「仕事は楽しいものですか?」——もしそう問われたら、自信を持って「はい」と答えられる人は、どれくらいいるでしょうか。「生活のため」「仕方なく」といった気持ちを抱えながら、日々職場へ向かう人も少なくないかもしれません。特に、障がいや病気、長期のブランクなど、何らかの「働きづらさ」を感じている方にとっては、「仕事を楽しむ」という言葉は、遠い理想のように聞こえるかもしれません。
しかし、私たちは就労移行支援事業所として、多くの利用者の方々が自分らしい働き方を見つけ、仕事にやりがいや楽しさを見出していく姿を目の当たりにしてきました。それは、特別な才能や幸運があったからではありません。自分自身を深く理解し、適切なサポートを活用しながら、一歩ずつ着実に進んできた結果です。
この記事では、就労移行支援事業所の視点から、「楽しく仕事をする」ための具体的な方法や考え方、そしてそれを支える社会の仕組みについて、詳しく解説していきます。あなたの「好き」や「得意」を仕事に繋げ、毎日をより豊かにするためのヒントが、きっと見つかるはずです。
「楽しい仕事」探しの旅に出る前に、まず手に入れるべきなのが「自己理解」という羅針盤です。自分が何に喜びを感じ、どのような環境で力を発揮できるのかを知ること。それが、自分に合った仕事を見つけるための最も重要な鍵となります。
「趣味はありますか?」と聞かれても、すぐに答えられないかもしれません。しかし、「つい時間を忘れてやってしまうこと」「人から褒められること」なら、思い当たる節があるのではないでしょうか。例えば、ゲームが好きなら、それは高い集中力や戦略的思考力の表れかもしれません。一人で黙々と何かを作るのが好きなら、それは丁寧な作業が得意という強みになります。
就労移行支援事業所では、専門のスタッフとの面談や様々なプログラムを通じて、こうした自分では気づきにくい「好き」や「得意」を一緒に見つけ出し、言語化するお手伝いをします。例えば、ディーキャリアのような事業所では、「こだわりが強い」を「調査や分析の力」と捉え直すなど、特性を強みに変える視点を提供しています。自分の強みを理解することは、自信を持って就職活動に臨むための土台となります。
自己理解には、自分の強みだけでなく、苦手なことや必要なサポートを把握することも含まれます。これは「弱みを認める」ことではなく、「自分が最もパフォーマンスを発揮できる条件を理解する」ための、積極的なステップです。
企業が障害者雇用において重視するのは、「必要な配慮を明確に伝えられること(自己理解)」と「企業に貢献できる『戦力』であること(スキルと意欲)」のバランスです。
例えば、「口頭での指示は覚えにくいので、メモでいただけると助かります」「疲れやすいため、1時間に5分程度の休憩をいただきたいです」といった具体的な要望を伝えることで、企業側もどうサポートすれば良いかが明確になります。これは「合理的配慮」と呼ばれ、企業には可能な範囲で応じる努力義務があります。自分の特性を理解し、必要な配慮をきちんと伝えることは、長く安心して働き続けるために不可欠なスキルなのです。
「せっかく就職したのに、思っていた仕事と違った」「職場の環境が合わなかった」——こうしたミスマッチは、早期離職の大きな原因となります。この課題を解決するため、2025年10月から「就労選択支援」という新しい障害福祉サービスが始まります。
これは、就労移行支援や就労継続支援A型・B型といったサービスを利用する前に、原則として受けることが義務付けられる制度です。この制度の目的は、利用者が自分に本当に合った働き方や支援サービスを見極め、より適切な選択ができるようにすることです。
具体的には、以下のようなプロセスで進められます。
この「就労選択支援」を活用することで、本格的な訓練や就労を開始する前に、自分に合った道筋をじっくりと考えることができます。これは、遠回りのようで、実は「楽しい仕事」にたどり着くための最も確実な近道と言えるでしょう。
自分に合った道筋が見えたら、次はいよいよ就職に向けた準備です。就労移行支援事業所は、単に就職先を紹介する場所ではありません。あなたが社会で自信を持って働き続けるためのスキルと安心を手に入れるための「訓練校」であり、「伴走者」です。
就労移行支援事業所では、一人ひとりの目標や課題に合わせて「個別支援計画」を作成します。提供されるプログラムは事業所によって様々ですが、一般的には以下のようなものがあります。
これらのプログラムは、多くの場合、自分のペースや興味に合わせて選択できます。「対人関係が苦手だから、まずはPCスキルから」といったように、無理なく始められるのが特徴です。小さな成功体験を積み重ねることで、働くことへの自信が少しずつ育っていきます。
応募書類の作成や面接練習と並行して、就労移行支援が提供する非常に価値のある機会が「企業実習(インターンシップ)」です。これは、実際に応募を検討している企業などで数日間〜数週間、仕事を体験する制度です。
求人票だけでは分からない職場の雰囲気や、実際の業務内容、社員との相性などを肌で感じることができます。利用者にとっては「この会社で本当にやっていけそうか」を見極める絶好の機会であり、企業側にとっても「本人の人柄や仕事ぶりを理解する」良い機会となります。この「お試し期間」があることで、採用後のミスマッチを劇的に減らすことができるのです。
「内定はゴールではなく、スタート」です。就労移行支援の真価は、就職後のサポート、すなわち「就労定着支援」にこそあると言っても過言ではありません。
新しい環境では、「人間関係がうまくいかない」「業務についていけない」「体調管理が難しい」といった様々な悩みが出てくるものです。そんな時、一人で抱え込まずに済むよう、就労移行支援事業所のスタッフがあなたと企業の「橋渡し役」となります。
定期的に面談を行ったり、職場を訪問したりして、問題が大きくなる前に解決をサポートします。困ったときにいつでも相談できる専門家がいるという安心感が、長く働き続ける上で何よりの支えとなるのです。厚生労働省のデータが示す高い定着率の背景には、こうした手厚いサポート体制があります。
「働く」というと、多くの人が一般企業でフルタイム勤務する姿を思い浮かべるかもしれません。しかし、働き方はもっと多様で自由です。特に、すぐに一般就労を目指すのが難しいと感じる方には、別の選択肢があります。
就労継続支援B型事業所は、雇用契約を結ばずに、体調やペースに合わせて比較的簡単な作業を行い、工賃を得る場所です。リハビリや社会との接点を持つ場として利用されることが多いですが、近年、その内容は大きく進化しています。
従来の軽作業に加え、利用者の「好き」や「得意」を活かしたユニークな取り組みが増えているのです。
B型事業所は、ノルマがなく、週1日・短時間からでも利用できる場合がほとんどです。「好きなこと」を楽しみながら、自分のペースで社会参加への一歩を踏み出せる。これもまた、「楽しい仕事」の一つの形なのです。
障がいのある方が働きやすい社会を実現するためには、本人の努力や支援機関のサポートだけでなく、受け入れる企業側の変化も不可欠です。近年、企業の意識や取り組みは着実に前進しています。
国は、企業に対して一定割合以上の障がい者を雇用することを法律で義務付けています。この法定雇用率は段階的に引き上げられており、2026年度には2.7%になる予定です。これにより、企業はこれまで以上に障がい者採用に積極的に取り組む必要に迫られています。
しかし、企業にとっての課題は、単に採用人数を増やすことだけではありません。採用した社員が能力を発揮し、長く働き続けてくれること、すなわち「定着率の向上」が、より重要な経営課題となっています。定着率が低いと、採用コストが無駄になるだけでなく、法定雇用率を維持できなくなり、納付金(罰金)が発生する可能性もあるからです。
こうした背景から、多くの企業が定着率を高めるために様々な工夫を凝らしています。これは、これから就職を目指す皆さんにとっても重要なポイントです。
このように、企業側も「ただ雇う」から「共に働き、成長する」へと意識をシフトさせています。就職活動の際には、こうした企業の姿勢や取り組みにも目を向けてみると良いでしょう。
「楽しい仕事」は、偶然見つかるものではなく、自分を知り、準備をし、適切なサポートを得ながら、主体的に見つけていくものです。この記事でご紹介したポイントを、最後にもう一度振り返ってみましょう。
もしあなたが今、働くことに不安を感じていたり、一歩を踏み出す勇気が持てずにいたりするなら、ぜひ一度、お近くの就労移行支援事業所に相談してみてください。多くの事業所では無料で見学や相談が可能です。話を聞いてもらうだけでも、きっと新しい発見があるはずです。
あなたの未来は、あなた自身が創るものです。私達、就労移行支援事業所は、その旅の最高のパートナーとして、あなたらしい「楽しい仕事」を見つけるためのお手伝いを全力でさせていただきます。