コラム 2025年10月9日

「会議で発言できない…」その悩み、準備と工夫で乗り越えよう

「何か言わなければいけないのに、頭が真っ白になる」「タイミングが掴めない」「的外れなことを言ってしまうのが怖い」。会議の時間は、多くの人にとってプレッシャーのかかる場面です。特に、うつや不安、ADHDやASDといった特性を抱えている場合、その困難は一層深くなります。しかし、その悩みはあなた一人のものではありません。

この記事では、そうした困難を抱えるあなたが、少しでも安心して会議に臨めるように、具体的な準備方法と当日の対処法をステップバイステップで解説します。完璧な発言を目指すのではなく、あなたらしい形で無理なく貢献するためのヒントを見つけていきましょう。

なぜ会議で発言するのが難しいのか?

効果的な対策を立てるためには、まず「なぜ難しいのか」を理解することが重要です。原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。

発達特性(ADHD・ASD)による困難

ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)の特性は、会議でのコミュニケーションに特有の難しさをもたらすことがあります。

  • ADHDの特性:次から次へと思考が移り、話がまとまらなかったり、逆に「何か言わなければ」という衝動で考えがまとまる前に発言してしまったりすることがあります。また、会議の議論に集中し続けることが難しい場合もあります。
  • ASDの特性:言葉の裏にある意図や場の空気を読むことが苦手で、「いつ、何を、どのように」発言すれば良いかタイミングを掴むのに苦労することがあります。また、曖昧な表現を理解するのが難しく、議論の前提がずれてしまうことへの不安を感じることもあります。

精神的な不調(うつ・不安)による影響

うつ病や社交不安障害なども、会議での発言を大きく妨げる要因となります。

  • うつ・抑うつ状態:思考力や集中力の低下により、議論の内容を追うのが難しくなります。「自分の意見なんて価値がない」といった否定的な自己評価に陥り、発言する意欲そのものが湧かなくなることもあります。
  • 社交不安:「変に思われたらどうしよう」「批判されたらどうしよう」という他者からの評価に対する強い恐怖心から、心臓がドキドキしたり、声が震えたりといった身体的な症状が現れることがあります。このため、会議のような注目を浴びる場面を避けようとする傾向が強まります。

過去の経験からくる自己肯定感の低下

これまでの職場で、ケアレスミスを厳しく叱責されたり、発言を遮られたりした経験は、深い傷となって残ります。「どうせまた失敗する」「黙っていた方が安全だ」という学習された無力感が、自己肯定感を低下させ、発言へのブレーキをかけてしまうのです。

会議の前にできる「3つの戦略的準備」

会議の不安を和らげる最も効果的な方法は、徹底した準備です。準備は、あなたを不確実性から守る「お守り」になります。

戦略1:情報収集とアジェンダの徹底理解

会議の目的や議題(アジェンダ)が不明確なまま参加するのは、地図を持たずに航海に出るようなものです。まずは、会議の全体像を把握しましょう。

  1. アジェンダを事前に入手する:可能な限り早くアジェンダを手に入れ、各議題の目的とゴールを確認します。
  2. 不明点をなくす:専門用語や背景がわからない部分は、会議の主催者や同僚に事前に質問しておきましょう。「この議題の背景をもう少し教えていただけますか?」と聞くことは、意欲の表れと捉えられます。
  3. 関連資料を読み込む:配布資料があれば、必ず目を通します。自分の担当分野や意見を求められそうな箇所は、特に重点的に確認します。

戦略2:「発言の脚本」を作成する

頭の中だけで考えをまとめようとすると、緊張で全て飛んでしまうことがあります。そこで、話したいことを「脚本」として書き出しておくのが非常に有効です。

  • 意見や質問を書き出す:議題ごとに、自分の意見、事実、疑問に思うことを箇条書きでメモします。「〇〇という点について、私の意見は△△です。なぜなら□□だからです」のように、構造化しておくとさらに良いでしょう。
  • 「質問」を用意しておく:意見を言うのが難しくても、質問なら比較的ハードルが低くなります。「〇〇について、具体的な事例はありますか?」など、いくつか質問を準備しておくだけで、参加の糸口が掴めます。
  • 声に出して練習する:作成したメモを見ながら、実際に声に出して話す練習をすると、本番での口の動きがスムーズになります。

戦略3:事前共有で心理的ハードルを下げる

会議という「公の場」でいきなり発言するのが怖いなら、事前に「非公式な場」で意見を伝えておく「根回し」が有効です。

信頼できる同僚や直属の上司に、「次の会議の〇〇の件ですが、私はこう考えているのですが、どう思われますか?」と軽く相談してみましょう。これにより、自分の考えが的外れでないか確認できるだけでなく、会議中に「先ほど〇〇さんが言っていた件ですが…」と、あなたの発言を後押ししてくれる味方を作れる可能性もあります。

会議中にできる「4つの実践的工夫」

どれだけ準備をしても、当日は緊張するものです。ここでは、会議の最中に試せる具体的な工夫を紹介します。

工夫1:まずは「聞く」に徹し、流れを掴む

会議が始まったら、すぐに発言しようと焦る必要はありません。まずは積極的な傾聴者になることに集中しましょう。他の人の発言を聞きながら、誰がどのような立場で、どんな意見を持っているのかを把握します。メモを取りながら聞くことで、議論の流れが整理され、自分の意見をどのタイミングで差し込むべきかが見えやすくなります。

工夫2:小さな発言から始める(貢献のステップ)

いきなり長文の意見を述べる必要はありません。貢献には様々なレベルがあります。以下の図のように、まずは心理的負担の少ない発言から試してみましょう。

図:会議での貢献度のステップ(難易度別)

まずは「相づち」や「うなずき」といった非言語の参加から始め、次に「〇〇さんの意見に賛成です」といった同調の表明、そして準備してきた簡単な質問へと、少しずつステップアップしていくことで、発言への抵抗感を和らげることができます。

工夫3:非言語的な貢献も立派な役割

発言だけが会議への貢献ではありません。発言以外の役割を担うことで、自分の存在価値を実感し、会議への苦手意識を軽減できます。

  • 議事録係:議論を整理し、決定事項を記録する重要な役割です。集中して話を聞く必要があり、自然と会議に深く関与できます。
  • タイムキーパー:時間を管理し、議論が脱線しないように促す役割です。「残り5分です」といった短い発言は、比較的行いやすいでしょう。
  • サポート役:進行役を助けたり、他の人の意見を要約してホワイトボードに書いたりするなど、議論を可視化するサポートも非常に価値があります。

工夫4:「メモ」を堂々と使う

事前に準備した「脚本(メモ)」は、あなたの武器です。それを隠す必要はありません。「少し考えを整理してきたので、メモを見ながら失礼します」と一言断れば、むしろ真剣で準備周到な姿勢として好意的に受け取られます。メモがあるという安心感は、頭が真っ白になるのを防いでくれます。

長期的に取り組むべきこと

その場しのぎの対策だけでなく、長期的な視点で働きやすい環境を整えていくことも大切です。

信頼できる上司や同僚に相談する

もし可能であれば、信頼できる上司や人事に、自分の状況を伝えてみましょう。病名や診断名を伝える必要はありません。「大勢の前で話すのが少し苦手で、考えをまとめるのに時間がかかることがあります。事前に意見をメールでお伝えしたり、1対1でお話しする機会をいただけるとありがたいです」のように、具体的な配慮としてお願いするのがポイントです。

専門家のサポートを活用する

一人で抱え込まず、専門家の力を借りることも重要な選択肢です。

  • 医療機関:うつ病や不安障害、発達障害の診断や治療について、医師に相談することで、薬物療法や心理療法といった選択肢が見つかる場合があります。
  • カウンセリング:認知行動療法などを通じて、自分の思考の癖を理解し、不安への対処法を学ぶことができます。
  • 就労移行支援事業所:障害のある方の就職をサポートする専門機関です。職場でのコミュニケーションスキルやストレス対処法など、働く上で必要なスキルをトレーニングすることができます。

まとめ:あなたらしい貢献の形を見つけよう

会議で発言できないという悩みは、決してあなたの能力が低いからではありません。特性や体調、過去の経験など、様々な要因が絡み合った結果です。

今回ご紹介したように、徹底した準備少しの工夫で、心理的なハードルは大きく下げることができます。完璧を目指さず、まずは「簡単な質問を一つする」「議事録係をやってみる」など、小さな一歩から始めてみてください。

あなたの視点や意見は、チームにとって必ず価値があります。焦らず、自分のペースで、あなたらしい貢献の形を見つけていくことが、無理なく長く働き続けるための鍵となるでしょう。

まずは無料相談から
始めませんか?

あなたの状況やご希望をお聞かせください。
最適なサポートプランをご提案いたします。
ご希望の方は施設見学や体験利用も可能です。

イラスト