コラム 2025年11月30日

精神・発達障害、うつ病で仕事に悩むあなたへ:就労移行支援で「働き続ける未来」を見つける完全ガイド

一人で抱え込まないで。「働く」ことへの不安、一緒に考えませんか?

「働きたいという気持ちはあるのに、どうしても一歩が踏み出せない」
「うつ病や発達障害の特性が原因で、どの職場でもうまくいかなかった」
「休職期間が長くなり、社会復帰への道筋が見えず、焦りと不安だけが募っていく」

もしあなたが今、このような悩みを一人で抱えているのなら、この記事はきっとあなたの力になるはずです。精神障害や発達障害を抱えながら「働く」ということは、決して平坦な道のりではありません。体調の波、周囲の無理解、コミュニケーションの難しさ、そして何よりも「また失敗してしまうのではないか」という恐怖。これらの重圧は、時に私たちの心を深く蝕み、社会から孤立させてしまいます。

しかし、あなたは一人ではありません。日本には、そうした困難を抱える人々が、自分らしく、そして安定して働き続けるための道を共に探し、支えてくれる公的な仕組みが存在します。その代表的なものが、本記事で徹底的に解説する「就労移行支援」です。

この記事は、単なる制度の紹介に留まりません。就労移行支援が、うつ病や発達障害を持つあなたにとって具体的にどのようなメリットをもたらすのか。自分に最適な「伴走者」となる事業所をどう見つければよいのか。そして、利用を開始してから実際に就職し、その職場で長く働き続けるまでの具体的なステップはどのようなものか。これら全てを、最新のデータと専門的な知見に基づき、一つの「完全ガイド」としてまとめ上げました。

読み進めるうちに、漠然とした不安が具体的な希望へと変わっていくのを感じられるでしょう。さあ、一人で悩み続ける日々に別れを告げ、専門家と共に「働き続ける未来」への扉を開く準備を始めましょう。

就労移行支援とは?- 働くための準備と自信を取り戻す場所

就労移行支援の目的と役割

就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つです。その最大の目的は、障害や難病のある方が一般企業へ就職し、その後も安定して働き続けることをサポートすることにあります。

これは、単に仕事を見つける「職業紹介」とは根本的に異なります。就労移行支援は、働くために必要な準備を多角的に行う「訓練の場」であり、自信を回復させる「リハビリテーションの場」でもあります。利用者は、原則として最長2年間、事業所に通いながら、一人ひとりの状況に合わせて作成された「個別支援計画」に沿って、以下のような包括的な支援を受けることができます。

  • 生活基盤の構築:安定した生活リズムの確立、体調管理能力の向上
  • 自己理解の深化:自身の障害特性や得意・不得意の客観的な把握
  • 職業スキルの習得:ビジネスマナー、PCスキル、専門スキル(IT、デザイン等)の訓練
  • 就職活動の伴走:適職探し、応募書類の作成、面接練習、企業実習
  • 職場定着の支援:就職後の定期的な面談や、職場との調整役

つまり、就労移行支援は「魚を与える」のではなく、「魚の釣り方を教え、釣った後もサポートする」場所なのです。社会参加への不安を抱える方々にとって、安心して次の一歩を踏み出すための、心強いセーフティネットとしての役割を担っています。

利用対象者と条件:気になる疑問に答えます

「自分も利用できるのだろうか?」という疑問は、多くの方が最初に抱くものです。ここでは、利用対象者や条件に関するよくある質問に、Q&A形式で明確にお答えします。

Q1. どのような人が対象になりますか?

以下の条件を基本的に満たす方が対象となります。

  • 原則として18歳以上65歳未満の方
  • 身体障害、知的障害、精神障害(うつ病、統合失調症、双極性障害、適応障害など)、発達障害、または指定難病のある方
  • 一般企業等での就労を希望しており、就労が可能と見込まれる方
  • 現在、企業等に雇用されていない方(※休職中の方は後述)

Q2. 障害者手帳は絶対に必要ですか?

いいえ、必須ではありません。障害者手帳をお持ちでなくても、医師の診断書や意見書など、障害や疾患により専門的な支援の必要性が客観的に証明できれば、自治体の判断によって利用が認められるケースが多くあります。実際に、手帳を持たずに利用している方も少なくありません。

Q3. 現在、会社を休職中です。利用できますか?

利用できる可能性があります。休職中の方の利用可否は、お住まいの自治体の判断によりますが、復職を目的として利用が認められる場合があります。この場合、企業(人事部など)、主治医、そして就労移行支援事業所が連携し、復職に向けた支援計画(リワークプログラム)を立てて進めることが一般的です。まずは自治体の障害福祉窓口や、気になる事業所に相談してみることをお勧めします。

Q4. 利用期間と料金について教えてください。

利用期間は原則として最長24ヶ月(2年間)です。ただし、自治体の審査によっては、必要性が認められれば延長されることもあります。

利用料金は、本人と配偶者の前年度所得(世帯所得)によって決まります。費用の9割は国と自治体が負担し、自己負担は1割です。さらに、所得に応じて自己負担上限月額が定められており、それを超える費用はかかりません。

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯 0円
一般1 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) 9,300円
一般2 上記以外 37,200円

厚生労働省のデータによると、利用者の約9割が自己負担0円で利用しています。

他の支援サービスとの違い

就労に関する支援には様々な種類があり、混乱しやすいかもしれません。ここでは、就労移行支援と他の主要なサービスとの違いを明確にしておきましょう。

サービス名 主な目的 対象者 支援内容 ポイント
就労移行支援 一般企業への就職と定着 一般就労を目指す障害のある方 職業訓練、自己理解、就活支援、定着支援など包括的サポート 就職準備の学校のような役割
リワーク支援 休職からの職場復帰 精神疾患等で休職中の方 生活リズム改善、ストレス対処、試し出勤など復職に特化したプログラム 元の職場に戻ることが前提
職業訓練(ハロートレーニング) 職業スキルの習得 求職者全般(障害者向けコースもあり) 特定のスキル(PC、介護、製造等)を学ぶ座学や実技が中心 障害特性への個別配慮や定着支援は限定的
就労継続支援A型 支援のある環境で働く(雇用契約あり) 一般就労が困難だが、雇用契約に基づき働ける方 事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を得ながら働く 福祉的な配慮のある職場
就労継続支援B型 支援のある環境で働く(雇用契約なし) 年齢や体調等で雇用契約を結んで働くことが困難な方 雇用契約を結ばず、体調に合わせて軽作業などを行い「工賃」を得る 自分のペースで働ける作業所

このように、就労移行支援は「一般企業で働きたい」という明確な目標を持つ方にとって、スキル習得から自己理解、就職活動、そしてその後の定着まで、一貫したサポートを受けられる最も包括的なサービスと言えるでしょう。

【本記事の核心】精神・発達障害を持つ人が就労移行支援で得られる6つの大きなメリット

精神障害や発達障害を抱えながらの就職活動は、特有の困難さを伴います。体調の波に左右されたり、面接で自分の特性をうまく説明できなかったり、あるいはせっかく就職しても職場の環境に馴染めず、短期離職を繰り返してしまったり。就労移行支援は、こうした課題に真正面から向き合い、解決へと導くための具体的なプログラムとノウハウを提供します。ここでは、特に精神・発達障害を持つ方々が享受できる6つの大きなメリットを深掘りしていきます。

メリット1:生活リズムの安定と体調管理能力の向上

安定して働き続けるための最も重要な土台は、規則正しい生活リズムと、自身の体調をコントロールする力です。休職期間が長引いたり、ひきこもりがちになったりすると、昼夜逆転や体力の低下は避けられません。この状態でいきなり週5日のフルタイム勤務を始めるのは、心身に多大な負荷をかけ、再発や早期離職の大きな原因となります。

就労移行支援では、まずこの土台作りから始めます。多くの事業所では、週1日や半日といった短時間からの通所を認めており、自分の体調に合わせて無理なくスタートできます。決まった時間に家を出て、事業所という「社会的な場所」で過ごすこと自体が、優れたリハビリテーションになります。

「休職中は1日20時間眠ったこともありました。まずは主治医のアドバイス通り、意識的に『何もしない』ことでストレスから解放されました。その後、少しずつ外出の機会を増やし、生活習慣を取り戻すことを重視しました。」

事業所では、日々の体調や気分の変動を記録する習慣をつけたり、ストレスの原因と対処法を学ぶ「ストレスマネジメント」や、怒りの感情と上手に付き合う「アンガーマネジメント」といったプログラムが提供されます。これにより、利用者は自分の体調の波を客観的に把握し、「不調のサイン」を早期に察知してセルフケアを行うスキルを身につけることができるのです。これは、長期的な就労継続に不可欠な能力です。

メリット2:障害特性の自己理解と「自分のトリセツ」の作成

「なぜか人間関係がうまくいかない」「指示されたことが頭に入ってこない」「ケアレスミスが多い」。精神・発達障害のある方の多くは、こうした「理由のわからない困難」に長年悩まされています。就労移行支援の核心的な価値の一つは、この「なぜ」を解き明かし、自分自身の取扱説明書(トリセツ)を作成するプロセスにあります。

専門の支援員との定期的な面談や、グループワークを通じて、過去の成功体験や失敗体験を振り返ります。これにより、自分がどのような環境で能力を発揮しやすく(強み)、どのような状況で困難を感じやすいのか(弱み・課題)を客観的に言語化していきます。

さらに、多くの事業所では以下のような専門的なプログラムが用意されています。

  • 認知行動療法(CBT): 物事の受け取り方や考え方の「癖」に気づき、より柔軟な思考パターンを身につけることで、気分の落ち込みや不安を軽減します。うつ病の方の再発予防にも効果的とされています。
  • 社会生活技能訓練(SST): 職場での具体的な場面(報告・連絡・相談、頼み事、断り方など)を想定したロールプレイングを行い、対人関係スキルを実践的に学びます。

こうした訓練を通じて自己理解が深まることで、就職活動において極めて重要な**「合理的配慮の明確化」**が可能になります。例えば、「口頭での指示は忘れやすいので、メモやチャットでいただけると助かります」「感覚過敏があるため、可能であれば窓際の静かな席を希望します」といったように、自分が安定して能力を発揮するために必要なサポートを、具体的かつ前向きに企業へ伝えることができるようになるのです。これは、企業側にとっても「どう支援すれば良いか分かる」という安心材料となり、採用の可能性を高める重要な要素となります。

メリット3:実践的なビジネススキルと専門スキルの習得

自己理解と体調管理の土台が整ったら、次は具体的な「武器」を身につける段階です。就労移行支援では、現代のビジネスシーンで必須となる基礎スキルから、キャリアアップに繋がる専門スキルまで、幅広いカリキュラムが提供されています。

基礎ビジネススキル

多くの事業所で、以下のような社会人としての基礎力を養うプログラムが用意されています。

  • PCスキル:タイピング、Wordでの文書作成、Excelでの表計算・グラフ作成、PowerPointでの資料作成など、事務職で必須のスキルを基礎から学べます。
  • ビジネスマナー:正しい敬語の使い方、名刺交換、電話応対、来客対応など、社会人としての基本動作をロールプレイング形式で習得します。
  • ビジネスコミュニケーション:円滑な人間関係を築くための「報告・連絡・相談(報連相)」の重要性や、効果的なビジネスメールの書き方などを学びます。

専門スキル(IT・Web分野など)

近年、障害者雇用の分野でもIT人材の需要が高まっています。特に在宅勤務や柔軟な働き方と相性が良いため、多くの就労移行支援事業所がIT・Web分野の専門コースに力を入れています。未経験からでも挑戦できるカリキュラムが組まれており、新たなキャリアを切り拓くチャンスとなります。

  • プログラミング:HTML/CSS, JavaScriptといったWeb制作の基礎から、Python, Javaなどのより高度な言語まで。
  • Webデザイン:Photoshop, Illustratorといったデザインツールの使い方、Webサイトのレイアウトや配色など。
  • その他:動画編集、CAD、データサイエンス、Webライティングなど、事業所によって特色あるコースが設置されています。

これらのスキルを身につけることは、単に就職先の選択肢を広げるだけでなく、「自分にはこれができる」という専門性を手に入れることで、大きな自信に繋がります。障害者雇用枠であっても、専門スキルを持つ人材はより良い条件で採用される可能性が高まります。

「一人じゃない就活」を実現する手厚いサポート

一人での就職活動は、精神的な負担が非常に大きいものです。不採用が続けば自己肯定感が下がり、活動を続ける気力さえ失いかねません。就労移行支援の最大の強みの一つは、この孤独な戦いを**専門スタッフとの「二人三脚のチーム戦」に変えてくれる**点にあります。

具体的には、以下のような多岐にわたるサポートが提供されます。

  • 応募書類の作成支援:自己分析で明確になった自分の強みや経験を、採用担当者に響く言葉で履歴書や職務経歴書に落とし込む作業を、マンツーマンでサポートします。「志望動機」や「自己PR」を一緒に練り上げていきます。
  • 徹底した模擬面接:入退室のマナーから、よく聞かれる質問への回答練習まで、本番さながらの模擬面接を繰り返し行います。面接官役のスタッフから客観的なフィードバックをもらうことで、「自分の話し方の癖」や「伝え方の改善点」に気づき、自信を持って本番に臨めるようになります。オンライン面接の練習に対応している事業所も増えています。
  • 企業インターンシップ(職場実習):応募前に、興味のある企業で数日間〜数週間の就業体験ができる制度です。実際の業務内容や職場の雰囲気を肌で感じることで、「自分に合っているか」を判断でき、入社後のミスマッチを劇的に減らすことができます。実習がきっかけで、そのまま採用に繋がるケースも少なくありません。
  • 面接同行:事業所や企業によっては、スタッフが面接に同行してくれる場合があります。会場まで一緒に行ってもらうだけでも心強いですが、面接の場で本人がうまく説明できなかった部分を補足してくれたり、企業からの質問の意図を解説してくれたりすることもあります。

これらの手厚いサポートにより、利用者は安心して就職活動に集中でき、持てる力を最大限に発揮することが可能になるのです。

メリット5:ミスマッチを防ぐ、障害に理解のある企業との出会い

障害者雇用において、最も避けたいのが「入社後のミスマッチ」です。求人票の情報だけでは、実際の職場の雰囲気や、障害への理解度を正確に知ることは困難です。就労移行支援事業所は、この情報格差を埋め、利用者と企業の双方にとって幸福なマッチングを実現する「架け橋」としての重要な役割を担っています。

多くの事業所は、長年の支援実績を通じて、障害者雇用に積極的で、かつ定着率の高い**優良企業との独自のネットワーク**を構築しています。Kaienのように200社以上の企業と提携し、一般には公開されていない「独自求人」を多数保有している事業所も存在します。

企業側も、就労移行支援事業所と連携することに大きなメリットを感じています。

企業が就労移行支援事業所との連携を重視する理由
  • 安定就労できる人材の確保:事業所で訓練を受け、生活リズムや体調管理が安定している利用者は、採用後も継続して勤務できる可能性が高いと判断される。
  • 客観的な情報の入手:支援員から、本人の障害特性、強み、必要な配慮事項について客観的で詳細な情報を提供してもらえるため、採用判断がしやすい。
  • 採用後の連携:就職後も定着支援を通じて事業所が関与してくれるため、何か問題が起きた際に相談できるパートナーがいるという安心感がある。

このように、事業所が利用者と企業の間に立つことで、お互いの理解が深まり、単なる条件面だけでなく、社風や価値観といったレベルでのマッチングが可能になります。これが、就労移行支援を経由した就職が高い定着率を誇る大きな理由の一つです。

メリット6:「就職して終わり」ではない、就職後の定着支援

「内定はゴールではなく、スタートである」―この言葉は、障害者雇用において特に重みを持ちます。新しい環境への適応、人間関係の構築、業務への習熟など、就職後には新たな壁が次々と現れます。事実、データはその厳しさを物語っています。

出典: 障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」を基に作成

上のグラフが示す通り、特に精神障害者の場合、就職後1年で約半数(50.7%)が離職してしまうという厳しい現実があります。この「定着の壁」を乗り越えるために不可欠なのが、就職後の継続的なサポートです。

就労移行支援事業所は、法律により、利用者が就職してから**最低6ヶ月間、無料で「職場定着支援」を行う**ことが定められています。 具体的には、支援員が月に1回程度のペースで職場を訪問したり、本人と面談したりして、以下のようなサポートを行います。

  • 本人へのサポート:仕事上の悩みや生活面の不安を聞き、解決策を一緒に考える。
  • 企業へのサポート:上司には直接言いにくい配慮事項(業務量の調整など)を代わりに伝えたり、本人の障害特性について改めて説明し、職場全体の理解を促す。
  • 橋渡し役:本人と企業の間で認識のズレが生じた際に、中立的な立場で間に入り、円滑なコミュニケーションを助ける。

この定着支援の効果は絶大です。ある調査では、定着支援を受けた場合の1年後定着率は73.2%であるのに対し、支援を受けなかった場合は52.6%に留まるという結果が出ています。

さらに、6ヶ月の無料支援期間が終了した後も、本人が希望すれば「**就労定着支援事業**」という別の福祉サービスに切り替えることで、最長3年間、継続してサポートを受けることが可能です。

このように、就職前から就職後まで切れ目のないサポート体制が整っていることこそ、就労移行支援を利用する最大の安心材料と言えるでしょう。

失敗しない!自分に合った就労移行支援事業所の選び方

就労移行支援の効果を最大限に引き出すためには、「どの事業所を選ぶか」が極めて重要です。事業所は全国に3,000箇所以上あり、それぞれに特色や強みがあります。自分に合わない場所を選んでしまうと、通所が苦痛になったり、期待した支援が受けられなかったりする可能性があります。ここでは、後悔しないための事業所選びの具体的なステップとポイントを解説します。

Step1:事業所の探し方を知る

まずは、どのような事業所が存在するのか、情報を集めることから始めましょう。主な探し方は3つあります。

  1. 自治体の障害福祉窓口で相談する
    お住まいの市区町村の役所にある「障害福祉課」などの窓口は、最も基本的で確実な情報源です。地域の事業所リストを提供してくれるだけでなく、利用手続き(受給者証の申請)についても同時に相談できます。「何から始めればいいか分からない」という方は、まずここを訪ねるのが良いでしょう。
  2. 専門機関へ相談する
    ハローワークの障害者専門窓口、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターといった公的な専門機関も、事業所の情報提供や紹介を行っています。これらの機関は就労支援のプロフェッショナルであり、より専門的な視点からアドバイスをもらえる可能性があります。
  3. インターネットの検索サイトを活用する
    「就労移行支援 (地域名)」で検索すれば、多くの事業所情報サイトが見つかります。各事業所の公式サイトはもちろん、利用者の口コミや評判をまとめたサイトもあり、自宅で手軽に比較検討できるのがメリットです。事業所の雰囲気やプログラム内容を大まかに把握するのに役立ちます。

Step2:見学・体験で必ず確認すべき8つのポイント

情報を集めて気になる事業所をいくつか絞り込んだら、**必ず見学や体験利用を申し込みましょう。** ホームページの情報だけでは分からない「現場の空気」を肌で感じることが、ミスマッチを防ぐ上で最も重要です。見学の際には、以下の8つのポイントを意識してチェックしてください。

事業所選びの8つのチェックポイント
  1. 支援プログラムの内容は自分に合っているか?
    自分が身につけたいスキル(例:PC、プログラミング、デザイン)の講座はありますか? また、自分に必要な訓練(例:コミュニケーション、ストレス管理)は充実していますか? カリキュラムの具体例や時間割を見せてもらいましょう。
  2. 自分の障害への専門性・対応実績はあるか
    うつ病や発達障害など、自分の障害に特化したコースやプログラムはありますか? 精神保健福祉士や臨床心理士など、専門資格を持つスタッフが在籍しているかは安心材料になります。
  3. 就職実績と「定着率」は高いか?
    就職率(例:全国平均56.2%)だけでなく、より重要な就職後6ヶ月・1年後の定着率を必ず確認しましょう。高い定着率は、支援の質の高さを証明します。また、自分が希望する業界や職種への就職実績があるかも重要なポイントです。
  4. 事業所の雰囲気やスタッフとの相性はどうか?
    これは最も感覚的ですが、重要な要素です。静かで集中できる環境か、利用者同士の交流が活発か。スタッフは親身に話を聞いてくれそうか。「ここに2年間、安心して通えそうか」を自分の心に問いかけてみてください。
  5. 無理なく通える場所にあるか?
    自宅からの距離、交通の便、通勤ラッシュの状況などを考慮しましょう。通所自体が大きなストレスになっては本末転倒です。継続できることが何よりも大切です。
  6. 就職後のサポート体制は手厚いか?
    就職後6ヶ月間の定着支援について、具体的にどのようなサポート(面談頻度、企業との連携方法など)を行っているかを確認しましょう。
  7. 企業インターン(職場実習)の実績は豊富か
    どのような企業と提携し、実習の機会を提供しているかを確認します。多様な実習先がある事業所は、それだけ企業との繋がりが強い証拠です。
  8. 利用者の声や評判はどうか?
    可能であれば、見学時に他の利用者の方に話を聞いてみるのも良いでしょう。Web上の口コミも参考にしつつ、最終的には自分の目で確かめることが重要です。

複数の事業所を見学し、これらのポイントを比較検討することで、自分にとって最適な「パートナー」を見つけることができるはずです。

Step3:大手・特化型事業所の特徴を比較する

事業所には、全国展開する大手から、特定の障害やスキルに特化した専門的な事業所まで様々です。ここでは代表的な事業所の特徴をいくつかご紹介します。自分に合いそうなタイプの事業所を見つける参考にしてください。

利用開始から就職、そして定着までの完全ロードマップ

「通いたい事業所が見つかったら、次は何をすればいいの?」ここでは、就労移行支援の利用を申し込み、実際に就職して働き続けるまでの一連の流れを、具体的なステップに沿って解説します。全体像を把握することで、見通しを持って安心して準備を進めることができます。

利用開始までの5ステップ

事業所を決めてから実際に利用を開始するまでには、いくつかの手続きが必要です。一般的には1〜2ヶ月程度の期間を見ておくと良いでしょう。

  1. 問い合わせ・見学・体験
    気になる事業所に電話やWebサイトから連絡を取り、見学や相談、体験利用を申し込みます。ここで事業所の雰囲気や支援内容を自分の目で確かめ、スタッフに不安な点を質問します。
  2. 利用したい事業所の決定
    複数の事業所を比較検討した上で、「ここに通いたい」という事業所を一つに絞ります。決定したら、その旨を事業所に伝えます。
  3. 「障害福祉サービス受給者証」の申請
    利用したい事業所が決まったら、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口へ行き、「就労移行支援を利用したい」と伝えて受給者証の申請手続きを行います。この際、以下のものが必要になることが一般的です。

    • 申請書
    • 障害者手帳、または医師の診断書・意見書
    • マイナンバーが確認できる書類
    • 本人確認書類
    • 印鑑
    • サービス等利用計画案(※)

    (※)サービス等利用計画案は、指定特定相談支援事業者に作成を依頼するか、自分で作成(セルフプラン)します。どちらになるかは自治体によって異なるため、窓口で確認が必要です。

  4. 認定調査と受給者証の交付
    申請後、自治体の職員によるヒアリング(認定調査)が行われます。心身の状況や生活環境について質問されますので、ありのままを伝えましょう。審査を経て、利用が適切と判断されると「障害福祉サービス受給者証」が自宅に郵送されます。
  5. 事業所との利用契約
    受給者証が手元に届いたら、利用を決めた事業所に持参し、正式な利用契約を結びます。重要事項の説明を受け、内容に同意すれば、いよいよ利用開始です。

利用開始後の流れ(モデルケース)

利用開始後は、原則2年間の利用期間の中で、一人ひとりのペースに合わせて就職準備を進めていきます。ここでは一般的な流れを4つのフェーズに分けてご紹介します。

準備期(1〜6ヶ月目):土台を築く

この時期の目標は、安定して通所できる心身の土台を作ることです。

  • 個別支援計画の作成:支援員と面談し、あなたの目標や課題に合わせた個別の支援計画を一緒に作成します。
  • 生活リズムの安定:まずは週2〜3日、半日だけといった無理のないペースから始め、徐々に通所日数や時間を増やしていきます。
  • 基礎プログラムへの参加:自己理解を深めるグループワーク、ストレスマネジメント、コミュニケーション講座、軽度の運動プログラムなどに参加し、心身のコンディションを整えます。

実践期(7〜18ヶ月目):スキルを磨く

土台が整ってきたら、就職に向けた具体的なスキルアップを目指します。

  • ビジネス・専門スキルの習得:PCスキル講座や、希望者はプログラミング、Webデザインなどの専門スキル講座を受講します。
  • 就職活動の準備:支援員と一緒に企業研究や自己分析を深め、応募書類(履歴書・職務経歴書)の作成に着手します。模擬面接もこの時期から本格的に始まります。
  • 企業インターンシップ(職場実習):興味のある企業で実際の業務を体験します。ここで自分の適性を確認したり、働くことへの自信をつけたりします。

就職活動期(18ヶ月目〜):未来を掴む

いよいよ本格的な就職活動のスタートです。

  • 求人応募:事業所が持つ求人情報やハローワークなどを活用し、自分に合った企業に応募します。
  • 面接:繰り返し練習した成果を発揮します。支援員が面接に同行してくれる場合もあります。
  • 内定獲得と条件調整:内定が出たら、給与や勤務時間、配慮事項などの労働条件を企業と確認します。この際も支援員が間に入ってサポートしてくれます。

定着支援期(就職後):働き続ける

就職はゴールではなく、新たなスタートです。

  • 就職後6ヶ月間:就労移行支援事業所による無料の定着支援が行われます。月に1回程度の面談を通じて、職場での悩みや不安を相談し、解決していきます。
  • 就職後7ヶ月目〜最長3年:さらに支援が必要な場合は、「就労定着支援事業」という別のサービスに切り替えて、継続的なサポートを受けることができます。

このロードマップはあくまで一例です。早い方では半年ほどで就職するケースもありますし、2年間じっくりかけて準備する方もいます。大切なのは、焦らず自分のペースで、着実にステップアップしていくことです。

ここまで就労移行支援の全体像を解説してきましたが、さらに細かい疑問や、今後の展望についても触れておきましょう。

Q. 就労移行支援とリワーク(復職支援)は併用できますか?どちらを選ぶべき?

併用は一般的ではありません。どちらを選ぶかは、あなたの**目的**によります。

  • 元の職場への復帰を強く希望している場合は、復職に特化したプログラムを持つリワーク支援が適しています。医療機関が運営する「医療リワーク」や、企業内の制度を利用する「職場リワーク」などがあります。
  • 元の職場に戻るのではなく、新しい環境で働きたい(転職・新規就職)と考えている場合や、復職か転職か迷っている場合は、幅広い選択肢を検討できる**就労移行支援**が適しています。

休職中に就労移行支援を利用して、結果的に復職するケースもありますが、まずは主治医や会社の産業医、人事担当者とよく相談することが重要です。

Q. 利用期間の2年で就職できなかったらどうなりますか?

原則2年という期間はありますが、万が一その期間内に就職が決まらなかった場合でも、道が閉ざされるわけではありません。

  • 利用期間の延長:自治体の審査により、就職活動の進捗状況などを踏まえて「支援の継続が必要」と判断されれば、最大1年間の延長が認められる場合があります。
  • 他のサービスへの移行:就労継続支援A型・B型など、別の福祉サービスに移行して、まずは働く経験を積みながら、再度一般就労を目指すという選択肢もあります。

支援員と相談しながら、その時点での最善の道を探していくことになります。

Q. 体調が悪化して通えなくなったら?途中で辞められますか?再利用は可能?

はい、途中で利用を終了することは可能です。ただし、一度利用を終了すると、残りの利用可能期間がリセットされるわけではなく、消費されたものとして計算される点に注意が必要です。

体調不良で長期的に通所が難しくなった場合は、一度サービス利用を中断・終了し、体調が回復してから再度、自治体に申請して利用を再開するという形になります。これを「2回目の利用」と捉える自治体が多いです。その際は、1回目の利用での反省点を活かし、より着実な就職を目指すことが重要になります。

「就労移行支援に通っていたことが、就職活動で不利になるのでは?」と心配される方がいるかもしれませんが、現実はその逆です。多くの企業、特に障害者雇用に積極的な企業は、就労移行支援の利用経験をポジティブに評価しています。

背景には、2018年4月に精神障害者が法定雇用率の算定対象に加えられたことや、法定雇用率自体の段階的な引き上げ(2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7%へ)があり、企業の障害者採用ニーズ、特に精神・発達障害者の採用ニーズが急速に高まっていることがあります。上のグラフが示すように、精神障害者の雇用者数は近年で大幅に増加しています。

このような状況下で、企業が就労移行支援利用者を高く評価する理由は明確です。

企業が就労移行支援利用者を評価する3つの視点
  • 1. 安定就労の準備ができている:事業所に安定して通所できていた実績は、「採用後も安定して出勤できる」という信頼に繋がります。体調管理やビジネスマナーなどの基礎が身についている点も大きなプラス評価です。
  • 2. 自己理解が深く、求める配慮が明確:自分の障害特性を理解し、「どのような配慮があれば能力を発揮できるか」を具体的に説明できるため、企業側は受け入れ体制を整えやすく、入社後のミスマッチを防げます。
  • 3. 支援機関との連携が可能:採用後も事業所が定着支援として関わってくれるため、企業は問題を一人で抱え込む必要がありません。専門的な知見を持つパートナーがいることは、企業にとって大きな安心材料となります。

したがって、就労移行支援の利用経験は、あなたの就職活動において「ハンデ」ではなく、むしろ「強み」となるのです。

障害者就労支援の分野では、より良いマッチングを目指して制度が常に進化しています。その最新の動きが、2025年10月から全国で開始される新サービス「就労選択支援」です。

これは、就労移行支援や就労継続支援といった本格的な福祉サービスを利用する前段階で、短期間(1ヶ月程度)の作業やアセスメントを通じて、「自分にはどのような働き方や支援が合っているのか」を本人と支援機関が協同で整理するためのサービスです。

就労選択支援のポイント

  • 目的:本人による適切な進路選択の支援。就労に関する能力・適性の評価と、本人の希望や必要な配慮事項の整理(就労アセスメント)。
  • 対象者:就労移行支援や就労継続支援の利用を希望する方など。
  • プロセス:短期間の生産活動などを通じて状況を把握し、本人、支援機関、ハローワークなどが参加する「多機関連携会議」でアセスメント結果を共有。その後の支援に活かします。
  • 注意点:このサービスは、利用者の「振り分け」や就労の「可否」を判断するものではありません。あくまで本人が自己理解を深め、納得して次のステップに進むための支援です。

この「就労選択支援」が導入されることで、利用者はより深く自分を理解した上で就労移行支援などのサービスに進むことができるようになり、ミスマッチが一層減ることが期待されています。これは、障害のある方一人ひとりの希望や能力に沿った、より質の高い就労を実現するための重要な一歩と言えるでしょう。

まとめ:勇気を出して、専門家と「働き続ける未来」への一歩を踏み出そう

本記事では、精神・発達障害やうつ病を抱えながら「働く」ことに悩む方々に向けて、就労移行支援という選択肢を多角的に、そして深く掘り下げてきました。

最後に、最も重要なポイントを改めて確認しましょう。

この記事の核心
  • 精神・発達障害を持つ方の就労における最大の課題は「就職」そのものよりも「職場定着」です。特に精神障害者の1年後定着率は50%を下回る厳しい現実があります。
  • 就労移行支援は、単なる職業紹介ではありません。生活リズムの安定、自己理解の深化、スキルの習得といった「働くための土台作り」から、手厚い就職活動サポート、そして最も重要な「就職後の定着支援」までを包括的に提供する、公的な福祉サービスです。
  • 自分に合った事業所を選ぶことが成功の鍵です。プログラム内容、障害への専門性、そして何より「定着率」の実績を確認し、必ず見学・体験を通じて自分の目で確かめることが不可欠です。
  • 就労移行支援の利用経験は、企業から「安定就労への準備ができた人材」としてポジティブに評価される「強み」となります。

「働きたい」という気持ちがありながら、不安や過去の失敗経験から一歩を踏み出せずにいる時間は、非常につらく、孤独なものです。しかし、その悩みはあなた一人で抱え込む必要はありません。就労移行支援には、あなたの状況を理解し、専門的な知識と経験をもって伴走してくれるプロフェッショナルがいます。

この記事を読んで、少しでも「話を聞いてみたい」「自分にも可能性があるかもしれない」と感じたなら、ぜひ勇気を出して、最初の一歩を踏み出してみてください。それは、お住まいの地域の障害福祉窓口に電話を一本かけることかもしれませんし、気になる事業所のホームページから、無料相談を申し込むことかもしれません。

その小さな一歩が、あなたが一人で悩み続けた暗いトンネルを抜け出し、自分らしく、そして誇りを持って「働き続ける未来」へと繋がる、確かな始まりになるはずです。

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