コラム 2026年1月8日

職場の人間関係に悩むあなたへ:就労移行支援が提供する解決策とサポート

はじめに:職場の悩み、一人で抱えていませんか?

「職場の人間関係がうまくいかない」「同僚とのコミュニケーションが難しい」「上司に自分の状況をうまく伝えられない」——。多くの方が、仕事内容そのものよりも、職場の人間関係に悩み、大きなストレスを感じています。特に、障害のある方にとって、この問題はより深刻な壁となることがあります。

実際に、障害のある方の離職理由として「職場の雰囲気・人間関係」は常に上位に挙げられます。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査によると、就職後1年での職場定着率は障害種別によって差があり、特に精神障害のある方では49.3%と、半数以上が1年以内に離職しているという厳しい現実があります。

職場で長く働き続けるためには、業務スキルだけでなく、円滑な人間関係を築くための「対人関係スキル」が不可欠です。しかし、これらのスキルは一人で身につけるのが難しい場合も少なくありません。

私たち就労移行支援事業所は、まさにそうした悩みを抱える方々のための場所です。一般企業への就職を目指す障害のある方々が、ビジネススキルだけでなく、対人関係のトレーニングを通じて、自信を持って働き続けられるよう、専門的なサポートを提供しています。この記事では、職場の人間関係で悩む原因を解き明かし、就労移行支援が提供する具体的な解決策、そして企業や社会全体で取り組むべきサポート体制について詳しく解説します。

なぜ職場の人間関係は難しく感じるのか?

職場の人間関係の難しさは、個人の性格だけの問題ではありません。特に障害のある方の場合、ご自身の特性と周囲の環境との間に生じる「ズレ」が、大きな要因となっていることが少なくありません。

障害特性とコミュニケーションの壁

障害の特性は一人ひとり異なりますが、コミュニケーションにおいて特有の困難さを抱えることがあります。例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 発達障害:相手の意図や表情、言葉の裏にあるニュアンス(いわゆる「空気を読む」こと)を理解するのが苦手な場合があります。また、曖昧な指示(例:「適当にお願い」)に戸惑ったり、自分の関心があることを一方的に話し続けてしまったりすることもあります。
  • 精神障害:不安や緊張が強いため、人前で話すことや報告・連絡・相談に困難を感じることがあります。また、ストレスに弱く、職場の些細な出来事が体調の悪化に繋がり、コミュニケーションを避けてしまうこともあります。
  • 知的障害:複雑な会話や抽象的な概念を理解するのが難しい場合があります。自分の考えや気持ちを言葉で表現することに時間がかかったり、適切な言葉が見つからなかったりすることもあります。

これらの特性は、本人の「努力不足」や「性格の問題」ではなく、脳機能の違いなどに起因するものです。しかし、周囲にその特性が理解されていないと、「やる気がない」「協調性がない」といった誤解を生み、人間関係の悪化につながってしまいます。

職場環境の課題:理解不足とサポート体制の欠如

問題は、障害のある方個人だけにあるわけではありません。受け入れる企業側の環境も、人間関係に大きく影響します。パーソル総合研究所の調査では、精神障害のある社員の直属の上司の52.6%が「精神的な負担が大きい」と感じている一方で、約90%の上司が「できるだけサポートしたい」と回答しています。

このデータは、多くの管理職が「サポートしたい気持ち」と「どうすれば良いかわからない負担感」の間で葛藤していることを示しています。担当者一人にサポートの責任が集中してしまうと、その担当者自身が疲弊してしまい、結果的に十分な支援が提供できなくなるという悪循環に陥りがちです。

社内全体で障害特性への理解を深め、誰か一人に負担が偏らないようなサポート体制を構築することが、障害のある社員だけでなく、共に働くすべての人にとって働きやすい環境を作る鍵となります。

就労移行支援で身につける「対人関係スキル」

就労移行支援事業所では、職場で直面する様々な人間関係の課題に対応するため、ソーシャルスキルトレーニング(SST)をはじめとする専門的なプログラムを提供しています。SSTとは、社会生活を送る上で必要な対人関係スキルを、実践的なトレーニングを通じて身につけるためのものです。

ここでは、就労移行支援で学べる代表的なスキルを4つご紹介します。

1. コミュニケーションの基礎力

良好な人間関係の土台となるのが、挨拶、会話、言葉遣いといった基本的なコミュニケーションです。例えば、朝出勤した際に「おはようございます」と笑顔で挨拶を交わすことは、相手の存在を認め、尊重しているという大切なメッセージになります。就労移行支援では、日々の通所を通じて、こうした基本的なスキルを自然に習慣化する練習を行います。また、相手の話をしっかり聞き、適切な相槌や質問を返す「傾聴力」や、上司や同僚、取引先といった相手や状況に応じた言葉遣いを使い分ける練習も行います。

2. 感情のコントロール(アンガーマネジメント)

職場で予期せぬトラブルや理不尽な要求に直面した際、怒りや不安といった感情をコントロールすることは非常に重要です。感情を衝動的に表に出してしまうと、周囲に「攻撃されている」と誤解されたり、「感情の起伏が激しく接しにくい」と敬遠されたりする原因になりかねません。

トレーニングでは、まず自分がどのような時に、どのような感情を抱きやすいのかを客観的に理解することから始めます。その上で、感情が高ぶった時に冷静になるための具体的な対処法(リラクゼーション法など)を学びます。例えば、「一旦その場を離れて深呼吸する」「休憩時間に好きな飲み物を飲む」といった、職場で実践できる自分なりのクールダウン方法を見つけることが、安定した就労に繋がります。

3. 協力と協調の姿勢

仕事は一人で完結するものではなく、チーム全体で協力して進めるものです。SSTでは、チーム内での円滑な協力体制を築くためのスキルも学びます。

  • 情報共有:必要な情報を適切なタイミングでチームメンバーに共有する練習。
  • 助け合い:同僚が困っている時に「何か手伝うことはありませんか?」と声をかける練習。
  • フィードバックの受容:他者からの指摘やアドバイスを前向きに受け止め、改善に繋げる姿勢。

ゲームやグループディスカッション、ロールプレイングといった形式で、楽しみながらこれらのスキルを実践的に習得していきます。

4. アサーティブな自己表現

「アサーティブ」とは、相手を尊重しつつ、自分の意見や要求を誠実に、率直に、対等に伝えるコミュニケーションスキルです。特に障害のある方が働きやすい環境を整えるためには、必要な配慮(合理的配慮)を自ら適切に伝えることが不可欠です。

しかし、一方的に要求を突きつけるだけでは、相手に負担を強いることになりかねません。トレーニングでは、「〇〇という特性があるため、△△していただけると大変助かります」といったように、自分の状況を説明し、協力をお願いする形で伝える練習を行います。これにより、良好な人間関係を維持しながら、必要なサポートを得やすくなります。

企業ができること:障害のある社員と共に働くための環境づくり

障害のある社員が定着し、能力を発揮するためには、本人の努力だけでなく、受け入れる企業側の環境整備が不可欠です。ここでは、企業が取り組むべき3つのポイントを解説します。

1. 「合理的配慮」の提供と建設的対話

2024年4月から、事業者による障害者への「合理的配慮」の提供が義務化されました。合理的配慮とは、障害のある人が他の従業員と平等に働けるよう、個々の状況に応じて行われる調整や変更のことです。重要なのは、企業が一方的に配慮内容を決めるのではなく、本人と企業が対話を重ね、共に解決策を探す「建設的対話」のプロセスです。

具体的な配慮の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 指示の出し方の工夫:口頭だけでなく、図や写真、文章を用いたマニュアルを作成する。「一度に一つの指示」を徹底する。
  • 環境の調整:聴覚過敏のある社員のために、パーテーションで仕切られた静かな席を用意したり、イヤーマフの使用を許可したりする。
  • 柔軟な勤務体系:体調の波に合わせて、時差出勤や時短勤務、在宅勤務などを認める。

求められた配慮が企業にとって過重な負担となる場合は、その理由を丁寧に説明し、代替案を共に探す姿勢が求められます。

2. 社内理解の促進とサポート体制の構築

障害者雇用を成功させるためには、「人事担当者や直属の上司だけが頑張る」のではなく、職場全体で取り組むという意識が不可欠です。配属先の同僚には、事前に本人の同意を得た上で、障害特性ではなく「業務上必要な配慮」や「得意なこと・苦手なこと」を具体的に共有することが有効です。

また、以下のような体制を整えることで、現場の負担を軽減し、円滑なコミュニケーションを促すことができます。

  • 相談窓口の設置:本人だけでなく、同僚も気軽に相談できる窓口(メンター、人事担当者など)を明確にする。
  • 役割分担の明確化:業務指示を出す人、体調面の相談に乗る人など、サポートの役割を複数人で分担する。
  • 定期的な面談の実施:上司との1on1ミーティングなどを定期的に行い、本人が抱える課題や不安を早期に把握する。

こうした取り組みは、障害のある社員のためだけでなく、職場全体の心理的安全性を高め、誰もが働きやすい環境づくりに繋がります。

3. 業務の切り出しとキャリアパスの提示

離職の原因の一つに「仕事内容が合わない」というミスマッチがあります。これは「仕事が難しすぎる」場合だけでなく、「簡単すぎてやりがいを感じられない」場合も含まれます。

本人の得意なことや特性を活かせるよう、既存の業務から一部を切り出して任せる「業務の切り出し(ジョブカービング)」は有効な手法です。さらに重要なのは、単純作業だけを任せ続けるのではなく、本人の成長に合わせて段階的に業務の幅を広げ、キャリアアップの道筋を示すことです。

「数年後にはリーダー補佐を目指そう」「この分野の専門担当者になってほしい」といった具体的なキャリアパスを示すことで、本人のモチベーションを高め、長期的な定着と成長を促すことができます。

一人で抱え込まないで:専門機関との連携が成功の鍵

職場の人間関係や環境調整は、本人と企業だけの努力では解決が難しい場合もあります。そんな時は、外部の専門機関を積極的に活用することが、成功への近道となります。これらの機関は、本人と企業の間に立ち、中立的な立場から専門的なサポートを提供します。

職場適応援助者(ジョブコーチ)による伴走支援

ジョブコーチは、障害のある方が職場にスムーズに適応できるよう、職場に訪問して専門的な支援を行う専門家です。本人に対しては、仕事の進め方や同僚とのコミュニケーション方法などを具体的に指導します。一方、企業に対しては、障害特性を踏まえた効果的な指導方法や環境調整について助言を行います。

ジョブコーチの最終的な目標は、支援者がいなくても上司や同僚による自然なサポート(ナチュラルサポート)の中で本人が安定して働き続けられる体制を築くことです。支援は、地域障害者職業センターや一部の就労移行支援事業所などを通じて利用できます。

就労定着支援:就職後も続く安心のサポート

就労定着支援は、就労移行支援などを利用して就職した方が、長く働き続けられるように、就職後の生活面や職業面での課題解決をサポートする福祉サービスです。月に1回以上の面談を通じて、本人の悩みを聞き、企業や医療機関、家族と連携しながら、働きやすい環境を調整していきます。

このサービスは、就職後6ヶ月間は利用していた就労移行支援事業所などが支援を継続し、7ヶ月目以降、最長3年間まで専門の就労定着支援事業所によるサポートを受けることができます。企業側にとっても、専門家から客観的なアドバイスを得られるため、現場の対応力強化に繋がるというメリットがあります。

就労定着支援を提供する主な機関は以下の通りです。

  • 就労移行支援事業所:就職前から一貫したサポートを受けられる。
  • 地域障害者職業センター:ジョブコーチ支援など専門的な職業リハビリテーションを提供。
  • 障害者就業・生活支援センター:就業面と生活面(金銭管理、住居など)を一体的に支援。
  • 就労継続支援事業所など:他の福祉サービスと併せて提供している場合がある。

どこに相談すればよいか分からない場合は、まずはお住まいの自治体の障害福祉担当窓口や、利用した就労移行支援事業所に問い合わせてみるのが良いでしょう。

まとめ:自分らしい働き方を見つけるために

職場の人間関係は、多くの人にとって複雑で難しい課題です。しかし、その原因を正しく理解し、適切なスキルを身につけ、周囲のサポートを得ることで、乗り越えることは十分に可能です。

就労移行支援事業所は、あなたが一人で悩みを抱え込まずに、自分らしい働き方を見つけるための「伴走者」です。SSTによる対人スキルの向上から、企業との環境調整、就職後の定着支援まで、一貫したサポートを提供しています。

もしあなたが今、職場の人間関係で悩み、一歩を踏み出せずにいるのであれば、ぜひ一度、お近くの就労移行支援事業所に相談してみてください。専門の支援員が、あなたの状況を丁寧にヒアリングし、最適な解決策を一緒に考えてくれます。あなたが一歩踏み出す勇気が、より良い未来への扉を開く鍵となるはずです。

まずは無料相談から
始めませんか?

あなたの状況やご希望をお聞かせください。
最適なサポートプランをご提案いたします。
ご希望の方は施設見学や体験利用も可能です。

イラスト