コラム 2025年12月22日

「仕事、もう辞めたい…」その悩み、一人で抱えないで。就労移行支援の専門家が教える次の一歩

はじめに:「仕事をやめたい」と感じるあなたへ

「もう、この仕事やめたい…」
朝、重い体を引きずって職場に向かう途中、あるいは仕事のプレッシャーに押しつぶされそうになった時、ふとそんな思いが頭をよぎることはありませんか。仕事の悩みは誰にでもありますが、障害のある方にとっては、その悩みがより複雑で、深刻なものになりがちです。

私たち就労移行支援事業所には、日々、そうした切実な悩みを抱えた方々が相談に訪れます。「今の職場では、自分の障害を理解してもらえない」「体調が不安定で、このまま働き続けられるか不安だ」「もっと自分に合った仕事があるはずなのに…」。

この記事では、就労移行支援の専門家として、なぜ障害者雇用で「仕事をやめたい」と感じやすいのか、その背景にあるデータや理由を解き明かします。そして、その悩みを乗り越え、あなたらしく働き続けるための具体的なステップを一緒に考えていきたいと思います。もし今、あなたが一人で悩んでいるのなら、この記事が次の一歩を踏み出すための道しるべとなれば幸いです。

なぜ?障害者雇用の離職率は高いのか – データで見る現実

「自分だけがうまくいかないのだろうか」と不安に思うかもしれませんが、実は障害者雇用における離職率は、一般雇用に比べて高い水準にあるのが現状です。まずは客観的なデータから、その実態を見ていきましょう。

1年で約4割が離職する厳しい実態

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター(NIVR)の調査によると、障害のある方が就職してから1年後の職場定着率は58.4%という結果が出ています。これは、裏を返せば約41.6%の人が1年以内に離職していることを意味します。

一般労働者の1年後の定着率が約88〜89%であることと比較すると、その差は歴然です。このデータは、障害のある方が職場で安定して働き続けることの難しさを示唆しています。

特に、就職後3ヶ月から1年にかけて離職率が大きく上昇する傾向があり、この期間をいかに乗り越えるかが、長期的な就労の鍵となります。

障害種別で異なる定着率の傾向

離職の傾向は、障害種別によっても異なります。同センターの調査では、特に精神障害のある方の定着が大きな課題となっていることがわかります。知的障害や発達障害のある方の1年後定着率が約70%前後であるのに対し、身体障害のある方は約61%、そして精神障害のある方は49.3%と半数を下回っています。これは、精神障害の特性である体調の波や、対人関係のストレスなどが、職場定着に大きく影響していることを示しています。

一方で、発達障害のある方の定着率が比較的高く推移している点は注目に値します。これは、特性に合った業務内容や、視覚的な指示、明確なルールといった「構造化された環境」が提供されることで、能力を発揮しやすいケースが多いことを示唆しているのかもしれません。

このように、一口に「障害者雇用」と言っても、その課題は一様ではありません。それぞれの障害特性を理解し、個々に合ったサポートを考えることが不可欠です。

「やめたい」の裏にある5つの主な理由

高い離職率の背景には、どのような理由が隠されているのでしょうか。多くの調査で、離職理由はいくつかのパターンに集約されることがわかっています。これらは単独ではなく、複雑に絡み合って「やめたい」という気持ちにつながっていきます。

理由1:職場の人間関係と雰囲気

多くの調査で離職理由の上位に挙げられるのが「職場の人間関係」です。障害に対する理解不足からくる孤立感、コミュニケーションのすれ違い、相談しにくい雰囲気などが、大きな精神的ストレスとなります。ある調査では、仕事を辞めたいと感じる理由のトップが「周囲の人から必要とされていないとき」だったという結果もあり、職場での居場所のなさが就労継続の意欲を削いでしまう実態がうかがえます。

理由2:障害や体調面の悪化

「障がいの発生・状態変化、体調不良」も、非常に大きな離職理由です。特に精神障害のある方の場合、職場のストレスが症状の悪化に直結することが少なくありません。また、身体障害のある方でも、通勤の負担や業務による身体的疲労が積み重なり、就労継続が困難になるケースがあります。重要なのは、「職場の人間関係」や「配慮不足」が引き金となって体調を崩すという悪循環に陥りやすい点です。

理由3:業務内容とスキルのミスマッチ

「仕事内容が合わない」「能力を発揮できない」というミスマッチも深刻な問題です。企業側が配慮のつもりで簡単な業務ばかりを任せた結果、本人のやりがいや成長機会を奪ってしまうケース。逆に、本人の特性やスキルを考慮せずに過度に難しい業務を任せ、自信を喪失させてしまうケース。どちらも「この職場に自分の居場所はない」と感じさせ、離職につながります。

理由4:障害への理解・配慮の不足

採用時には丁寧な配慮があっても、時間が経つにつれてそれが失われていく、という声は少なくありません。「仕事に慣れてきたら配慮がなくなった」「上司や同僚の異動で理解者がいなくなった」といった状況は、働く上での安心感を根底から揺るがします。 障害への配慮は、一度きりのものではなく、継続的に行われるべきものだという認識が、職場全体で共有されているかが問われます。

理由5:賃金・労働条件への不満

生活を支える上で、賃金や労働条件は無視できない要素です。厚生労働省の調査によると、障害のある方の平均賃金は一般雇用と比べて低い傾向にあります。例えば、月額平均賃金は身体障害者で約23.5万円、精神障害者で約14.9万円、知的障害者で約14.7万円となっています。 生活を維持するのに十分な収入が得られない、キャリアアップの見通しが立たないといった不満が、より良い条件を求めての転職・離職につながることもあります。

退職を決める前に:就労移行支援事業所と考える「次の一手」

「もう限界だ、辞めよう」と決断する前に、一度立ち止まって状況を整理してみませんか。衝動的な退職は、次のステップで同じ過ちを繰り返す原因にもなりかねません。私たち就労移行支援事業所は、あなたが冷静に最善の道を選択できるよう、専門的な視点からサポートします。

ステップ1:現状の整理と「やめたい理由」の言語化

まずは、なぜ「やめたい」のか、その理由を具体的に言葉にしてみましょう。支援員との面談を通じて、漠然とした不満や不安を一つひとつ整理していきます。

  • 何が一番つらいのか?(人間関係、業務内容、体調、通勤など)
  • いつからそう感じるようになったのか?(きっかけとなった出来事は?)
  • 逆に、仕事でやりがいを感じる瞬間は?
  • どのような状態になれば、働き続けられそうか?

このプロセスは、単なる愚痴を吐き出す場ではありません。自分の感情や状況を客観的に見つめ直し、問題の核心を特定するための重要な作業です。これにより、次のアクションが明確になります。

ステップ2:環境調整で解決できるか?企業への働きかけ

問題点が明確になったら、すぐに退職を考えるのではなく、「今の職場で改善できる可能性はないか」を探ります。多くの場合、問題は本人と企業の間のコミュニケーション不足や誤解から生じています。

就労移行支援事業所の「定着支援」担当者が、あなたと企業の間に立って、三者面談などを通じて課題解決をサポートします。例えば、上司にあなたの障害特性や必要な配慮を改めて説明したり、業務内容や量の調整を交渉したりします。第三者が介入することで、感情的にならずに建設的な話し合いができ、事態が好転するケースは少なくありません。

自分一人では言いにくいことも、専門家のサポートがあれば伝えやすくなります。この段階で問題が解決し、安心して働き続けられるようになる方も多くいらっしゃいます。

ステップ3:退職が最善の場合の「失敗しない転職活動」

環境調整を試みても改善が見られない、あるいは、そもそもその職場があなたに合っていないと判断した場合、初めて「転職」が具体的な選択肢となります。しかし、無計画に退職するのは危険です。

在職しながら転職活動を始めることを強くお勧めします。収入が途絶える不安なく、じっくりと次の職場を探すことができます。就労移行支援事業所では、以下のような転職サポートを包括的に行います。

  • キャリアの棚卸しと自己分析:これまでの経験やスキル、そして今回の退職理由を踏まえ、次に何を求めるのかを明確にします。
  • 求人情報の提供と企業研究:あなたの希望や特性に合った企業を一緒に探します。
  • 応募書類の作成支援:あなたの強みが伝わる履歴書・職務経歴書の作成をサポートします。
  • 面接対策:退職理由のポジティブな伝え方や、必要な配慮を的確に依頼する練習を重ねます。

「辞めたい」というネガティブな動機を、「次のステップに進むためのポジティブな転機」に変えること。それが、私たちの目指すサポートです。

就労移行支援があなたの「働き続ける」をどう支えるか

就労移行支援事業所の役割は、単に就職先を見つけることだけではありません。あなたが自分らしく、そして長く働き続けるための「土台」を一緒に築くパートナーです。ここでは、私たちの具体的な支援内容をご紹介します。

自己理解を深め、強みを活かす「適職」探し

「自分にはどんな仕事が向いているんだろう?」という問いに、一人で答えを出すのは難しいものです。私たちは、各種の職業適性検査やカウンセリング、グループワークを通じて、あなたの強み、弱み、興味、価値観を客観的に分析します。さらに、PCスキルやビジネスマナー、コミュニケーションスキルなどのトレーニング、企業での職場実習などを通じて、実践的に自分の適性を確認していきます。このプロセスを経て、「なんとなく」ではなく、根拠を持って自分に合った「適職」を選択できるようになります。

企業に響く「配慮事項」の伝え方と面接トレーニング

障害者雇用で最も難しいことの一つが、面接で自分の障害や必要な配慮をどう伝えるかです。伝え方一つで、採用担当者の印象は大きく変わります。

私たちは、あなたの障害特性を「できないこと」としてではなく、「このような配慮があれば、安定して能力を発揮し、企業に貢献できる」というポジティブな情報として整理し、言語化するお手伝いをします。その上で、支援員が面接官役となる模擬面接を繰り返し行い、自信を持って受け答えができるようにトレーニングします。必要であれば、応募先企業に支援員が事前に情報提供を行い、理解を促す「橋渡し」役も担います。

入社後も安心:最大3年半の「職場定着支援」

内定はゴールではなく、新たなスタートです。新しい環境に慣れるまでは、誰でも不安を感じるもの。就労移行支援の大きな特徴は、就職後もサポートが続く「職場定着支援」にあります。

支援員が定期的に職場を訪問したり、あなたと面談したりして、仕事の悩み、人間関係、体調の変化などをヒアリングします。問題が起きた際には、企業とあなたの間に入って、業務内容の調整や環境改善を働きかけます。この「いつでも相談できる場所がある」という安心感が、早期離職を防ぎ、安定した就労を力強く後押しします。この支援は、就職後最長で3年6ヶ月間利用することが可能です。

まとめ:一人で悩まず、専門家という選択肢を

「仕事をやめたい」という気持ちは、あなたの心と体が発している重要なサインです。それを無視して無理を続ければ、心身の健康を損ない、キャリアの再構築がさらに難しくなってしまうかもしれません。

しかし、そのサインの受け止め方と、次の一歩の踏み出し方が重要です。この記事で見てきたように、障害者雇用の離職には、人間関係、体調、業務内容、配慮不足など、複合的な要因が絡み合っています。これらの複雑な問題を一人で解決しようとすることは、非常に困難です。

私たち就労移行支援事業所は、そんなあなたの「伴走者」です。客観的なデータと専門的な知識に基づき、あなたの状況を整理し、企業との橋渡し役となり、あなたが納得できる次のステップに進むためのあらゆるサポートを提供します。

もし今、あなたが「やめたい」という気持ちと一人で戦っているのなら、どうかその手を伸ばしてみてください。お近くの就労移行支援事業所への一本の電話やメールが、あなたの未来を大きく変えるきっかけになるかもしれません。

まずは無料相談から
始めませんか?

あなたの状況やご希望をお聞かせください。
最適なサポートプランをご提案いたします。
ご希望の方は施設見学や体験利用も可能です。

イラスト