コラム 2025年12月25日

【精神・発達障害の方へ】就労移行支援ガイド|受給者証の申請から就職成功までのロードマップ

一歩踏み出したいあなたへ

「一般企業で働きたいという気持ちはあるけれど、何から手をつけていいかわからない」
「精神障害や発達障害の特性を理解してくれる職場で、自分のペースでキャリアを築きたい」
「就労移行支援というサービスがあるらしいけど、手続きが複雑そうで不安…」
「『受給者証』って一体何?自分でも取得できるのだろうか?」

もしあなたが今、このような悩みや疑問を抱えているなら、この記事はきっとあなたの力になります。精神障害や発達障害を抱えながら就職活動に臨むとき、多くの人が同じような不安を感じています。一人で情報を集め、一人で準備を進めることには、大きな困難が伴うかもしれません。

この記事は、そうした方々のために、就労移行支援という心強いサービスを利用するために不可欠な「障害福祉サービス受給者証」の取得プロセスを、誰にでもわかるように、一つひとつのステップに分解して徹底的に解説するガイドブックです。

手続きの全体像から、多くの人がつまずきやすいポイント、そして何よりも大切な「自分に合った事業所」の選び方まで、あなたが安心して次の一歩を踏み出すために必要な情報を網羅しました。複雑に見える制度も、順を追って理解すれば、決して難しいものではありません。

この記事を読み終える頃には、申請プロセスへの漠然とした不安は解消され、「まずはここから始めてみよう」という具体的な行動計画を立てられるようになっているはずです。あなたの「働きたい」という想いを、確かな未来へと繋げるための羅針盤として、ぜひ最後までお役立てください。

そもそも就労移行支援とは?|あなたの「働きたい」を支える心強いパートナー

本題である「受給者証」の解説に入る前に、まずはその土台となる「就労移行支援」がどのようなサービスなのか、基本をしっかりと押さえておきましょう。専門用語をできるだけ避け、簡潔に解説しますので、初めてこの言葉に触れる方もご安心ください。

就労移行支援の定義と目的

就労移行支援とは、障害者総合支援法という法律に基づいて提供される障害福祉サービスの一つです。その目的は、障害や難病のある方が、一般企業への就職(一般就労)を実現し、その後も安定して働き続けられるように、包括的なサポートを提供することにあります。

具体的には、専門のスタッフがいる「就労移行支援事業所」に通いながら、職業訓練を受けたり、就職活動の支援を受けたりします。いわば、一般就労を目指すための「準備と実践の場」です。厚生労働省の資料によると、こうした事業所は全国に約3,000箇所以上存在し(2025年1月時点で約2,800箇所、別の資料では3,301箇所と報告されており、増加傾向にあります)、多くの人がこのサービスを活用して社会への一歩を踏み出しています。

対象となるのはどんな人?

就労移行支援は、以下の3つの条件をすべて満たす方が対象となります。

  1. 障害や難病がある方
    身体障害、知的障害、精神障害(統合失調症、うつ病、双極性障害など)、発達障害(ASD、ADHDなど)、あるいは障害者総合支援法の対象となる難病(376疾病)などがある方が該当します。
  2. 18歳以上65歳未満の方
    原則として、利用開始時点でこの年齢範囲内にあることが求められます。
  3. 一般企業への就職を希望し、支援によって就労が見込まれる方
    「企業で働きたい」という明確な意思があり、訓練やサポートを通じて就職の可能性があると判断されることが必要です。

【重要ポイント】障害者手帳がなくても利用できる可能性があります
「自分は手帳を持っていないから対象外だ」と思っていませんか? 就労移行支援は、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳、療育手帳など)を所持していなくても、医師の診断書や意見書によって、支援の必要性が認められれば利用できる場合があります。いわゆる「グレーゾーン」の方も対象になり得ますので、諦めずにまずは相談してみることが大切です。

受けられる4つの主要サポート

就労移行支援事業所では、一人ひとりの特性や目標に合わせて、就職準備から就職後の定着まで、一貫したサポートが提供されます。主な支援内容は以下の4つのフェーズに分けられます。

  1. 職業訓練(スキルアップ)
    働く上で基礎となるスキルを身につけます。多くの事業所では、PCスキル(Word, Excel)、ビジネスマナー、コミュニケーション訓練(SST:ソーシャルスキルトレーニング)などが提供されます。事業所によっては、プログラミングやデザインといった専門的なスキルを学べる場合もあります。
  2. 自己理解と職場探し(マッチング)
    支援員との面談を通じて、自分の得意・不得意、好きなこと、ストレスを感じやすい状況などを整理する「自己分析」を行います。その上で、自分に合った仕事や職場環境は何かを一緒に考え、企業研究や職場見学、数日間の職場実習(インターンシップ)などを通じて、働くイメージを具体化していきます。
  3. 就職活動支援(実践)
    実際の就職活動を全面的にサポートします。履歴書や職務経歴書といった応募書類の作成支援や添削、自分の障害特性をどのように伝えるか(障害開示)の相談、模擬面接による実践練習など、一人では不安なプロセスに専門家が伴走してくれます。企業によっては、面接に支援員が同行することも可能です。
  4. 職場定着支援(定着)
    就職はゴールではなく、スタートです。就職後も、新しい環境での悩みや人間関係の課題などについて相談できます。支援員が定期的に職場を訪問したり、本人と面談したりして、企業側との橋渡し役となり、長く安定して働き続けられるように環境調整をサポートします。この支援は、就職後まず6ヶ月間提供され、その後は「就労定着支援」という別のサービスに引き継がれます(詳細は後述)。

就労継続支援(A型・B型)との違い

障害のある方向けの就労系サービスには、「就労継続支援」というものもあります。これらは目的や働き方が異なるため、違いを理解しておくことが重要です。就労移行支援が「一般企業への就職を目指すための訓練の場」であるのに対し、就労継続支援は「福祉的なサポートを受けながら働く場」そのものです。

サービス種類 目的 雇用契約 給与・工賃 利用期間
就労移行支援 一般企業への就職を目指す なし 原則なし 原則2年
就労継続支援A型 支援を受けながら雇用契約を結んで働く あり 給与(最低賃金以上) 定めなし
就労継続支援B型 自分のペースで軽作業などを行い、工賃を得る なし 工賃(作業の対価) 定めなし

どちらのサービスが自分に合っているか迷う場合は、市区町村の窓口や相談支援事業所で相談することができます。

さて、この心強い就労移行支援サービスを利用するために、避けては通れないのが「障害福祉サービス受給者証」の取得です。次の章では、この受給者証の申請方法を、誰にでもわかるように5つのステップで徹底的に解説していきます。

【最重要】就労移行支援の受給者証|申請から利用開始までの5ステップ完全ガイド

ここからがこの記事の核心部分です。就労移行支援を利用するための「通行手形」とも言える「障害福祉サービス受給者証」。その申請プロセスは、一見すると複雑に感じるかもしれません。しかし、一つひとつのステップを順番に理解していけば、決して難しいものではありません。精神・発達障害のある方が安心して手続きを進められるよう、各ステップでの具体的な行動、ポイント、注意点を詳しく解説します。

全体像:申請から利用開始までの流れ

まずは、申請から実際にサービスの利用を開始するまでの全体の流れを把握しましょう。プロセスは大きく分けて5つのステップで構成されます。自治体によって多少の違いはありますが、おおむねこの流れで進みます。

ステップ1:相談→ステップ2:事業所探し→ステップ3:計画案作成→ステップ4:受給者証申請→ステップ5:契約・利用開始

申請書類を提出してから受給者証が交付されるまでの期間は、自治体によりますが、およそ1ヶ月前後かかることが多いです。そのため、利用を開始したい時期から逆算して、早めに準備を始めることが大切です。

具体的な手順:5つのステップ

それでは、各ステップで「何を」「どこで」「どのように」進めていくのかを具体的に見ていきましょう。

ステップ1:はじめの一歩!市区町村の窓口へ相談する

目的:就労移行支援の利用意向を公的に伝え、手続きの全体像と自分に必要な書類を確認すること。

場所:お住まいの市区町村の役所にある「障害福祉課」「障がい福祉課」などの担当窓口です。名称は自治体によって異なる場合があります。

事前に準備すると良いもの:必須ではありませんが、持っていくと話がスムーズに進みます。

  • 障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳、療育手帳など)※お持ちの方
  • 医師の診断書や意見書 ※手帳がない場合
  • マイナンバーがわかるもの(マイナンバーカード、通知カードなど)
  • 印鑑

窓口でやること:

  1. 担当者に「就労移行支援を利用して、一般企業への就職を目指したい」と明確に伝えます。
  2. ご自身の状況(障害の特性、現在の体調、これまでの就労経験、どんなことに困っているかなど)をできる範囲で説明します。
  3. 申請に必要な書類の一覧や、申請書そのものを受け取ります。
  4. お住まいの地域にある就労移行支援事業所のリストや、次のステップで重要になる「相談支援事業所」のリストをもらいます。

ポイント・注意点:

  • 事前予約がおすすめ:多くの窓口は混雑しています。事前に電話で相談の予約をしておくと、待ち時間がなく、担当者が時間を確保してくれるため、落ち着いて相談できます。
  • 不安なことは全て質問する:「費用は本当に無料になる?」「診断書はどこでもらえばいい?」「手続きでわからないことがあったら、また電話してもいい?」など、少しでも疑問に思ったことはこの場で解消しておきましょう。
  • 家族や支援者の同席も可能:一人で説明することに不安を感じる場合は、ご家族や、現在利用している医療機関のソーシャルワーカー、カウンセラーなどに同席してもらうことも有効です。

ステップ2:自分に合う場所を探す!事業所の見学・体験

目的:複数の事業所を比較検討し、自分が安心して通え、目標達成に最適な訓練環境を見つけること。

行動:ステップ1でもらったリストや、インターネット検索(例:「〇〇市 就労移行支援 精神障害」)で事業所を探し、気になる事業所に電話やWebサイトのフォームから見学・体験を申し込みます。

チェックするべきポイント:

  • プログラム内容:自分が学びたいスキル(PC、デザイン、プログラミングなど)が学べるか。精神・発達障害に特化したプログラム(SST、アンガーマネジメント、自己理解など)は充実しているか。
  • 事業所の雰囲気:スタッフや他の利用者の表情は明るいか。施設は清潔で、自分がリラックスできる空間か。自宅からの通いやすさも重要です。
  • 支援員の専門性:精神・発達障害への理解が深く、支援実績が豊富か。見学時の説明は丁寧で、こちらの質問に親身に答えてくれるか。
  • 就職実績と定着率:どのような企業・職種に就職している人が多いか。そして、就職後に長く働き続けている人(定着率)はどのくらいか。定着率の高さは、就職後のサポートの手厚さを示す重要な指標です。

ポイント・注意点:

  • 最低2〜3ヶ所は比較する:1ヶ所だけで決めてしまうと、後から「あちらの方が合っていたかも」と後悔することがあります。複数の事業所を見ることで、それぞれの長所・短所が明確になり、客観的に判断できます。
  • 体験利用を積極的に活用する:多くの事業所では、半日〜数日間、実際のプログラムに無料で参加できる「体験利用」が可能です。見学だけではわからない「実際の雰囲気」や「プログラムとの相性」を肌で感じる絶好の機会です。
  • この段階で受給者証は不要:見学や体験の時点では、まだ受給者証は必要ありません。「まずは話を聞いてみたい」という気軽な気持ちで問い合わせてみましょう。

ステップ3:未来の計画を立てる!「サービス等利用計画案」の作成

目的:「なぜ就労移行支援を利用したいのか」「利用してどうなりたいのか」を具体的に言語化し、就職までの道のりを描いた計画書を作成すること。

この計画書は「サービス等利用計画案」と呼ばれ、受給者証の申請時に必ず提出が必要な書類です。

依頼先:

  • 推奨:「指定特定相談支援事業所」に所属する相談支援専門員に作成を依頼します。市区町村の窓口で紹介してもらうか、もらったリストから自分で選んで連絡します。
  • 例外:自分で作成する「セルフプラン」も制度上は可能ですが、専門的な知識が必要なため、ほとんどの人が相談支援事業所に依頼します。

作成の流れ(相談支援事業所に依頼する場合):

  1. 相談支援事業所に連絡し、面談の予約をします。
  2. 相談支援専門員との面談で、あなたの希望や目標、悩み、利用したい就労移行支援事業所(ステップ2で絞り込んだ事業所)などを詳しく伝えます。
  3. 面談内容に基づき、専門員があなたのための「サービス等利用計画案」を作成してくれます。

ポイント・注意点:

  • 専門家への依頼が一般的で安心:相談支援専門員は、福祉サービスの専門家です。客観的な視点であなたのニーズを整理し、適切な計画を立ててくれます。また、その後の自治体との手続きもスムーズに進みやすくなります。作成にかかる費用は無料です。
  • 自分の言葉で正直に伝えることが重要:「朝起きるのが苦手で、生活リズムを整えたい」「人とのコミュニケーションで緊張してしまうのを克服したい」「パソコンを使った事務職に就きたい」など、あなたの希望や課題を具体的に、正直に伝えることが、自分に合った計画を作成してもらうための鍵となります。

ステップ4:いよいよ本番!受給者証の申請手続き

目的:必要な書類をすべて揃え、市区町村の窓口に提出し、受給者証の交付を正式に申請すること。

場所:ステップ1と同じ、市区町村の「障害福祉課」などの担当窓口です。

提出する主な書類:自治体によって若干異なりますが、一般的に以下のものが必要となります。

  • 支給申請書:窓口でもらうか、自治体のホームページからダウンロードできます。
  • サービス等利用計画案:ステップ3で作成してもらったもの。
  • 障害や支援の必要性がわかる書類:以下のいずれか。
    • 障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳など)のコピー
    • 医師の診断書または意見書(手帳がない場合)
  • 本人確認・マイナンバー書類:マイナンバーカード、または通知カード+運転免許証など。
  • 世帯の所得を証明する書類:市町村民税課税証明書など。これは利用料の負担上限額を算定するために必要です。
  • その他:印鑑など、自治体から指示されたもの。

申請後の流れ:

  1. 認定調査:書類提出後、市区町村の職員によるヒアリング(面談)が行われます。これは「サービス利用意向の聴取」とも呼ばれ、現在の生活状況や就労への意欲、なぜ支援が必要かなどについて質問されます。緊張するかもしれませんが、ステップ3で話した内容を元に、正直に答えれば大丈夫です。
  2. 支給決定:提出された書類と認定調査の内容を元に審査が行われ、サービスの利用が適切であると認められると「支給決定」となり、受給者証が発行されることになります。

ポイント・注意点:

  • 書類の不備に注意!:提出前に、申請書に記入漏れはないか、必要な書類がすべて揃っているかを必ず確認しましょう。不備があると、手続きが遅れてしまいます。
  • 診断書の有効期限:医師の診断書には、自治体によって「発行から3ヶ月以内」といった有効期限が定められている場合があります。申請のタイミングに合わせて取得するようにしましょう。

ステップ5:ゴールは目前!受給者証の交付と利用契約

目的:交付された受給者証を持って、利用を決めた事業所と正式に契約を結び、利用を開始すること。

受給者証の受け取り:審査が終わると、自宅に「障害福祉サービス受給者証」が郵送で届きます。これが、あなたが就労移行支援サービスを受ける資格があることの証明書です。

受給者証で確認すること:

  • 氏名、住所などの記載内容に間違いはないか。
  • 支給決定期間(例:〇年〇月〇日〜〇年〇月〇日)
  • 支給決定されているサービス内容(「就労移行支援」と記載されているか)
  • 利用者負担上限月額(0円、9,300円など)

事業所との契約:

  1. 利用を決めた事業所に「受給者証が届きました」と連絡し、契約手続きの日時を予約します。
  2. 契約当日、交付された受給者証印鑑を持参します。
  3. 事業所の支援員(多くはサービス管理責任者)から、サービス内容や利用上のルールについて「重要事項説明書」を用いて説明を受けます。
  4. 内容に納得したら、契約書に署名・捺印します。
  5. 具体的な利用開始日を決定します。

ポイント・注意点:

  • 契約前に最終確認:説明の中で少しでも疑問に思った点があれば、遠慮なく質問しましょう。納得した上で契約することが大切です。
  • 「個別支援計画」の作成へ:契約後、あなたの目標や希望に沿って、より詳細な訓練計画である「個別支援計画」を事業所のサービス管理責任者が中心となって作成します。この計画書に沿って、いよいよあなたの就職に向けたトレーニングがスタートします。

申請手続き・持ち物チェックリスト

これまでのステップを、抜け漏れなく進めるためのチェックリストです。ぜひご活用ください。

  • 市区町村の窓口への事前相談(予約がおすすめ)
  • 利用したい事業所の見学・体験(2〜3ヶ所)
  • 相談支援事業所への連絡・面談予約
  • サービス等利用計画案の作成依頼と受け取り
  • 医師の診断書・意見書の取得(手帳がない場合)
  • 支給申請書の記入
  • 所得証明書など必要書類の準備
  • 全ての書類を市区町村の窓口へ提出
  • 認定調査(ヒアリング)を受ける
  • 自宅に届いた受給者証の記載内容を確認
  • 利用する事業所との利用契約

もっと知りたい!就労移行支援の利用期間・料金・就職後のこと

受給者証の申請プロセスを理解したところで、次に気になるのは「どのくらいの期間使えるの?」「料金は本当にかからないの?」「就職した後はどうなるの?」といった、より具体的な疑問でしょう。ここでは、利用者が特に知りたい3つの重要テーマについて、正確な情報を提供します。

利用期間:原則2年、でも延長や再利用も可能?

就労移行支援の利用期間には、いくつかのルールがあります。基本的な考え方と、例外的なケースについて理解しておきましょう。

原則の利用期間は「最長2年間」

法律で定められた就労移行支援の標準利用期間は、原則として最長2年間(24ヶ月)です。これは「2年間通わなければならない」という意味ではなく、「2年間の持ち時間の中で就職を目指す」という考え方です。利用者の中には、半年ほどで就職する人もいれば、2年間じっくりと時間をかけて準備を進める人もいます。厚生労働省のデータによると、実際の平均的な利用期間は1年前後と言われています。

期間の延長:最大1年間の追加利用

2年間の利用期間が終了しても、まだ就職に至っていない場合、特別な事情があれば期間を延長できる可能性があります。

  • 条件:「延長期間中に就職できる具体的な見込みがある」と市区町村が判断した場合に限られます。例えば、既に企業実習中である、採用面接が進んでおり内定が出そう、といった状況が挙げられます。
  • 期間:認められた場合、最大1年間(12ヶ月)の延長が可能です。
  • 手続き:利用期間が終了する1〜2ヶ月前までに、利用している事業所のスタッフと相談の上、市区町村に延長申請を行います。申請すれば必ず認められるわけではなく、審査がある点に注意が必要です。

 

再利用(2回目の利用):残りの期間を活用

一度就労移行支援を利用して就職したものの、残念ながら退職してしまった場合、再度サービスを利用することができます。

  • 条件:前回の利用期間と合わせて、合計の利用期間が24ヶ月以内であれば再利用が可能です。
  • 例:1回目の利用で15ヶ月間サービスを使い就職した場合、まだ9ヶ月分の利用期間が残っています。退職後、この残りの9ヶ月間を2回目の利用として使うことができます。
  • 注意点:再利用の際には、なぜ退職に至ったのかを事業所の支援員と一緒に振り返り、原因を分析することが非常に重要です。同じ失敗を繰り返さないために、次の就職活動に活かす視点が求められます。

利用期間のリセットについて

「2年間使い切ったら、また期間がリセットされて新たに2年間使えるの?」という疑問を持つ方もいますが、これは非常に稀なケースです。長期間(数年以上)一般就労を継続した後に障害の状況が大きく変化したなど、ごく限られた状況で自治体が個別に判断することがあるようですが、明確な基準はありません。基本的には「リセットは難しい」と考えておくのが現実的です。

利用料金:約9割が無料で利用。自己負担の仕組みを解説

福祉サービスの利用で最も気になる点の一つが費用です。しかし、就労移行支援に関しては、金銭的な心配はほとんど必要ありません。その仕組みを詳しく見ていきましょう。

基本的な仕組みと「負担上限月額」

就労移行支援のサービス費用のうち、利用者が負担するのは原則として1割です。しかし、家計の負担が重くならないように、世帯の所得に応じて1ヶ月あたりの負担額に上限(利用者負担上限月額)が設けられています。そして、この上限額を超える費用は一切かかりません。

そして最も重要な点は、利用者の約9割が自己負担0円でサービスを利用しているという事実です。

なぜ多くの人が無料になるのか?:「世帯」の範囲が鍵

多くの方が自己負担0円になる最大の理由は、障害福祉サービスにおける「世帯」の定義にあります。18歳以上の障害者の場合、世帯の範囲は「本人と、その配偶者のみ」と定められています。

つまり、たとえ親や兄弟と同居していて、家族に収入があったとしても、本人が未婚で収入がなければ、その人の「世帯収入」は0円と見なされます。これにより、ほとんどのケースで以下の表の「低所得」区分に該当し、負担上限月額が0円になるのです。

利用者負担上限月額の区分

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(※上記「世帯」の範囲で判断) 0円
一般1 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) 9,300円
一般2 上記以外(所得割16万円以上など) 37,200円

その他の費用について:
サービス利用料以外に、事業所に通うための交通費や、昼食代は原則として自己負担となります。ただし、自治体によっては交通費の助成制度があったり、事業所が安価でお弁当を提供していたりする場合もありますので、見学の際に確認してみると良いでしょう。

就職後も安心!「就労定着支援」というサポート

「就職できても、職場でうまくやっていけるか不安…」という声は非常に多く聞かれます。就労移行支援の大きなメリットは、就職がゴールではなく、その後の「定着」まで見据えたサポート体制が整っている点です。

就職後6ヶ月間のサポート(就労移行支援の一環)

まず、就労移行支援を利用して就職した場合、就職してから6ヶ月間は、それまで利用していた事業所が引き続きサポートを提供します。これは「就労移行支援」のサービス内容に含まれているものです。支援員が定期的に本人と面談したり、職場を訪問して上司と話したりすることで、早期の課題解決と職場への適応を支援します。

就労定着支援サービス(就職後7ヶ月目から)

6ヶ月が経過した後も、引き続き支援が必要な場合は、「就労定着支援」という別の障害福祉サービスを利用することができます。

  • 対象者:就労移行支援などのサービスを利用して一般就労し、就職から6ヶ月が経過した方で、引き続き支援が必要な方。
  • 期間:最長で3年間(1年ごとに利用更新の手続きが必要)。つまり、就職後7ヶ月目から、最長で就職後3年6ヶ月までサポートを受けられます
  • 支援内容:専門の「就労定着支援員」が、利用者や企業と定期的に面談を行います。仕事上の悩み、生活リズムの乱れ、職場での人間関係といった課題に対して、解決に向けた助言や、企業側への働きかけ(環境調整の依頼など)を行います。
  • 手続き:このサービスを利用するためには、就労移行支援の時とは別に、再度「就労定着支援」のための受給者証を申請する必要があります。手続きは、利用していた事業所がサポートしてくれることがほとんどです。

このように、就職前から就職後まで、長期間にわたる切れ目のないサポート体制が用意されていることが、就労移行支援を利用する大きな安心材料と言えるでしょう。

失敗しないための就労移行支援事業所の選び方とQ&A

受給者証を取得し、いざ利用を開始するにあたって、最も重要なのが「どの事業所を選ぶか」という点です。事業所との相性は、訓練の成果や就職活動の成功を大きく左右します。ここでは、自分に最適なサービスを選択するための実践的なアドバイスと、多くの人が抱く疑問にお答えします。

自分に合った事業所を見つける3つの視点

全国に数多くある事業所の中から、自分にぴったりの場所を見つけるためには、以下の3つの視点から比較検討することが効果的です。

1. 「実績」で選ぶ:客観的なデータを確認する

事業所の支援の質を客観的に判断するために、まずは公開されているデータを確認しましょう。

  • 就職率と定着率:「何人が就職したか(就職率)」はもちろん重要ですが、それ以上に注目したいのが「就職後にどれだけ長く働き続けているか(定着率)」です。高い定着率は、単に就職させるだけでなく、利用者と企業のミスマッチが少なく、就職後のサポートが手厚いことの証です。公式サイトやパンフレットで数値が公開されているかチェックしましょう。
  • 就職先の企業・職種:自分が希望する業界や職種(例:事務職、IT系、軽作業など)への就職実績が豊富かどうかを確認します。卒業生の就職先一覧などを参考に、自分のキャリアプランと合っているかを見極めましょう。

2. 「プログラム」で選ぶ:自分に必要な学びがあるか

事業所によって提供される訓練プログラムは様々です。自分の目標や特性に合った学びの場を選びましょう。

  • スキルの多様性:基本的なPCスキルやビジネスマナーだけでなく、Webデザイン、プログラミング、動画編集といった専門スキルを学べるか。また、体調に合わせて在宅での訓練が可能かどうかも、特に精神・発達障害のある方にとっては重要なポイントです。
  • 障害特性への配慮:精神・発達障害に特化したプログラムが充実しているかを確認しましょう。例えば、対人関係のスキルを学ぶSST(ソーシャルスキルトレーニング)、感情のコントロールを学ぶストレスマネジメントやアンガーマネジメント、自分の特性を理解し対処法を学ぶ心理教育プログラムなどです。

3. 「人・雰囲気」で選ぶ:自分が安心して通える場所か

データやプログラム内容も大切ですが、最終的には「人」と「場所」との相性が決め手になることも少なくありません。必ず見学や体験利用で、自分の肌感覚を確かめましょう。

  • 支援員の専門性と相性:見学や相談の際に、支援員が親身に話を聞いてくれるか、質問に的確に答えてくれるか、精神・発達障害に関する専門知識を持っているかなどを確認します。この先、長く付き合うことになるパートナーとして信頼できるかどうかが重要です。
  • 事業所の居心地:施設内は清潔で整理整頓されているか。他の利用者はどのような雰囲気で過ごしているか。自分がこれから最大2年間、ほぼ毎日通う場所として「ここにいたい」と思えるか、安心できる環境かどうかを直感的に感じ取ることが大切です。

よくある質問(Q&A)

最後に、就労移行支援や受給者証に関して、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式でお答えします。

Q1. 障害者手帳がなくても本当に利用できますか?
A1. はい、利用できます。その場合、医師に「就労移行支援の利用が必要である」という内容の診断書や意見書を作成してもらう必要があります。まずは、かかりつけの精神科や心療内科の主治医に「就労移行支援というサービスを利用して就職を目指したいので、意見書を書いてもらえませんか?」と相談してみてください。
Q2. 現在、休職中(または在職中)ですが利用できますか?
A2. 就労移行支援は、原則として離職中の方が対象です。しかし、自治体の判断や、現在お勤めの企業との調整(復職を前提とした利用など)によっては、休職中の方も利用できる場合があります。在職しながらの利用はかなり稀なケースですが、いずれの場合もまずは市区町村の障害福祉窓口に「このような状況でも利用は可能か」と相談してみることが第一歩です。
Q3. 就労移行支援を利用すれば、必ず就職できますか?
A3. 残念ながら、利用すれば100%就職できるという保証はありません。しかし、厚生労働省の調査によると、就労移行支援からの一般就労への移行率(就職率)は年々上昇しており、令和5年度には58.8%に達しています。これは、利用者のおよそ5人に3人が就職に成功していることを意味します。一人で就職活動を行うのに比べ、専門家のサポートを受け、計画的に準備を進めることで、就職の可能性が大きく高まることは間違いありません。
Q4. 途中で事業所を変えることはできますか?
A4. はい、可能です。「通い始めたけれど、どうもプログラムが合わない」「支援員との相性が良くない」と感じた場合、利用期間(原則2年)の範囲内であれば、他の事業所に移ることができます。その際は、再度市区町村の窓口での手続き(支給決定の変更など)が必要になる場合がありますので、まずは現在利用している事業所のスタッフや、市区町村の担当者に相談してください。

まとめ:あなたの未来へ、確かな一歩を

この記事では、精神・発達障害を抱えながら「働きたい」と願う方々に向けて、就労移行支援サービスと、その利用に不可欠な「障害福祉サービス受給者証」の取得方法について、詳しく解説してきました。

就労移行支援は、あなたの就職活動における強力なパートナーです。そして、そのサービスを利用するための受給者証の申請は、一見複雑に見えても、本記事で解説した5つのステップに沿って一つひとつ進めていけば、決して難しい手続きではありません。

ステップ1:市区町村の窓口で相談する
ステップ2:事業所を見学・体験する
ステップ3:サービス等利用計画案を作成してもらう
ステップ4:必要書類を揃えて申請する
ステップ5:受給者証を受け取り、契約する

手続きには少し時間がかかるかもしれません。しかし、それは焦る必要のない、自分に合った未来を見つけるための大切な準備期間です。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、着実に前に進んでいきましょう。

もしあなたが今、この記事を読んで「少しだけ前に進んでみようかな」と感じているなら、まずはその第一歩を踏み出してみませんか。

具体的な次のアクション:
お住まいの市区町村の「障害福祉課」に電話をして、「就労移行支援の利用について相談したいのですが」と、相談の予約を取ってみましょう。

その一本の電話が、あなたの新しいキャリア、そしてあなたらしい未来へと繋がる、確かな第一歩になるはずです。あなたの挑戦を心から応援しています。

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