コラム 2025年11月28日

精神・発達障害のある方の「働く」を支える羅針盤|就労移行支援とリワークの違い、選び方を解説

一人で悩まないで。精神・発達障害と「働く」の新しいカタチ

「自分に合う仕事なんて、本当にあるのだろうか」「今の職場に、もう一度戻れる自信がない」「働きたい気持ちはあるのに、一歩が踏み出せない」。精神障害や発達障害と共に生きる中で、このような「働く」ことに関する不安や悩みを抱えている方は少なくありません。周りの人と同じようにできないことへの焦り、体調の波に左右されることへの自己嫌悪、そして社会から取り残されてしまうかのような孤独感。これらの重圧は、時に一人で抱え込むにはあまりにも大きいものです。

しかし、どうか一人で悩み続けないでください。現代の日本社会では、障害のある方々の「働きたい」という想いを具体的に支えるための、公的な制度や専門的なサービスが着実に整備されつつあります。かつては根性論や個人の努力に委ねられがちだった就労の問題は、今や社会全体で支えるべき課題として認識され、その解決策も多様化・専門化しています。

本記事では、その中でも特に重要な役割を担う2つの支援サービス、「就労移行支援」「リワークプログラム」に焦点を当てます。この2つは、しばしば混同されがちですが、その目的も対象者も、提供される支援内容も全く異なります。この記事を読めば、あなた自身の状況や希望に応じて、どちらのサービスがより適しているのかを明確に判断できるようになります。

この記事を通じて、以下のことを具体的に理解できます。

  • 「新しい就職」を目指す就労移行支援と、「元の職場への復帰」を目指すリワークの明確な違い。
  • 精神障害や発達障害の特性を持つあなたにとって、それぞれのサービスがどのように役立つのか。
  • 数多くの事業所の中から、後悔しないための「自分に合った場所」を見つける具体的な方法。
  • 2025年10月から新たに始まる「就労選択支援」という制度が、あなたの選択にどう影響するのか。

障害は、あなたの可能性を閉ざすものではありません。むしろ、適切なサポートと環境があれば、それは他の誰にもない「強み」にさえなり得ます。大切なのは、一人で抱え込まず、専門家の力を借りて、自分らしい働き方への道を一歩ずつ着実に歩み始めることです。この記事が、そのための信頼できる「羅針盤」となることを心から願っています。

【基本理解編】就労移行支援とリワーク、何が違う?目的と対象者を1分で把握

障害のある方の就労を支える二大サービス、「就労移行支援」と「リワーク」。名前は似ていますが、その役割は全く異なります。まずは、あなたがどちらのサービスの対象となり得るのか、その全体像を掴むために、それぞれの目的と対象者を簡潔に解説します。

就労移行支援とは?:「新しい就職」を目指す就職準備スクール

就労移行支援をひとことで表すなら、「障害のある方が一般企業へ新たに就職するための、国が認めた『就職準備スクール』」です。障害者総合支援法に基づく公的な福祉サービスであり、多くの場合、前年の所得に応じて自己負担なく、または少額の負担で利用できます。

  • 目的(ゴール):自分の障害特性や能力、希望に合った新しい職場を見つけ、そこで安定して長く働き続けること。
  • 対象者:一般企業への就職や復職を希望する、18歳以上65歳未満の障害や難病のある方。現在離職中の方や、一度も就労経験がない方が主な対象です。重要な点として、必ずしも障害者手帳は必要なく、医師の診断書や自治体の判断で利用できる場合があります。

就労移行支援は、ビジネスマナーやPCスキルといった職業訓練から、自己分析、企業探し、面接対策、そして就職後の定着支援まで、就職に関するあらゆるプロセスをトータルでサポートします。まさに、新しいキャリアをスタートさせるための伴走者と言えるでしょう。

リワークとは?:「元の職場への復帰」を目指すリハビリプログラム

リワークは、正式には「復職支援プログラム」と呼ばれます。その名の通り、「うつ病や適応障害などのメンタルヘルスの不調が原因で休職している方が、元の職場へスムーズに復帰するためのリハビリテーションプログラム」です。

  • 目的(ゴール):休職の原因となった課題(ストレス対処、生活リズムなど)を克服し、再休職を防ぎ、元の職場で安定して働き続けること。
  • 対象者:主にメンタルヘルスの不調により、現在企業に在籍したまま休職中の方。復職の意思があることが前提となります。

リワークプログラムは、生活リズムの改善、体力回復、ストレス対処法の学習、コミュニケーションスキルの向上などを通じて、復職への心身の準備を整えることに特化しています。厚生労働省が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公開して以降、その重要性が広く認識されるようになりました。元の職場というゴールが明確だからこそ、そのゴールに向けた集中的なリハビリを行うのがリワークの最大の特徴です。

【図解】一目でわかる!就労移行支援とリワークの比較表

これまでの内容を、より視覚的に理解するために以下の表にまとめました。ご自身の状況と照らし合わせながら、どちらがより関係の深いサービスかを確認してみてください。

項目 就労移行支援 リワークプログラム
コンセプト 新しい就職を目指す「就職準備スクール」 元の職場への復帰を目指す「復職リハビリ」
目的 自分に合った新しい職場への就職と、その後の職場定着 元の職場への復帰と、その後の再休職防止
主な対象者 障害や難病があり、一般企業への就職を希望する離職中・未就労の方(18歳~65歳未満) メンタル不調等で、企業に在籍したまま休職中の方
主な支援内容 自己分析、職業訓練、PCスキル、ビジネスマナー、求人探し、面接対策、職場実習、就職後の定着支援 生活リズムの改善、体力回復、ストレスコーピング、認知行動療法、SST、模擬業務、復職プラン作成
ゴール地点 新しい会社への入社 元の会社への復職
実施主体 就労移行支援事業所(民間企業、NPO法人など) 医療機関、地域障害者職業センター、企業、就労移行支援事業所など(4種類あり)
根拠法(主なもの) 障害者総合支援法 (種類による)健康保険法、障害者雇用促進法、障害者総合支援法など
利用期間の目安 原則最大24ヶ月(2年) 3ヶ月~1年程度(プログラムによる)
キーポイント

「今、仕事をしていない(離職・未就労)→ 新しい仕事を探したい」なら、まずは就労移行支援を検討しましょう。

「今、会社に籍はあるが休んでいる(休職中)→ 元の職場に戻りたい」なら、まずはリワークを検討するのが基本です。ただし、復職だけでなく転職も視野に入れる場合は、リワーク機能を持つ就労移行支援事業所(福祉リワーク)も選択肢となります。

【核心分析①】精神・発達障害のある方のための「就労移行支援」徹底活用ガイド

「新しい仕事を見つけたい」と考える精神・発達障害のある方にとって、就労移行支援は非常に強力なツールとなり得ます。しかし、なぜこのサービスが特に有効なのでしょうか。本章では、障害特性と支援内容のマッチングという観点からその理由を深掘りし、具体的な活用法、そして知っておくべき実績データを多角的に分析します。

なぜ就労移行支援が有効なのか?特性と支援のマッチング

精神障害や発達障害のある方が働く上で直面しやすい困難は、単なるスキル不足だけではありません。むしろ、その根底には特有の課題が存在します。

  • 環境への過敏さ:音、光、匂いなどの感覚的な刺激や、人の視線、予期せぬ変化に対してストレスを感じやすい。
  • コミュニケーションの壁:曖昧な指示の理解が難しい、相手の意図を読み取りすぎる、自分の考えをうまく伝えられない、雑談が苦手など。
  • 体調・気分の波:症状の変動により、集中力やパフォーマンスが一定しないことがある。安定した出勤自体が課題になることも。
  • 自己理解の難しさ:自分の得意・不得意や、どのような配慮が必要かを客観的に把握し、他者に説明することが難しい。
  • マルチタスクの困難:複数の業務を同時にこなしたり、優先順位をつけたりすることに困難を感じやすい。

これらの課題に対し、就労移行支援が提供する個別的かつ段階的なアプローチは、極めて高い親和性を持ちます。一人で就職活動を行う「個人戦」ではなく、専門家とチームを組んで挑む「団体戦」だからこそ、これらの壁を乗り越えやすくなるのです。

就労移行支援の核心は、「障害特性を『弱み』ではなく『個性』として捉え、その個性が活きる職場環境と業務内容を見つけ出す」というプロセスにあります。例えば、ソフトウェア開発企業では、リワーク支援を導入し、気分やストレスの自己管理をサポートすることで、終日の活動日数を伸ばすことに成功した事例があります。これは、個人の努力だけに頼るのではなく、仕組みで課題を解決しようとするアプローチの有効性を示しています。就労移行支援は、まさにこの「仕組み」を本人と一緒につくり上げていく場所なのです。

具体的な支援内容と活用ポイント

就労移行支援のプログラムは多岐にわたりますが、精神・発達障害のある方が特に活用すべきポイントは以下の通りです。

1. 自己分析とキャリアプランニング:自分の「取扱説明書」を作る

多くの人が最初につまずくのが「自分に何が向いているかわからない」という点です。就労移行支援では、支援員との定期的な面談を通じて、過去の成功体験や失敗体験を振り返ります。これにより、「どのような状況で集中できたか」「どんな指示が分かりやすかったか」「ストレスを感じたのはどんな時か」といった具体的な情報を整理し、自分の強み、弱み、そして必要な配慮(合理的配慮)を言語化していきます。これは、自分自身の「取扱説明書」を作成する作業に他なりません。このプロセスを経ることで、面接で自信を持って自己PRができるようになり、企業側も的確な配慮をしやすくなります。

2. スキルアップ訓練:自信と武器を身につける

訓練内容は事業所によって特色がありますが、大きく分けて「基礎スキル」と「専門スキル」があります。

  • 基礎スキル:コミュニケーションが苦手な方向けのSST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)や、ビジネスマナー、PCの基本操作(Word, Excel)など、働く上での土台を築きます。特にSSTは、ロールプレイング形式で報告・連絡・相談や、適切な断り方などを学べるため、対人関係に不安がある方には非常に有効です。
  • 専門スキル:事業所のタイプによって特化しており、プログラミングやWebデザインを学べる「IT特化型」、PCスキルや簿記を学べる「一般事務・オフィス型」、ピッキングや検品などを学ぶ「軽作業・製造特化型」などがあります。自分の興味や特性に合った専門スキルは、就職活動における強力な「武器」となります。

3. 就職活動の伴走サポート:一人にしない心強さ

就職活動は精神的な負担が大きいプロセスです。就労移行支援では、このプロセスに専門家が伴走してくれます。

  • 企業選び:作成した「取扱説明書」に基づき、障害への理解があり、特性が活かせる求人を一緒に探します。実際の職場を体験してから応募を決めることも可能です。
  • 書類添削・面接練習:履歴書や職務経歴書で、どのように自分の強みや必要な配慮を伝えるかを一緒に考え、添削してくれます。面接練習では、想定される質問への回答を準備するだけでなく、支援員が面接官役となり、本番さながらの練習を繰り返します。必要に応じて面接に同行してくれることもあり、これは大きな安心材料となります。

4. 就職後の「定着支援」:本当のスタートは就職してから

就労移行支援の最大の価値の一つが、この「定着支援」です。就職はゴールではなく、あくまでスタート地点。特に環境の変化に敏感な精神・発達障害のある方にとって、入社後の数ヶ月は最もつまずきやすい時期です。

定着支援では、就職後も支援員が定期的に本人と面談し、「困っていることはないか」「人間関係はどうか」といった悩みを聞き取ります。同時に、企業の担当者とも連絡を取り、本人が直接は言いにくい配慮の要望を伝えたり、職場環境の調整を依頼したりします。この本人と企業の「橋渡し」役がいることで、問題が大きくなる前に対処でき、長期的な就労に繋がるのです。この支援は、障害者総合支援法に基づき、就職後最大3年6ヶ月(就労移行支援事業所による支援は最初の6ヶ月、その後は就労定着支援事業所に引き継がれる)受けることが可能です。

データで見る就労移行支援の実績:就職率と定着率の真実

では、実際に就労移行支援はどのくらいの成果を上げているのでしょうか。客観的なデータを見てみましょう。

就職率の推移

厚生労働省の調査によると、就労移行支援事業所からの一般就労への移行率(就職率)は年々上昇傾向にあります。これは、支援の質の向上や、障害者雇用に対する企業の理解が進んでいることを示唆しています。

令和5年度には58.8%に達し、利用者のおよそ10人に6人が就職に成功している計算になります。これは、独力での就職活動がいかに困難かを考えると、非常に高い水準と言えます。

障害種別ごとの1年後職場定着率

しかし、重要なのは就職することだけではありません。「働き続けられるか」という定着率こそが、支援の真価を問う指標です。障害者職業総合センターの調査によると、就職後1年時点での職場定着率は障害種別によって差が見られます。

このデータから、いくつかの重要な洞察が得られます。

  • 精神障害の方の課題:1年後の定着率が49.3%と半数を下回っており、他の障害種別に比べて離職率が高い傾向にあります。これは、症状の波や対人関係のストレスなどが影響していると考えられ、前述した「定着支援」の重要性を裏付けています。
  • 発達障害の方の可能性:一方で、発達障害の方の定着率は71.5%と非常に高い水準です。これは、適切なマッチング(本人の特性と業務内容・職場環境の適合)が実現すれば、非常に高いパフォーマンスと安定性をもって働き続けられることを示唆しています。就労移行支援が目指す「特性を活かす就職」が、特に発達障害の方にとって有効であることを示す力強いデータです。

結論として、就労移行支援は、特に精神障害の方にとっては「働き続ける」ための不可欠なサポートを提供し、発達障害の方にとっては「強みを活かせる」最適な職場を見つけるための羅針盤として機能すると言えるでしょう。

キーポイント:就労移行支援活用の極意
  • 「自分を知る」ことから始める:支援員を壁打ち相手に、自分の得意・不得意、必要な配慮を徹底的に言語化する。
  • 「武器」を磨く:自分の目指す方向性に合った専門スキルを身につける。IT特化型、事務特化型など、事業所の特色を見極めることが重要。
  • 「定着支援」を前提に考える:就職はゴールではない。入社後のサポート体制が手厚い事業所を選ぶことが、長期就労の鍵を握る。
  • 体験を重視する:企業インターンや職場実習を積極的に活用し、実際の職場環境との相性を見極める。

【核心分析②】再休職を防ぐ「リワーク」完全ガイド|4つの種類と選び方

うつ病や適応障害などで休職を余儀なくされた方にとって、「本当に元の職場に戻れるだろうか」「また同じことを繰り返してしまうのではないか」という不安は、回復への道のりで常に付きまとう大きな壁です。この壁を乗り越え、確かな一歩を踏み出すために設計されたのが「リワークプログラム」です。本章では、リワークの圧倒的な有効性をデータで示し、多様化する4種類のリワークを徹底比較。あなたに最適な選択肢を見つけるための具体的な指針を提示します。

なぜリワークが必要なのか?データが示す「復職の現実」

「休職期間が終わり、主治医から復職可能の診断書が出たから、もう大丈夫だろう」と考えるのは、実は非常に危険なサインかもしれません。症状が軽減したことと、仕事のプレッシャーの中で安定して働き続けられることは、全く別の問題だからです。

厚生労働省のデータによると、メンタルヘルスの不調で休職した後、特別な対策をせずに復職した場合、実にその約半数(47.1%)が5年以内に再休職に至っているという厳しい現実があります。さらに、障害者職業総合センターの資料では、リワークを利用しなかった場合の再休職リスクは、利用した場合に比べて6.21倍にも高まると報告されています。

この現実をより鮮明に示すのが、リワークの利用有無による就労継続率の比較データです。ある調査では、復職後1000日(約3年)が経過した時点での就労継続率に、衝撃的な差が生まれています。

リワークを利用せずに復職した場合、3年後も働き続けている人はわずか約20%。5人のうち4人が、再び休職や離職に至っているのです。一方で、リワークプログラムを利用して復職した人の継続率は約70%にまで跳ね上がります。さらに、復職後もフォローアップを受けた場合は約90%という驚異的な数字も報告されています。

このデータが雄弁に物語っているのは、リワークが単なる「気休め」や「遠回り」ではなく、持続可能な働き方を手に入れるための、科学的根拠に基づいた最も効果的な投資であるという事実です。休職に至った根本原因に向き合い、再発防止のスキルを身につけるプロセスこそが、本当の意味での「回復」と言えるのです。

【徹底比較】あなたに合うのはどれ?4種類のリワークプログラム

リワークは、その実施主体によって大きく4つの種類に分けられます。それぞれに目的や特徴、費用が異なるため、自分の状況やニーズに最も合ったものを選ぶことが重要です。

種類 実施主体 主な目的 費用 期間の目安 メリット デメリット
医療リワーク 精神科・心療内科などの医療機関 病状の回復・安定と再発予防(治療の一環 健康保険適用(3割負担)。自立支援医療制度で1割負担に軽減可。 3ヶ月~7ヶ月程度 医師や看護師など医療専門職が常駐。医学的リハビリが受けられる。 実施機関が限られる。治療が主目的で、職場との連携は弱い場合がある。
職リハリワーク 地域障害者職業センター 本人・企業・主治医の三者連携による職場適応支援 無料(労働保険で運営) 3ヶ月前後(12~16週) 職場復帰プランの策定など、企業との調整に強い。公的機関で無料。 各都道府県に1ヶ所程度と数が少ない。公務員は利用不可。治療は行わない。
職場リワーク 勤務先の企業 復職可否の見極め、職場環境への再適応 無料(企業負担) 企業による(数週間~数ヶ月) 実際の職場でリハビリ出勤(試し出勤)ができ、環境に慣れやすい。 制度がない企業も多い。内容や質にばらつきがある。評価されている感覚が強い場合も。
福祉リワーク 就労移行支援事業所、自立訓練事業所など 復職に向けた訓練。復職だけでなく転職も視野に入れられる 所得に応じた自己負担(多くは0円~9,300円/月) 3ヶ月~休職期間満了まで(最長2年) 事業所数が多く選択肢が豊富。転職支援のノウハウがある。定着支援も受けられる。 医療職がいない場合が多い。プログラムの質が事業所により大きく異なる。

【診断チャート】YES/NOでわかる!あなたにおすすめのリワーク

4つの選択肢からどれを選べば良いか迷う方のために、簡単な診断チャートを用意しました。あなたの状況に最も近いのはどのタイプか、チェックしてみましょう。

あなたに合ったリワーク診断

Q1. 現在、企業に在籍したまま休職中ですか?

  • はい → Q2へ
  • いいえ(既に退職している)【福祉リワーク】がおすすめです。就労移行支援事業所では、再就職を目指す方向けの支援が受けられます。

Q2. 病状の治療や医学的なケアを最も重視しますか?

  • はい【医療リワーク】がおすすめです。医師の管理下で、治療の一環として安心してリハビリに取り組めます。
  • いいえ → Q3へ

Q3. 勤務先(会社)に、復職を支援する専門部署や「試し出勤」などの制度がありますか?

  • はい【職場リワーク】がおすすめです。まずは社内制度の活用を検討しましょう。人事部や上司に相談してみてください。
  • いいえ → Q4へ

Q4. 復職にあたり、会社との勤務条件の調整や、専門家による職場復帰プランの作成を重視しますか?

  • はい【職リハリワーク】がおすすめです。公的な立場で企業との調整役を担ってくれるため、スムーズな復職が期待できます。
  • いいえ(または、復職だけでなく転職も少し考えている)【福祉リワーク】がおすすめです。柔軟なプログラムと、いざという時の転職サポートが魅力です。

リワークの具体的なプログラム内容

実施主体によって細部は異なりますが、多くのリワークプログラムには共通する核心的な要素があります。これらは、単に「会社に行く練習」をするのではなく、再発しないための土台を根本から作り直すためのものです。

  • 生活リズムの再構築:「朝決まった時間に起き、施設に通う」という行為そのものが、復職後の通勤をシミュレートする重要な訓練です。多くの施設では、午前10時から午後4時頃までのプログラムが組まれており、徐々に勤務時間に近づけていくことで、体力と集中力を段階的に回復させます。
  • 自己理解・再発防止(疾病教育):なぜ休職に至ったのか、その原因を客観的に振り返ります。自分の思考のクセ(例:完璧主義、過剰な責任感)やストレスサインを認識し、それらへの対処法(ストレスコーピング)を学びます。認知行動療法などの心理療法を通じて、ストレスフルな状況に対する新しい考え方や捉え方を身につけることが、再発防止の鍵となります。
  • 対人スキル訓練:職場での人間関係は、休職の大きな要因の一つです。グループワークやディスカッション、SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)を通じて、他者との円滑なコミュニケーション方法を学びます。自分の意見を適切に伝えるアサーショントレーニングなども行われ、復職後の対人関係の不安を軽減します。
  • オフィスワークシミュレーション:PCを使ったデータ入力や書類作成、軽作業など、実際の職場を想定した模擬的な業務を行います。これにより、作業能力や集中力の持続時間を確認し、仕事の感覚を取り戻します。「擬似就労」とも呼ばれ、復職への自信を回復させる上で非常に効果的です。

これらのプログラムは、パズルのピースのように相互に関連し合っています。生活リズムが整うことで、日中のプログラムに集中でき、自己理解が深まることで、対人関係での適切な距離感がつかめるようになります。この総合的なアプローチこそが、リワークの強みなのです。

【実践編】後悔しない!自分に合った事業所の見つけ方と利用までの5ステップ

就労移行支援や福祉リワークを利用する上で、最も重要かつ難しいのが「事業所選び」です。プログラム内容や雰囲気は事業所ごとに千差万別であり、この選択がその後の成果を大きく左右します。「有名だから」「家から近いから」といった理由だけで選んでしまうと、「思っていたのと違った」というミスマッチが起こりかねません。本章では、あなたにとって最適なパートナーを見つけるための具体的なチェックポイントと、利用開始までの手順を詳しく解説します。

失敗しないための事業所選び5つのチェックポイント

「どこが一番良いか」ではなく、「自分にとって合っているかどうか」という視点が何よりも大切です。以下の5つのポイントを軸に、複数の事業所を比較検討しましょう。

1. 専門性と支援内容:あなたの課題に寄り添ってくれるか

まず確認すべきは、あなたの障害特性や悩みに対応できる専門性があるかです。特に精神・発達障害のある方は、その特性への深い理解に基づいた支援が不可欠です。

  • 障害特性への理解:精神保健福祉士などの専門資格を持つスタッフが在籍しているか。発達障害や精神障害に特化したプログラムがあるか。感覚過敏への配慮(静かな部屋、照明の調整など)は可能か、などを確認しましょう。
  • プログラム内容:あなたの希望するキャリアに合っていますか? IT・Web系、事務職、軽作業など、事業所には得意分野があります。自分の目指す職種に関連するスキルが学べるか、カリキュラムを詳しくチェックしましょう。

2. 就職・復職実績と定着支援:出口戦略は明確か

事業所の「出口」、つまり就職や復職の実績は重要な判断材料です。ただし、単なる就職率の数字だけを見てはいけません。

  • 実績の「質」:どのような企業・職種への就職実績が多いのか。自分の希望する業界や働き方(正社員、契約社員、パートなど)の実績はあるか。具体的な就職先名や、利用者の体験談が公開されているかも参考になります。
  • 定着支援の手厚さ:就職・復職後のサポート体制はどのようになっていますか? 定期的な面談の頻度や、企業との連携方法など、「働き続ける」ための支援が手厚いかは、特に定着率が課題となりやすい精神障害の方にとって極めて重要なポイントです。

3. 事業所の雰囲気とスタッフとの相性:「通いたい」と思えるか

これは、ウェブサイトやパンフレットだけでは決してわからない、最も重要な要素の一つです。支援は人と人との関わりの中で行われるため、安心して相談できる関係性を築けるかが鍵となります。

  • 見学・体験の活用:必ず複数の事業所を見学し、できれば体験利用しましょう。スタッフの話し方や他の利用者さんの様子、施設の清潔感や静けさなど、五感で「ここの空気は自分に合うか」を感じ取ることが大切です。「ここでなら頑張れそう」という直感は、意外と的を射ています。

4. 通いやすさ:継続できる物理的条件か

支援は、継続して通所することで効果を発揮します。「安定して通えていること」自体が、企業から「継続して働ける」という評価に繋がることもあります。

  • 物理的な負担:自宅からの距離や所要時間、交通手段、電車の混雑具合などを具体的にシミュレーションしましょう。通所がストレスになってしまっては本末転倒です。在宅での訓練に対応している事業所もあるため、体力に不安がある方は選択肢に入れると良いでしょう。

5. 費用と利用条件:経済的な不安なく続けられるか

就労移行支援や福祉リワークは公的な福祉サービスであり、利用料は前年の世帯収入によって決まります。多くの場合は無料または月額9,300円の上限で利用できますが、正確な自己負担額は自治体の判断となるため、事前に確認が必要です。

  • 自己負担額の仕組み:利用料は、利用者本人とその配偶者の所得によって算定されます。親や兄弟と同居していても、彼らの収入は含まれません。前年に収入がなかった方や、住民税非課税世帯の方は自己負担0円となるケースがほとんどです。
  • その他の費用:交通費や昼食代は原則自己負担ですが、自治体によっては交通費の助成制度があったり、事業所が昼食を提供したりする場合があります。これらの補助の有無も、経済的な負担を考える上で重要なチェックポイントです。

【見学・相談時】これだけは聞こう!質問チェックリスト

見学や相談の際に、何を聞けばよいか分からなくなりがちです。以下のリストを参考に、事前に質問を準備しておきましょう。

質問チェックリスト

【支援内容について】

  • 精神障害/発達障害のある利用者には、どのような配慮をしていますか?
  • 1日のスケジュールや、具体的なプログラム内容を教えてください。
  • 私が希望する〇〇(例:プログラミング、経理事務)のスキルを学べますか?
  • スタッフ一人あたり、何人の利用者を担当していますか?

【実績について】

  • 過去1年間の就職者数と、就職先の主な業種・職種を教えてください。
  • 就職後の定着率はどのくらいですか?(特に6ヶ月後、1年後)
  • 定着支援では、具体的にどのようなサポートをしていますか?(面談頻度、企業訪問など)

【環境・条件について】

  • 利用者の平均的な年齢層や男女比を教えてください。
  • 体調が悪い日など、週5日通うのが難しい場合、柔軟な対応は可能ですか?
  • 交通費や昼食代の補助はありますか?
  • 体験利用は可能ですか?期間はどのくらいですか?

利用開始までの5ステップ

「利用したい」と思ってから実際に通所を開始するまでには、いくつかの手続きが必要です。全体像を把握しておきましょう。

  1. 相談・情報収集:まず、どこに相談すればよいか。選択肢はいくつかあります。お住まいの市区町村の障害福祉窓口、ハローワークの障害者専門窓口、または相談支援事業所などが最初の入口になります。これらの機関で、地域の事業所リストや情報を提供してもらえます。
  2. 見学・体験:気になる事業所が見つかったら、電話やウェブサイトから見学を申し込みます。前述の通り、最低でも2〜3ヶ所は比較検討するのがおすすめです。実際に雰囲気を確かめ、納得できれば体験利用に進みます。
  3. 利用申請:利用したい事業所が決まったら、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で「障害福祉サービス受給者証」の交付を申請します。この際、障害者手帳や医師の診断書、利用計画案などが必要になりますが、多くの場合、事業所のスタッフが申請手続きをサポートしてくれます。
  4. 個別支援計画の作成:受給者証の交付を待つ間に、事業所のサービス管理責任者と面談し、あなたの目標や希望、必要な支援などを盛り込んだ「個別支援計画」を作成します。これは、今後の支援の設計図となる非常に重要なものです。
  5. 契約・利用開始:受給者証が交付されたら、事業所と正式に利用契約を結びます。利用開始日を決定し、いよいよ通所がスタートします。

このプロセスには、申請から受給者証の交付まで1ヶ月程度かかることもあります。焦らず、計画的に進めていきましょう。

【最新動向】2025年10月スタート「就労選択支援」で何が変わる?

障害者福祉の分野は、より良い支援を目指して常に変化しています。その中でも、これから就労支援サービスの利用を考えているすべての方に関わる大きな制度変更が、2025年10月1日から始まる「就労選択支援」です。この新しい制度が導入されることで、私たちの「働く」への道のりはどのように変わるのでしょうか。その核心をわかりやすく解説します。

就労選択支援とは?自分に最適な道を見つける「お試し期間」

就労選択支援を簡単に言うと、「本格的な就労支援サービス(就労移行支援や就労継続支援A型・B型)を利用する前に、短期間の体験や専門家による評価を通じて、自分に本当に合った働き方やサービスは何かを見極めるための準備期間」です。

これまで、障害のある方が就労を目指す際、「とりあえず就労移行支援事業所へ」という流れが一般的でした。しかし、人によっては、雇用契約を結びながら支援を受けられる「就労継続支援A型」や、自分のペースで軽作業を行う「就労継続支援B型」の方が適している場合もあります。あるいは、支援を受けずとも一般就労が可能な方もいるかもしれません。

就労選択支援は、こうした多様な選択肢の中から、本人の希望、能力、そして適性を客観的に評価(アセスメント)し、最も納得のいく道筋を選ぶための「羅針盤」の役割を果たす制度なのです。

導入の背景と目的:ミスマッチを防ぎ、定着率向上へ

この制度が導入される背景には、「利用者とサービスのミスマッチ」という長年の課題があります。例えば、本人は一般就労を目指せる力があるにもかかわらず、事業所側の都合で就労継続支援サービスに留め置かれてしまう「囲い込み」の問題が指摘されてきました。

逆に、本人の準備が整っていない段階で就労移行支援を利用し、就職したもののすぐに離職してしまうケースも少なくありませんでした。特に精神障害のある方の1年後定着率が約50%に留まる現状は、このミスマッチが一因であると考えられています。

そこで、就労選択支援の目的は、客観的なデータと本人の意思に基づいた適切なマッチングを促進することで、就労後の定着率を向上させることにあります。本人が自分の選択に納得感を持つことが、主体的に働き続けるための原動力になる、という考え方が根底にあります。

具体的な支援内容と利用者にとってのメリット

就労選択支援の期間は、原則として1ヶ月(最大2ヶ月)と短期間です。その中で、以下のような支援が行われます。

  • アセスメントの実施:支援員との面談や、簡単な作業体験を通じて、「何が得意か」「どのような配慮が必要か」「どんな働き方を望んでいるか」などを整理します。
  • 複数の事業所見学・体験:就労移行支援、A型、B型など、種類の異なる複数の事業所を見学・体験することができます。例えば、A型事業所で接客補助を体験し、B型事業所で軽作業を体験することで、それぞれの働き方の違いを肌で感じることができます。
  • 多機関連携会議:アセスメントの結果をもとに、本人、家族、支援員、ハローワークの担当者などが集まり、今後の最適な方針について話し合います。
  • アセスメントシートの作成:評価結果や本人の希望を一枚のシートにまとめ、今後の支援サービスの利用申請や、就職活動の際に活用します。

利用者にとっての最大のメリットは、「多様な選択肢を比較検討した上で、情報に基づいた意思決定ができる」点です。これにより、「こんなはずじゃなかった」という後悔を減らし、自信を持って次のステップに進むことができます。

注意点:原則必須となる対象者とスケジュール

この制度は、希望者だけが利用するものではありません。厚生労働省の方針により、特定のサービスを新たに利用する方は、原則として就労選択支援を受けることが必須となります。

  • 2025年10月1日以降:新たに就労継続支援B型の利用を希望する方は、原則として就労選択支援の利用が必須になります。
  • 2029年4月1日以降(予定):新たに就労継続支援A型の利用を希望する方や、就労移行支援の利用期間(2年)を超えて延長を希望する方も、原則として対象となる予定です。

つまり、2025年10月以降に障害福祉サービスを利用して「働く」ことを考え始める方は、まずこの「就労選択支援」が最初のステップになる可能性が高い、ということを覚えておく必要があります。もちろん、近隣に事業所がない場合などの例外措置も設けられていますが、基本的にはこの新しい流れに対応していくことになります。

2025年からの新常識

就労支援サービスを利用する前に、「就労選択支援」で自分に合った道をじっくり探すプロセスが加わります。これは、遠回りのように見えて、実は長期的な成功への一番の近道となる制度です。これから支援を考える方は、この新しい制度の存在を念頭に置いて情報収集を始めましょう。

近年の障害者雇用市場では、精神障害のある方の求職が著しく増加しており、企業の採用意欲も高まっています。以下のグラフは、ハローワークにおける新規求職申込件数の推移を示しており、特に精神障害者の水色の部分が年々拡大していることがわかります。この傾向は、就労移行支援や新たな就労選択支援の重要性が今後ますます高まることを示唆しています。

まとめ:あなたらしい「働く」への第一歩を踏み出そう

本記事では、精神・発達障害のある方が「働く」ことを考える上で、羅針盤となる2つの重要なサービス「就労移行支援」と「リワーク」、そして2025年から始まる新制度「就労選択支援」について、多角的に掘り下げてきました。

ここで、最も重要なメッセージを改めて要約します。

  • 「就労移行支援」は、あなたの特性を活かせる新しいキャリアへの挑戦を支える、頼れる「就職準備スクール」です。離職中・未就労の方が、専門家と共に自分だけの「取扱説明書」を作り、最適な職場を見つけるためのパートナーとなります。
  • 「リワーク」は、休職からの元の職場への再挑戦を成功に導く、「復職リハビリプログラム」です。データが示す通り、再休職を防ぎ、安定して働き続けるためには極めて有効な手段です。4つの種類の中から、自分の状況に合ったものを選ぶことが鍵となります。

そして、どちらの道を選ぶにせよ、成功への共通の鍵は「自分に合った支援を見つけること」に尽きます。そのためには、ただ情報を受け取るだけでなく、自ら行動を起こすことが不可欠です。ウェブサイトやパンフレットを眺めるだけでは、その事業所の本当の価値はわかりません。実際に足を運び、見学し、体験利用を通じて、その場の空気、スタッフの人柄、プログラムの質感を自分の肌で感じてください。そして、「ここなら安心して相談できる」「ここでなら頑張れそうだ」と心から納得できる場所を選ぶこと。そのプロセスこそが、あなたらしい「働く」を実現するための、最も確実な第一歩となるのです。

この記事を読み終えた今、あなたが次にとるべき小さなアクションは何でしょうか。それは、重い腰を上げてハローワークに行くことかもしれません。あるいは、お住まいの市区町村の障害福祉窓口に一本電話をかけてみることかもしれません。もしくは、この記事で気になった事業所のウェブサイトをブックマークし、見学の申し込みボタンをクリックすることかもしれません。

どんなに小さな一歩でも構いません。大切なのは、一人で悩み続けることをやめ、外の世界と繋がり、支援の扉をノックしてみることです。その先には、あなたの「働きたい」という想いを真摯に受け止め、伴走してくれる専門家たちが待っています。あなたらしい未来への道は、その一歩から、確実に拓かれていくはずです。

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