整理される前に、思いついたことを反射的に話し始めてしまう傾向があります。相手の話を遮って話し始めたり、結論からではなく思いついた順に話したりするため、話の構成が破綻しやすくなります。途中で論理的な矛盾に気づいたり、より良い表現を思いついたりして、言い淀んだり、最初から言い直そうとして詰まってしまうことがあります。
  • 不注意: 会話の最中に、周囲の物音や他の考え事に注意がそれてしまうことがあります。その結果、相手の質問の要点を聞き逃してしまったり、自分が話していた内容を忘れてしまったりして、会話が中断してしまうことがあります。「話を聞いているように見えても内容が頭に入っていない」状態になり、的確な応答ができずに言葉に詰まることも少なくありません。

精神障害(うつ病・不安障害など)と「言葉の詰まり」

精神障害、特に気分障害や不安障害は、脳の神経伝達物質のバランスに影響を与え、思考や感情のコントロールを困難にします。これが直接的に「言葉の詰まり」を引き起こすことがあります。

  • うつ病・適応障害: これらの状態では、「思考制止」と呼ばれる症状が現れることがあります。これは、頭の回転が著しく遅くなり、思考が前に進まない感覚です。集中力や記憶力も低下するため、適切な言葉を探し出すのに非常に時間がかかったり、簡単な単語すら思い出せなくなったりします。本人の意欲とは関係なく、脳がエネルギー切れを起こしている状態で、言葉を発すること自体が大きな負担となります。
  • 社交不安障害: 人前で話す、注目を浴びるといった特定の社会的状況に対して、他者から否定的に評価されることへの極度の恐怖を感じます。この恐怖が引き金となり、動悸、発汗、震えといった身体症状とともに、強い緊張状態に陥ります。この時、思考は「失敗したらどうしよう」「変に思われているに違いない」といった不安で占められ、話す内容を考える余裕が完全になくなります。結果として、声が出なくなったり、言葉が途切れ途切れになったりします。
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD): 過去のトラウマ体験を思い起こさせるような特定の状況、言葉、あるいは場所がトリガー(引き金)となることがあります。トリガーに遭遇すると、フラッシュバック(再体験)や解離(現実感の喪失)が起こり、思考が完全に停止してしまうことがあります。会話の文脈とは無関係に、突然話せなくなったり、その場の状況が認識できなくなったりするのは、このためです。

コラム:失語症との違い

本記事で扱う「言葉に詰まる」悩みと、医学的に診断される「失語症」は、その原因が根本的に異なります。失語症は、主に脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脳腫瘍、頭部外傷などによって、脳の言語中枢(ウェルニッケ野やブローカ野など)が物理的に損傷を受けることで生じる障害です。これにより、「話す」「聞く」「読む」「書く」といった言語機能そのものが損なわれます。例えば、言いたい言葉が別の言葉に置き換わってしまう「錯語」や、言葉を理解すること自体が困難になる症状が見られます。

一方、本記事で焦点を当てているのは、脳の器質的な損傷ではなく、発達特性や心理的要因に起因する「機能的」な言葉の詰まりです。言語機能そのものが失われているわけではなく、特定の状況や条件下で、思考や発話のプロセスがスムーズに働かなくなる状態を指します。この違いを理解することは、適切な支援やアプローチを選択する上で非常に重要です。

【本論】就労移行支援は「言葉に詰まる」悩みにどうアプローチするのか?

就労移行支援の役割:単なる就職斡旋ではない「働くためのリハビリテーション」

多くの人が「就労移行支援」と聞くと、単に求人を紹介してくれたり、面接の練習をしてくれたりする場所、といったイメージを持つかもしれません。しかし、その本質はもっと深く、包括的なものです。就労移行支援は、障害者総合支援法に基づき、障害のある方が一般企業で能力を発揮し、安定して働き続けることを目的とした「働くためのリハビリテーション」を提供する福祉サービスです。

特に「言葉に詰まる」といったコミュニケーションの課題に対して、就労移行支援は非常に有効なアプローチを取ります。それは、課題の表層的な解決(=話し方のテクニック)だけを目指すのではなく、その根本原因である自己理解の深化、障害特性との向き合い方、ストレス管理、そして実践的なスキル習得までを、構造化されたプログラムと専門的な支援員(スタッフ)との協働によって、段階的にサポートしていくからです。

利用者は原則2年間という期間の中で、事業所という「安全なリハーサルの場」を活用し、失敗を恐れずに様々な挑戦を重ねることができます。PCスキルやビジネスマナーといった職業準備性の向上はもちろんのこと、コミュニケーションの課題を克服し、「働き続ける力」そのものを育む場所。それが就労移行支援の真の役割なのです。

就労移行支援の概要
  • 目的:障害のある方が一般企業へ就職し、安定して働き続けることを目指す。
  • 対象者:原則18歳以上65歳未満で、就労意欲のある精神障害、発達障害、身体障害、知的障害、難病のある方など。障害者手帳がなくても医師の診断書などで利用できる場合がある。
  • 利用期間:原則24ヶ月(2年間)。自治体の判断により延長も可能。
  • 費用:前年度の世帯所得に応じて決まるが、約9割の利用者が自己負担額0円で利用している。
  • 法的根拠:障害者総合支援法に基づく福祉サービス。

ステップ1:自己理解と課題の言語化 ―「なぜ詰まるのか」を解き明かす

「言葉に詰まる」という課題を克服するための最初の、そして最も重要なステップは、自分自身を深く理解し、課題を客観的に捉えることです。就労移行支援では、専門の支援員との対話を通じて、このプロセスを徹底的にサポートします。

個別支援計画の作成:課題の解像度を上げる

利用を開始すると、まずサービス管理責任者や支援員との個別面談(アセスメント)が行われます。この面談を通じて、利用者一人ひとりの特性、能力、希望を踏まえた「個別支援計画」が作成されます。この計画は、いわば就職までのロードマップであり、3ヶ月ごとに見直され、進捗に合わせて更新されていきます。

「言葉に詰まる」という悩みに対しても、このアセスメントは非常に重要です。支援員は、単に「話すのが苦手」と捉えるのではなく、以下のような具体的な質問を通じて、課題の解像度を上げていきます。

  • いつ:朝礼のスピーチ、上司への報告、同僚との雑談など、具体的に「いつ」詰まることが多いですか?
  • どこで:大勢の前、1対1の場面、電話口など、「どこで」その状況は起こりますか?
  • 誰と:目上の人、初対面の人、特定の同僚など、「誰と」話すときに特に困難を感じますか?
  • 何を:準備していない話、自分の意見を言う時、謝罪する時など、「何を」話そうとすると詰まりますか?
  • どのように:頭が真っ白になる、言葉が出てこない、声が震えるなど、「どのように」詰まりますか?

こうした対話を通じて、漠然としていた「言葉に詰まる」という悩みが、「初対面の人と予期せぬ話題について話す際に、思考が停止し、適切な言葉が見つからなくなる」といった、具体的で対処可能な課題へと分解されていきます。このプロセス自体が、自分の状態を客観視する第一歩となります。

障害特性の言語化トレーニング:自分の「取扱説明書」を作る

障害者雇用で働く上で、企業側が最も重視することの一つが「自己理解」です。自分の障害特性を自分自身で理解し、それを他者に説明できる能力は、安定就労に不可欠です。就労移行支援では、この「障害特性の言語化」を重点的にトレーニングします。

これは、単に自分の弱点をリストアップすることではありません。「課題」「自己対処」「必要な配慮」の3点セットで整理することが重要です。

課題 (Challenge) 自己対処 (Self-Care) 必要な配慮 (Reasonable Accommodation)
急な質問をされると頭が真っ白になり、言葉に詰まる。(ASD特性) 「少し考える時間をいただけますか」と前置きする練習をする。想定される質問への回答を事前にスクリプト化しておく。 複雑な指示や質問は、口頭だけでなくチャットやメールなどテキストでも伝えてもらう。
話したいことが多く、まとまらないまま話し始めてしまい、途中で詰まる。(ADHD特性) 話す前に、要点を3つに絞ってメモに書き出す習慣をつける。ポモドーロテクニックで集中力を管理する。 報告・連絡・相談は、定例ミーティングなど時間を決めて行えるようにしてもらう。
人前で話すと強い緊張で声が震え、言葉が出なくなる。(社交不安) 本番前にリラックスするための腹式呼吸を実践する。最初は少人数の前で話す練習から始める。 朝礼での発表などを免除してもらうか、事前に発表内容を共有し、読み上げる形での発表を許可してもらう。

このように自分の特性を言語化するトレーニングを重ねることで、面接で「あなたの弱みと、それに対してどう工夫していますか?」と聞かれた際に、自信を持って具体的に答えることができるようになります。これは、企業に対して「自分の課題を客観的に把握し、それに対処する能力がある」というポジティブなメッセージを伝えることに他なりません。まさに、自分自身の「取扱説明書」を作成する作業なのです。

ステップ2:コミュニケーションスキルの段階的トレーニング ―「話す技術」を身につける

自己理解が深まったら、次は具体的な「話す技術」を習得する段階に移ります。就労移行支援事業所の多くは、社会生活技能訓練(SST)や認知行動療法(CBT)の考え方を取り入れた、体系的なコミュニケーションプログラムを提供しています。これらは精神論ではなく、具体的なスキルとして学び、練習できるものです。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)の活用

SSTは、対人関係や社会生活に必要なスキルを、具体的な練習を通じて獲得していくための、確立された心理社会的アプローチです。就労移行支援では、特に職場でのコミュニケーションに焦点を当てたSSTが重視されます。

データ出典: 障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」

基本編:コミュニケーションの土台作り
いきなり高度な会話を目指すのではなく、まずはコミュニケーションの基礎固めから始めます。

  • 挨拶・傾聴・相づち:「おはようございます」に一言添える練習や、相手の話を聞く際にうなずきや「なるほど」「そうなんですね」といった相づちを適切なタイミングで入れる練習を行います。これは「あなたの話に関心があります」という非言語的なメッセージを伝える重要なスキルです。
  • 効果的な質問:会話を広げるための「オープンクエスチョン(5W1Hで尋ねる質問)」と、情報を確認するための「クローズドクエスチョン(はい/いいえで答えられる質問)」を、場面に応じて使い分ける練習をします。これにより、一方的に話す・聞くだけの関係から、双方向の対話を生み出す力が養われます。

 

実践編:ロールプレイング(役割演技)
SSTの核となるのがロールプレイングです。職場で実際に起こりうる具体的な場面を設定し、参加者がそれぞれの役割を演じることで、実践的な対処法を体得します。

  • テーマ設定:「仕事でミスをした時の上司への報告」「自分の業務が終わっていないのに、同僚から仕事を頼まれた時の断り方」「会議で意見を求められた時の答え方」など、利用者が実際に困っている場面をテーマにします。
  • 実演とフィードバック:まず支援員や他の利用者が「良い手本(モデリング)」を見せ、その後、本人が挑戦します。演じた後には、他の参加者から「〇〇さんの、まず謝罪から入った点が良かった」「次は、結論から話すと、もっと分かりやすいかもしれない」といった、具体的で肯定的なフィードバックを受けます。批判ではなく、改善のためのヒントを得られる安全な環境が保証されています。

ビデオフィードバック:客観的な自己分析
一部の事業所では、ロールプレイングの様子を録画し、後で本人と支援員が一緒に見返す「ビデオフィードバック」を取り入れています。これにより、自分では気づきにくい話し方の癖、視線の動き、姿勢などを客観的に確認できます。「自分はこんなに早口だったのか」「緊張すると貧乏ゆすりをしてしまうんだな」といった気づきは、非言語コミュニケーションを改善する上で非常に有効です。

認知行動療法(CBT)的アプローチ:思考の癖を修正する

「言葉に詰まる」背景には、「完璧に話さなければならない」「詰まる=失敗だ」といった、非合理的な思い込み(認知の歪み)が隠れていることが少なくありません。認知行動療法(CBT)は、こうした思考の癖に気づき、より現実的で柔軟な考え方に変えていくアプローチです。

就労移行支援では、CBTの専門的な治療を行うわけではありませんが、その考え方を取り入れたプログラムが実施されることがあります。例えば、グループワークで以下のようなワークシートに取り組みます。

  1. 状況:上司への報告で言葉に詰まってしまった。
  2. 自動思考:「ああ、また失敗した。自分はなんてダメなんだ。きっと無能だと思われたに違いない。」
  3. 感情:不安(90%)、恥ずかしい(80%)、落ち込み(70%)
  4. 根拠と反証:
    • (根拠)実際に言葉に詰まった。
    • (反証)詰まった後、メモを見ながら最後まで説明できた。上司は「わかった」と言っていた。以前、上司自身も言葉に詰まっていたことがある。言葉に詰まることと、仕事の能力はイコールではない。
  5. 適応的思考:「言葉に詰まってしまったけれど、最後まで伝えることはできた。次は話す前に要点をメモしておこう。誰にでも詰まることはある。これで自分の評価が全て決まるわけではない。」
  6. その後の感情:不安(40%)、恥ずかしい(30%)、落ち込み(20%)

このプロセスを繰り返すことで、「言葉に詰まること」への破局的な思考パターンを修正し、「詰まっても大丈夫、次善の策がある」という自己肯定的な思考を育てていくことができます。

ステップ3:実践と成功体験の積み重ね ―「できた」という自信を育む

自己理解を深め、スキルを学んだだけでは、本当の自信は身につきません。就労移行支援の重要な機能は、学んだことを実践し、「できた」という小さな成功体験を安全な環境で積み重ねる機会を提供することにあります。この成功体験こそが、不安を乗り越え、次の一歩を踏み出すための原動力となります。

模擬業務・グループワーク:安全な環境でのリハーサル

事業所内では、実際の職場を模した様々なプログラムが用意されています。例えば、データ入力や書類作成といった「模擬業務」や、「新商品の企画を考える」といったテーマでの「グループワーク」などです。

これらの活動の中で、利用者は自然な形で「報告・連絡・相談(報連相)」を行う機会を得ます。例えば、模擬業務で分からないことがあれば支援員に質問する、グループワークで自分の意見を発表する、といった経験を通じて、SSTで学んだスキルを試すことができます。支援員は常に利用者の様子を見守っており、適切なタイミングで助言を与えたり、成功した点を具体的に褒めたりすることで、利用者の自信を育んでいきます。「〇〇さん、さっきの質問の仕方、結論から話せていてとても分かりやすかったですよ」といった具体的なフィードバックが、次の成功へと繋がります。

模擬面接:不安を「お守り」に変える

就職活動における最大の壁の一つが採用面接です。「言葉に詰まる」悩みを持つ方にとっては、まさに正念場と言えるでしょう。就労移行支援では、この面接に対する不安を徹底的に解消するための「模擬面接」を繰り返し行います。

模擬面接は、単に受け答えを練習するだけではありません。支援員が面接官役となり、入室から退室までの一連の流れを本番さながらにシミュレーションします。

  • 自己PR・志望動機の練習:ステップ1で言語化した自分の強みや配慮事項を、自分の言葉で伝える練習をします。
  • 想定問答集の作成:よく聞かれる質問に対する回答を、支援員と一緒に準備します。
  • 言葉に詰まった時の対処法の練習:これが非常に重要です。万が一、頭が真っ白になった時のために、「申し訳ありません、少し考える時間をいただけますか」「緊張してしまい、質問をもう一度お伺いしてもよろしいでしょうか」といった「お守りの言葉」を口に出して練習します。この「対処法を知っている」という事実が、心の余裕を生み、かえって詰まりにくくさせる効果があります。
  • 企業への同行依頼:事業所によっては、本番の面接に支援員が同席してくれる場合もあります。支援員が隣にいるという安心感や、必要に応じて補足説明をしてもらえるというサポートは、計り知れない力になります。

企業実習:リアルな職場での最終テスト

プログラムの最終段階として、多くの事業所が「企業実習(職場実習)」の機会を提供しています。これは、提携している実際の企業で、数日間から数週間にわたって就労体験をする制度です。

企業実習は、これまで事業所内で学んできたことの総仕上げの場です。支援員のサポートを受けながら、リアルな職場で、初対面の上司や同僚とコミュニケーションを取る経験をします。 「朝礼で自己紹介をする」「上司に作業の進捗を報告する」「同僚に分からないことを質問する」といった実践を通じて、自分の課題と成長を肌で感じることができます。

実習前には、支援員が実習先の企業担当者と面談し、利用者の特性や必要な配慮について事前に情報共有を行います。実習中も支援員が定期的に訪問し、本人と企業側の双方から状況をヒアリングし、問題があれば調整役を担います。この手厚いサポートがあるからこそ、利用者は安心してリアルな環境での挑戦に臨めるのです。そして、この実習を無事にやり遂げたという経験は、「自分は社会で働ける」という、何物にも代えがたい大きな自信へと繋がります。

ステップ4:環境調整と代替コミュニケーション ―「話す」以外の選択肢を持つ

「言葉に詰まる」という課題へのアプローチは、話し方そのものを訓練するだけではありません。もう一つの重要なアプローチは、「話さなくても伝わる」方法を身につけ、そもそも「詰まりやすい状況」を減らすための環境を整えることです。就労移行支援では、この「環境調整」と「代替コミュニケーション」のスキル習得も強力にサポートします。

合理的配慮の整理:働きやすい環境を自ら作る

障害者雇用促進法では、事業主に対して、障害のある従業員が働く上での障壁を取り除くための「合理的配慮」の提供が義務付けられています。しかし、どのような配慮が必要かは人それぞれであり、それを企業側に的確に伝えるのは本人です。就労移行支援では、支援員が「あなたの特性には、どのような配慮があれば働きやすくなるか」を一緒に考え、具体的に整理する手伝いをします。

「言葉に詰まる」悩みに対しては、以下のような合理的配慮が考えられます。

  • 指示の視覚化:「口頭での指示だけでなく、チャットやメール、指示書などテキストでも伝えてもらう」
  • 思考時間の確保:「複雑な質問や相談をされた際に、少し考える時間をもらうことを許可してもらう」
  • コミュニケーション手段の選択:「緊急時以外の報告・連絡・相談は、口頭ではなくチャットツールや日報で行うことを認めてもらう」
  • 会議での配慮:「会議のアジェンダを事前に共有してもらう」「発言が難しい場合、意見をチャットで書き込むことを許可してもらう」

これらの配慮事項を、面接時や就職後に企業へ適切に伝える練習も行います。これは「わがまま」を言うのではなく、自分の能力を最大限に発揮するために必要な「交渉」であり、企業側にとっても生産性を高めるための重要な情報となります。

代替ツールの活用練習:「話す」以外の武器を磨く

言葉でのコミュニケーションが全てではありません。現代の職場では、多様なコミュニケーションツールが活用されています。就労移行支援では、これらのツールを効果的に使う練習も行います。

  • 筆談・チャットツールの習熟:SlackやMicrosoft Teamsなどのビジネスチャットツールを使い、簡潔かつ的確に情報を伝える練習をします。口頭ではまとまらない内容も、テキストであれば推敲しながら整理して伝えられます。これは、特にASDやADHDの特性を持つ方にとって非常に有効な手段です。
  • スクリプト(台本)作成:電話応対や朝礼での一言報告など、定型的なコミュニケーションが求められる場面では、事前に話す内容を「台本(スクリプト)」として作成しておくことが不安の軽減に繋がります。就労移行支援では、様々な場面を想定したスクリプト作成の練習を行い、自分だけの「お守り」を増やしていきます。
  • 図やイラストの活用:複雑な業務プロセスや、自分の考えを説明する際に、言葉だけでなく簡単な図やフローチャートを描いて視覚的に伝える方法を学びます。これは、相手の理解を助けるだけでなく、自分自身の思考を整理する上でも役立ちます。
  • AIツールの活用:最近では、AIを活用してコミュニケーションを支援する動きも出てきています。例えば、メールの返信文案をAIに複数パターン作成させ、その中から自分に合ったものを選ぶ、といった活用法です。一部の先進的な事業所では、こうした最新ツールの使い方を学ぶプログラムも始まっています。

これらの「話す」以外のコミュニケーション手段を複数持つことは、心理的な安全性を大きく高めます。「最悪、話せなくても、チャットで伝えればいい」と思えるだけで、口頭でのコミュニケーションに対するプレッシャーが和らぎ、かえってスムーズに話せるようになることも少なくありません。就労移行支援は、あなたに多様な武器を与え、コミュニケーションの選択肢を広げてくれる場所なのです。

就労移行支援で「言葉に詰まる」を克服した人々の事例

理論や方法論だけでなく、実際に就労移行支援を利用して「言葉に詰まる」という壁を乗り越え、社会で活躍している人々の事例は、大きな希望を与えてくれます。ここでは、異なる特性を持つ3名の架空の事例を、参考資料に基づいてご紹介します。

事例1:ASD特性のあるAさん(20代・事務職)

  • 課題: Aさんは、非常に誠実で真面目な性格ですが、ASDの特性から、面接で質問の意図とは少しずれた、自分の興味のある分野について詳細に話しすぎてしまう傾向がありました。面接官が困惑している空気を察するとパニックになり、完全に言葉に詰まってしまうという失敗を繰り返していました。また、曖昧な指示を理解するのが苦手で、前職では「適当にお願い」と言われて何をすべきか分からず、固まってしまった経験がありました。
  • 支援内容: 就労移行支援事業所では、まず支援員との面談を通じて、Aさんの「こだわり」の強さが知識の深さという強みにもなることを確認し、自己肯定感を高めることから始めました。SSTのロールプレイングでは、特に「質問の意図を汲み取り、結論から簡潔に答える(PREP法)」練習を重点的に行いました。また、自分の特性と、業務上必要な配慮(例:「指示は具体的にお願いします」)をまとめた「自己紹介シート(障害説明書)」を支援員と一緒に作成。模擬面接では、このシートを使いながら、自分の言葉で特性を説明する練習を重ねました。
  • 結果: Aさんは、面接で自分の特性を「強み」と「必要な配慮」の両面から落ち着いて説明できるようになりました。その誠実さと、課題への対処能力が評価され、障害者雇用に理解のあるIT企業の事務職として就職。業務指示は主にチャットツールで行われ、曖昧な点があればテキストで質問できる環境が提供されたことで、安心して能力を発揮し、安定して勤務を続けています。

事例2:うつ病から復職を目指すBさん(30代・軽作業)

  • 課題: 前職での過重労働が原因でうつ病を発症し、休職の末に退職したBさん。治療により症状は改善傾向にありましたが、思考力の低下(思考制止)が残り、会話中に言葉がすぐに出てこない状態でした。そのことで自信を完全に喪失し、「自分はもう社会では通用しない」と思い込み、人と話すこと自体に強い不安を感じていました。
  • 支援内容: 事業所は、Bさんに対して、すぐにスキル訓練を始めるのではなく、まずは週3日の短時間通所から始め、生活リズムを整えることを最優先しました。最初の1ヶ月は、支援員との1対1の面談と、PCを使った個別訓練が中心でした。Bさんの状態が安定してきた段階で、少人数のグループワークに参加。簡単な作業を共同で行い、「できた」という小さな成功体験を積み重ねることを重視しました。支援員はBさんのどんな小さな成果も見逃さず、「Bさん、今日の作業、集中して取り組めましたね」と具体的にフィードバックし続けました。
  • 結果: 徐々に自信を取り戻したBさんは、企業実習に参加。そこで、黙々と集中して取り組める倉庫での軽作業が、自分のペースで働け、コミュニケーションの負荷も少ないため、自分に合っていると発見しました。就職活動の面接では、支援員が同席し、Bさんが言葉に詰まった際に、体調面に配慮が必要なことや、誠実に業務に取り組む姿勢を補足説明しました。結果、短時間勤務の契約社員として採用され、無理のないペースで社会復帰を果たしました。現在は、職場定着支援を利用し、月1回の面談で体調や業務の状況を相談しながら、安定して働いています。

事例3:ADHD特性のあるCさん(20代・ITサポート)

  • 課題: Cさんは好奇心旺盛で行動力があり、ITに関する知識も豊富でしたが、ADHDの衝動性と多動性の特性から、コミュニケーションで空回りすることが多くありました。相手の話を最後まで聞かずに自分の知識を話し始めたり、頭に浮かんだことを次々に話して論点がずれたりして、「話が長い」「結局何が言いたいの?」と指摘されることが頻繁にありました。その結果、人間関係がうまくいかず、転職を繰り返していました。
  • 支援内容: 事業所のプログラムでは、特にグループディスカッションを通じて、「傾聴」のスキルを徹底的に練習しました。具体的には、「相手が話し終わるまで絶対に口を挟まない」「相手の話を要約して確認してから、自分の意見を言う」といったルールを設けて実践しました。また、支援員との個別面談で、話す前に「要点を3つに絞ってメモに書き出す」という認知行動療法的なアプローチを訓練。この「思考の整理術」を、日々の報告や相談の場面で繰り返し実践しました。
  • 結果: Cさんは、自分の豊富な知識を、相手に分かりやすく整理して伝えられるようになりました。その能力と、元来の好奇心や行動力が評価され、ソフトウェア会社のテクニカルサポート職に就職。顧客からの複雑な問い合わせに対し、まず相手の状況をじっくりと「傾聴」し、問題の要点を整理した上で、的確な解決策を提示するスタイルが「非常に分かりやすい」と高い評価を得ています。衝動性は「行動力」、多動性は「知的好奇心」という強みに転換され、職場で欠かせない存在として活躍しています。

就労移行支援を利用するためのステップと事業所の選び方

就労移行支援が「言葉に詰まる」悩みに対して有効であることが分かっても、実際にどうやって利用を始めればいいのか、どの事業所を選べばいいのか、分からないことも多いでしょう。ここでは、利用開始までの具体的な流れと、自分に合った事業所を見つけるための重要なポイントを解説します。

利用開始までの流れ

就労移行支援の利用開始までには、いくつかの手続きが必要です。少し複雑に感じるかもしれませんが、多くの事業所では見学や相談の段階から丁寧にサポートしてくれるので、心配は不要です。一般的な流れは以下の通りです。

  1. 情報収集と比較検討:
    まずは、あなたの住む地域にどのような就労移行支援事業所があるかを調べます。インターネットで「〇〇市 就労移行支援 コミュニケーション」などと検索したり、市区町村の障害福祉課の窓口やハローワークで相談したりして、候補をいくつかリストアップします。各事業所のウェブサイトを見て、プログラム内容や特色、就職実績などを比較検討しましょう。
  2. 問い合わせ・見学・体験利用:
    気になる事業所が見つかったら、電話やウェブサイトのフォームから問い合わせて、見学や個別相談の予約をします。実際に事業所を訪れ、施設の雰囲気、他の利用者の様子、支援員の対応などを自分の目で確かめることが非常に重要です。この時、「言葉に詰まる悩みがあるのですが、どのような支援プログラムがありますか?」と具体的に質問してみましょう。多くの事業所では、数日間の体験利用も可能です。
  3. 市区町村への申請:
    利用したい事業所が決まったら、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口(名称は自治体により異なります)で、障害福祉サービスの利用申請を行います。申請には、申請書のほか、障害者手帳や医師の診断書、所得を証明する書類などが必要になる場合があります。
  4. サービス等利用計画案の作成:
    市区町村から指定された「指定特定相談支援事業者」の相談支援専門員と面談し、どのようなサービスをどのくらい利用したいかといった希望を伝え、「サービス等利用計画案」を作成してもらいます。この計画案は、市区町村がサービスの支給決定を行うための重要な書類となります。
  5. 受給者証の交付と契約:
    市区町村での審査を経て、サービスの利用が認められると、「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。この受給者証が手元に届いたら、利用を決めた就労移行支援事業所に持参し、正式な利用契約を結びます。利用開始日などを相談し、いよいよ支援がスタートします。

「言葉に詰まる」悩みに強い事業所を選ぶ3つのポイント

全国には約2,800箇所以上の就労移行支援事業所があり、その特色は様々です。「言葉に詰まる」というあなたの課題に真摯に向き合い、効果的な支援を提供してくれる事業所を選ぶためには、以下の3つのポイントを特に意識してチェックすることが重要です。

1. コミュニケーション訓練の充実度

ウェブサイトやパンフレットで「コミュニケーション能力向上」を謳っている事業所は多いですが、その中身が重要です。見学や相談の際には、以下の点を確認しましょう。

  • 専門プログラムの有無:SST(ソーシャルスキルトレーニング)や、認知行動療法の考え方を取り入れたプログラムが、体系的に提供されているか。単発の講座だけでなく、基礎から応用まで段階的に学べるカリキュラムが組まれているかがポイントです。
  • ロールプレイングの質:ロールプレイングをどのくらいの頻度で、どのようなテーマで行っているか。フィードバックは具体的で建設的か。電話機や応接セットなど、実践的な練習ができる環境が整っているかも確認しましょう。
  • プログラムの選択制:プログラムへの参加が強制ではなく、自分の課題やペースに合わせて選択できるかどうかも、無理なく続けるためには重要です。

2. 個別支援の質と柔軟性

グループでの訓練も大切ですが、あなたの特性に合わせた個別のアプローチがなければ、根本的な課題解決は困難です。支援の個別性と柔軟性を見極めましょう。

  • 支援員の専門性と相性:支援員はあなたの悩みに寄り添い、専門的な視点からアドバイスをくれるか。精神保健福祉士や臨床心理士、言語聴覚士などの専門職が在籍しているかどうかも一つの指標になります。何よりも、あなたが「この人になら相談できる」と感じられるかどうかが大切です。
  • 個別訓練の可否:対人不安が強い場合、最初は支援員と1対1での個別訓練から始められるか。徐々にグループに慣れていく、といった段階的な配慮が可能かを確認しましょう。
  • 在宅訓練への対応:体調や不安の波に合わせて、通所と在宅訓練を柔軟に組み合わせられるか。在宅でもオンラインでの面談やチャットでの相談が可能かどうかも、現代の働き方に備える上で重要なポイントです。

3. 就職実績と定着支援の質

就労移行支援の最終目標は「安定して働き続けること」です。その事業所が本当にその目標を達成できているか、実績と就職後のサポート体制で判断します。

  • 就職実績の具体性:単なる就職率の数字だけでなく、「どのような障害特性を持つ人が、どのような職種に、どのような配慮を得て就職したか」という具体的な事例を公開しているか。あなたと同じような悩みを持つ利用者の就職実績があれば、大きな安心材料になります。
  • 定着率の高さ:就職後6ヶ月や1年後の「職場定着率」は、支援の質を測る重要な指標です。高い定着率は、マッチングの精度と就職後のサポートが手厚いことの証です。大手事業所では90%近い定着率を公表しているところもあります。
  • 定着支援の内容:法律では就職後6ヶ月間の定着支援が定められていますが、その内容は事業所によって異なります。月に一度の面談だけでなく、企業側との間に入って業務調整の相談に乗ってくれるか、困った時にすぐに連絡が取れる体制があるかなど、サポートの具体性を確認しましょう。

まとめ:一人で抱え込まず、専門家のサポートで「話せる自信」を取り戻そう

「面接で頭が真っ白になる」「上司への報告で言葉が出てこない」――。この記事を通じて、仕事の場面で「言葉に詰まる」という深刻な悩みが、単なるあなたの性格や努力不足の問題ではなく、精神障害や発達障害の特性に深く根差した、構造的な課題であることをご理解いただけたかと思います。そして最も重要なことは、その課題は克服可能であり、あなたは一人で戦う必要はない、ということです。

就労移行支援は、まさにそのための場所です。そこでは、以下の多角的なアプローチによって、あなたの「話すことへの不安」を「話せる自信」へと変えていくプロセスが用意されています。

  • 自己理解の深化:専門家との対話を通じて、「なぜ、どんな時に詰まるのか」を客観的に分析し、自分の「取扱説明書」を作成します。
  • スキルの習得:SSTや認知行動療法のアプローチに基づき、「話す技術」と「思考の癖を修正する方法」を具体的に学びます。
  • 成功体験の蓄積:模擬業務やロールプレイング、企業実習といった安全な環境で「できた」という経験を積み重ね、自己肯定感を育みます。
  • 環境への働きかけ:「話す」以外の代替コミュニケーション手段を身につけ、企業に求めるべき合理的配慮を整理することで、働きやすい環境を自ら構築する力を養います。

この一連のプロセスは、暗闇の中で手探りで出口を探すような孤独な作業ではありません。それは、専門知識を持った支援員という伴走者と共に、明確な地図を手に、一歩一歩着実にゴールへと向かう旅路です。就職はゴールではなく、あなたがあなたらしく、安定して働き続けるための新たなスタート地点に過ぎません。

もし今、あなたがこの記事を読み、少しでも心が動いたのなら、ぜひその小さな一歩を踏み出してみてください。それは、近所の就労移行支援事業所のウェブサイトを覗いてみることかもしれません。あるいは、勇気を出して見学の電話を一本かけてみることかもしれません。その小さな行動が、あなたの未来を大きく変えるきっかけになるはずです。

「言葉に詰まる」という壁は、決して乗り越えられないものではありません。専門家のサポートを活用し、正しいアプローチでトレーニングを積めば、あなたらしく働ける未来は、必ず実現できます。一人で抱え込まず、ぜひ専門機関の扉を叩いてみてください。

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